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第22話 背が高くて気弱な幼馴染みはグラビアアイドルが裸足で逃げ出す爆乳美少女


「あ、にーちゃん、小春こはるちゃんだよ」

「ねえ、あれナンパされてない?」


「え、小春こはる? 本当だ……またチャラついたヤツに引っ掛かってるな」


 人混みの中で頭が飛び出る三人の集団。二人のチャラついた男に絡まれている背の高い女の子が見える。


 姉ちゃんの後輩であり、俺の中学からの昔なじみ【雛町ひなまち 小春こはる】を救援に向かった。


「二人ともちょっと待ってろ」

「うん。気を付けてね」

「ああ」


 二人を壁際で待機させてナンパ現場に近づいていく。


 デカくて厳つい浅黒い男二人組に囲まれ、涙目になっている小春こはるの声で怒りが爆発しそうになる。


 明らかに嫌がってるだろうがDQNどもめっ!


「だからさぁ、アカウント教えてくれるだけで良いんだってぇ」

「悪いようにしないからさぁ。今度デートいこうよぉ」



「あ、あのっ……で、でも……その」


 おどおどした声でハッキリと喋らないのでDQN共はますます調子に乗る。


 俺はいつものように見知った顔の元へと足を速め、目立つように肩を怒らせる。


「お待たせッ!」


 俺は小春こはるに聞こえるようにワザと大声で呼びかける。

 その声に気がついた三人が一斉にこちらを向いた。


「あっ……じゅ、順平ちゃんっ」


 俺の姿に気が付いた小春こはるは天の助けを見つけたとばかりに涙目で駆け寄ってくる。

 その表情はもうパァアッと光が差したような涙目の笑顔。


 そんな庇護欲をそそるビューティフルスマイルを向けられては100人中100人が一目惚れするに違いない。


「よう、待ったか? 遅くなってすまんな」


 俺は彼女の手を取り、恋人のように繋いで目の前の男達にわざとらしく挨拶をした。


「やあすみませんね。この子、俺の女なんですよ」


「あ? なんだテメェは」

「俺らの純愛邪魔しねぇでくれっかなぁ」


 嫌がる女の子をナンパして純愛とは良い度胸してやがるなこいつら。


「ほほう。あんたらの純愛っていうのは困ってる女の子を逃げられないように囲いながらヘラヘラ笑って追い詰める事なんですか?」


「あんだとコラァ」

「お、おい待て。さっき、順平って言わなかったか?」


「はーい、俺の名前は順平でーす。もしかして知ってくれてる?」


「えっ、じゅ、順平……順平ってまさか」

「げ、お、お前……ひ、樋口順平」

「ち、小さな大将軍の、弟ッ⁉」

「あ、あんたの女だったのか……」


 俺は彼女の肩を抱いてお付き合いアピールをして牽制する。

 ちなみに【小さな大将軍】とは花恋かれん姉ちゃんのことである(本人に言ったらぶっ殺される)。


 まあこれは今度詳しく話そう。


 男達はそれなりにデカい体と鍛えられた身体をした強面のチャラ男達。


 例えて言うなら、アレだ。寝取られ同人とかでよくいる竿役みたいな(偏見)ステレオタイプのチャラ男であったが、俺よりは背丈が低く筋肉も小さい。


 こういう時は自分のデカい体は便利だ。(ちなみに俺は寝取られは大嫌いだが、悪友に無理矢理お勧めされてトラウマになった)


「すんませんねぇ。“この通り”なので彼女を他の男に触れさせるのは俺が許容できないんだ。悪いけど他を当たってもらえないかな?」


 彼女のライトブラウンの髪を撫でながら抱き寄せる。

 こんくらいしておけば演技とは思うまい。


 ちなみにこの抱き寄せたり頭を撫でたりする演出はこれまで何度も同じ方法で助けており、彼女の方から許可を受けてやっている。


 普通の女の子にこんなのできっこないからな。


 そして本気でやったら有紗ありさ希良里きらりがきっとジェラシってしまうだろう。


 だけど彼女はとにかく気が弱くて男から"押せばイケる"と思わせてしまう性質をもっている。


「はうぅ♡」


 彼女も俺の演技に合わせてくれている。胸板に寄せた頭を擦りつけて身体が密着する。

 豊満な巨峰がムニュリと潰れて温かなヘブンを作り出した。


 ちょっとした役得だ。彼女の肩を抱いて庇うように後ろに隠し、チャラ男君達に対峙する。


 俺は笑顔で相手に圧力をかけ、満面の笑みでお願いをする。


「どうだろうか。遠慮してもらえますかねぇ?」


 見た感じ大学生っぽいのだが、俺を知っているってことは姉ちゃんの関係者とかかしら? まあどうでもいいけど。


「そ、そうでしたか。ど、どうもすみませんでしたっ!」

「失礼しましたーーー」


 スタコラサッサという効果音が似合いそうな走り方で反対側のホームの階段を降りていくナンパ男達を見送る。


 朝も早よからナンパとはご苦労なことだ。

 だが俺の目の黒いうちはこの子には指一本触れさせんよ。


「ふう、やれやれ……」

「あ、あの、順平ちゃん……」

「あっ、悪いッ」


 肩と頭を抱き寄せっぱなしだったことに気が付いて慌てて引き離す。顔を真っ赤にした小春こはるはいつものように儚げな笑みを浮かべるが、付き合いの長い俺はこれが照れ笑いであることを知っている。



「順平ちゃん、ありがとう……いつも助けてくれて」


 少し遠慮気味な、か細い声。頼りなく聞こえるが透き通ったソプラノボイスだ。


「おう、おはよう小春こはる。何もされてないか?」

「う、うん。声かけられただけだから。断っても断ってもしつこくて……」


 声の主は少し猫背気味であり、明るい髪色の割に気弱でおどおどしているのが特徴だ。


 彼女に視線を向ける。俺は190も背丈がある関係上、大抵の人は見下ろすのだが、女子生徒だと特にそれが顕著になる。


 だが彼女においてはその度合いが他の人に比べて少なくなる。


 何故なら彼女の身長は177センチと女性にしてはかなり高身長な部類にはいる。


 とはいえ、バレー部やバスケ部には入っておらず本人は運動音痴だ。


 太らないようにヨーガをたしなんでいるらしいが、そのおかげで彼女の体型は決して太くは見えない。




 俺は待っていた二人に手を振って呼び寄せる。向こうを見ると二人は見知らぬ女の子達と喋っていた。恐らくファンの子だろう。

 丁寧にお辞儀をして別れを告げ、小走りでこちらにやってきた。



――――――――


※後書き

 属性てんこ盛りの新ヒロインにてござそうろう



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