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第19話 思い出語り 百合カップルの初めて


「聞きたい? 私達の初エッチ♡」

「あ、にーちゃん聞きたいって♡ この子が教えてくれてる」


 息子は正直である。美少女達の性なる目覚め。

 興味を持たずにはいられようか。


 二人が初めてを迎えた時のことは聞いてみたい。それは大好きな二人の馴れ初めだからこそだ。


 通常は異性による経験が同性になったというだけで、俺の精神には悔恨の情は一切湧かずに興奮と期待だけが生起した。


 少女達が中学2年生の頃。

 お互いに性という物が分かり始め、将来大好きな人と結ばれた時に、最高に喜んで欲しいがための予行演習。


 そのような名目で、二人の初体験は始まった。



 性的な好奇心が徐々に心の中でウェイトを占めてくる思春期。


 一般的に男子よりも女子の方がその成熟は早いとされる。

 何年後になるか分からないが、その時になってからでは兄ちゃんが大変だ。


 どちらの知識だったか、本人達いわく、たぶん希良里きらりだったような気がすると。


 兄ちゃんと初めてを迎える時、ちゃんと自分達が気持ち良くなれて、ちゃんと兄ちゃんが心地良くセックスできて、ちゃんと兄ちゃんに『初めてであり、処女である』ことがちゃんと伝わるように。


 そのように、自分達を改造するための儀式をしよう。


 そんな小説の1ページにでも書かれていそうな理由で、二人はエッチをしてみようということになったらしい。


「二人のどっちからしようって話になったんだ?」


「ん~。初めは、どっちだっけ」

「どっちともなく、とかだった気がするね。兄ちゃんとの将来のために、気持ち良くなっておく身体を作っておこうよ、みたいな話をしていたような気がする」

「にーちゃんに開発してもらうって案もあったんだけどね」

「兄ちゃんに負担がかかっちゃうと思って」


「まずは、こんな風にお互いを見つめ合って……」

「こんなことを言ったかな……」


 二人は俺の目の前で当時を再現してくれる。ただしそれを、実際の相手ではなく、俺に対して行ってくる。


 俺の妄想の中で、中学生の頃の二人が夢想される。


 その姿ははっきり思い出せる。


 今よりは大きくは育っていなかった二人。しかし周りが放っておかないほどの超絶美少女だったのは変わっていない。


 思えばその頃からジュニアモデルとして活躍し始めて、スゴく綺麗になってドキドキしたのと同時に、少しずつ彼女達が遠くに行ってしまったような気がして寂しかったな。


 実際は常に俺を頼ってくれたので、そんなに疎外感を感じずに済んだが、心の距離は少し開いていたような気がする。


 しかし、今思えばそれも俺の被害妄想だったということだ。


 目を閉じると、耳元で聞こえてくる希良里きらり有紗ありさは、当時を再現するように少し高い声で再現をし始める。


『ねえ希良里きらり、キス、してみない?』

『それはいやっ。初めてのキスは、兄ちゃんだけのものだから』

『あ、やっぱり? 私もそう思ってた』

『だよね。ファーストキスと、ヴァージンだけは、絶対に兄ちゃん以外に渡しちゃダメ』


 耳元でそう囁く二人。当時の再現を目の前ではなく耳元行うのだから、ゾクゾクしない方がどうかしている。



 他の男との性経験など御免被るが、百合カップルの初めてなら興奮するから聞いてみたい。


 しかもそいつが全部「俺との将来のため」だと言うのだから、聞いておかねばなるまい。


「そっから、お互いの身体を触ってみようってことになったんだよね」


「どうかな? 聞いてても平気そう? 嫉妬しない?」


「他の男との性体験だったら怒り心頭だが、可愛い二人の馴れ初めだったら是非聞いておきたい」


「だよねぇ。にーちゃん寝取られ属性なさそうだし」


「ないと思いたいねぇ。普通に悔しいだけだと思う」


「うん。知ってる。あったら、頑張ったけどね……」

「冗談でもそういうこと言わないでくれ。心臓に悪い」


 正直言って、そういった属性に興奮を感じる人類の気持ちは、分かりたくはない。


 本当に二人が処女ではなく、俺以外の誰かと既に恋に墜ちたり、セックスを経験済みだったら、俺は嫉妬に狂って死にたくなってしまうだろう。


 俺は途轍もなく、自分でも知らなかったくらい、嫉妬深くて子供じみている。


 二人の精神が大人じゃなかったら……。


 俺という人間のあらゆる事を理解して、全てに対して先回りしてくれていなかったら……。


 こんな穏やかな気持ちで二人を受け入れる事はできなかっただろうな。



 彼女達が百合であるという事実があれば、俺と結ばれた後も変に勘ぐったり、疑心暗鬼で嫉妬せずに済むから。


 まあ実際は、二人の過去を勘ぐって既に嫉妬してしまったわけだが……。

 二人は処女膜を守り、なんとファーストキスまで『俺とするまでは』という制約を設けて一度もしたことがなかったらしい。


 その事実を知った以上、彼女達の初体験は、俺にとって興奮材料になる。


 現金な物だ……。ファーストキスをしたかどうかなんて証明のしようが無い。


 それでも二人の覚悟と気迫を見れば本当に一度としてキスをせずに今日という日を待っていたに違いない。


 わざわざあんな医療器具まで手に入れて処女膜を見せてくれる演出をしてくれたのだ。


 これで興奮しない方がどうかしている。


「キスはできない。今すぐには……兄ちゃんのために二人はキスできなかった……」


 じゃあどうやってその衝動を諫めたのか。代わりにそれを満たすために……


 その衝動をぶつける何かが必要だったわけだ。


 二人はその衝動を……。


「「こうやってぇ♡ カプッ、ちゅぅううううう♡」」


「うおっ!?」


 恐らくは過去に互いに行ったであろう、つまり、有紗ありさ希良里きらりの首に、希良里きらり有紗ありさの首元に、かぶり付いたはずの行為を……二人は俺の首元に行った。


『私、有紗ありさちゃんが好き♡』

『私も、希良里きらりのこと、大好き♡』


『『でも、それ以上ににーちゃんに恋してる♡』』


 体を重ねていくうちに、計画の為に必要だからと身につけた百合要素が、本物の百合になっていったわけだ。


◇◇◇


 二人の動きは再現というよりは学んできた快感を俺に刻みつけているかのようなものだった。


 二人の初めては、俺との3Pを想定して練習したものだった。


 こんなに嬉しい事があろうか。

 二人愛し合っていたとしても、その中心にはいつでも俺がいたということらしい。


 俺と結ばれる時に、心地良く女を抱いている気持ちを味わえるように。


 自分達が俺の愛撫を十全に感じられるように。


 全ては三人で結ばれるために愛を育んでいった。

 嬉しそうに思い出を語る言葉の中には全て俺への想いで溢れていた。


◇◇◇


「ふにゃぁあ……にーちゃん絶倫すぎぃ……♡♡」


 結局合計で六発もしてしまった。


 挟んだり挿入したりを繰り返してバカスカ発射しまくって、二人が気絶したところで我に返り、再び風呂場へと連れて行ったのである。


「にーちゃんの絶倫具合、甘くみてたかもぉ。でもぉ、嬉しい誤算、だね」


「どういうこと?」


 ベッドで三人。川の字で……いや、真ん中の俺がデカいので『小』の字で寝ている俺達は激しい行為の余韻に浸りながらピロートークを楽しんでいた。


「兄ちゃんの想像以上に大っきかったし、想像以上の絶倫さんでビックリしちゃった♡ 私達にとっては全部嬉しい想定外だったけどね」


「そうか。二人にとって嬉しい誤算ってことか。俺もすっかりハマっちまったな。もう自家発電もできないや」


「しちゃダメだよぉ♡ ムラムラしたら全部私達が受け止めてあげるからね♡ っていうか、したくなったら呼んでくれないと怒るからねっ♡」


「ははは。そうだな。気を付けるようにするよ」


「あ、そうそう。にーちゃんにお願いしたいことあったんだ」


「うん? どうした?」


「来週末って卒業旅行にいくでしょ?」


「ああ、そうだな」


 今週が終われば全ての授業カリキュラムは修了し、あとは卒業式の練習と本番を待つばかりとなる。


 そんで仲の良いグループで卒業旅行に行こうという計画をしており、俺達のグループは来週末に早くも決行することとなっている。


「兄ちゃんの卒業旅行に、私達もついて行って良い?」

「え、卒業旅行に?」


「あ、って言っても邪魔するつもりじゃなくて、にーちゃんの旅行が終わったら、そのまま私達が合流する感じ」


「ああ、なるほど。構わないけど学校は?」


「「休むッ!」」


 いいのかそれ? 皆勤賞捨てちゃうんだぞっ!? 俺は二人をなんとか説得して週末の土日に合流できる日程になるようにした。


 そしてその卒業旅行で、俺は彼女達が言っていた【あの人】の秘密を知ることになる。


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