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第24話 残り少ない学園生活と同級生の笑顔


「じゃーねーにーちゃん♡ またあとで~!」

「おう、夕飯の買い出ししておくからな」

「今日はにーちゃんが当番だから楽しみ~♪」

「じゃあお願いね兄ちゃん。何か手伝うことがあったらやるから」

「ありがと希良里きらり

「うん。私も兄ちゃんの手料理楽しみ♪」

「そんな大したものはできないぞ」

「大丈夫。何を食べるかじゃなくて、誰の料理を食べるかが重要なんだもん」


 嬉しい事を言ってくれる。これは気合いを入れて料理しなくてはな。


 ちなみに料理当番は俺と希良里きらりでローテすると話し合った。


 さっきも言ったが有紗ありさにやらせるとマジで特級呪物が出てくるからな。


 俺もまだ命は惜しいので当分の間は二人で分担することになっている。


「んじゃねにーちゃん」

「兄ちゃん、またあとで」

「おう」


 二人を下駄箱で見送って自分の教室に向かう。


 3年生の教室は校舎の1階にあるので二人は1年生教室のある階段を上っていく。



「私達も行こうか、順平ちゃん」

「ああ」


「妬ましいぃい、妬ましいぃいぞ樋口順平~~~~」

「ひゃんっ」

「うわっ!? ビックリしたッ!?」


 何事か振り返ったら同級生の男子共が雁首揃えて血涙(に見える汁)を流してハンカチを咥えている。


 昭和のメロドラマか?


 ビックリして寄りかかってきた小春こはるを慌てて支えた。


「何故だッ! 美少女インフルエンサー姉妹としてあらゆる名声をほしいままにしているキラキラアリスの二人が、どうしてデカくて冴えないすっとこどっこいにべったりなのだっ」


「誰がすっとこどっこいだ誰がッ。あとあいつら姉妹じゃねぇって何遍なんべんも言っているだろうがっ」


「百合は姉妹と同義なんだよっ!!」

「妄想男子舐めんなっ!!」


 専門的な定義を素人に押し付けないでほしいなぁ。


「しかもなんか聞き捨てならないワードが聞こえたぞっ! 今日の当番とはどういうことだっ!」


「いや、メシの当番だって」

「なんでお前があの二人とメシの当番を決める必要があるんだっ!!」

「おかしいだろッ! 一緒に暮らしている訳でもあるまいにっ」


「幼馴染みだから」


「「「なんでその一言で片付くんだよぉおおおっ」」」


 妙に勘の鋭いヤツもいるな。まあ昔から我が家とか町田家、門野家順番でご飯食べに行ったりしていたからあながち嘘でもない。


 先日から本当に一緒に暮らし始めた、なんて言ったらマジではりつけにされそうだ。


「しかもなんだっ!! 当たり前のように我らのアイドル雛町さんと一緒に登校しやがってっ」

「ふぇっ!? わ、私ッ!?」


 いきなり話を振られた小春こはるはビックリして俺の後ろに隠れてしまった。


 おっぱいが当たって気持ち良いので役得だ。


 あと、一応俺が冴えないすっとこどっこいだと言うのは訂正してもらいたいところだ。


 何しろ童貞卒業したんだからな。今叫んでいる元同士達には悪いが先に行かせてもらうぜ諸君。


「校内でもイベントでもずっと一緒にいるじゃないかお前らッ!」

「この夫婦めっ!」


 血涙を流す同級生達を放置して教室に向かった。


 後ろの小春こはるがもの凄い満面の笑顔で喜んでいることに、俺は気が付いていなかった。


 ◇◇◇◇◇


「そういえば、今週末だね、卒業旅行」

「ああ、準備抜かりないか?」

「うん。もうバッチリ」


 今週末に予定している卒業旅行。

 同級生の仲の良いグループ6人で温泉旅行に出かけることになっているのだ。


 その中に俺と小春こはるも混じっている。


 男連中二人はこの旅行を機に彼女を作るんだと息巻いているが二人がどうしてもと言うので知り合いのツテを辿って女子を誘った。


 二人は確保したがあと一人がどうしても捕まらなかったところに、意外にも小春こはるが自分から名乗り出たのだ。


「しかし、今更だけど付いてきてくれて大丈夫だったの? 男女混合の旅行なんて」


「う、うん。ちょっと怖かったけど、順平ちゃんが一緒なら平気。せっかく卒業間近なんだもん。少しくらい高校生らしいことしたかったから」


「まあ小春こはるがいてくれれば俺も気楽で良いからな。男連中だけで海鮮丼食べ放題ツアーに行こうって話してたのに。妙に色気出したがるもんだから」


「ふふ……。そのおかげで私も勇気が出せたから」


「そういえば修学旅行も一緒のグループだったな俺達」


「うん。あの時は楽しかった♪」


「思えば俺達中学高校とずっと同じグループだったりすることが多かったな」


「そうだね。私、順平ちゃんがいなかったらいじめられただろうし、たぶん、引きこもりになってたもん」


 それが割と冗談ではないからちょっと笑えない。

 俺達の出会いは中学1年の頃まで遡る。


 話せば長くなるから簡単に説明すると、今朝と同じようにナンパされていた所を俺と姉ちゃんで助け出したのがきっかけだ。


 背が高かったので中学生には見えず、今ほどではないにせよかなり胸も大きかった。


 詰まるところ大人顔負けの美貌の持ち主だった小春こはるは当時から男が放っておかないフェロモンでナンパされていたわけだ。


 そして彼女が言っている引きこもりになっていたというのも、あながち外れではないから笑えない。


 中一にしてバストサイズは既に85を越えており(姉ちゃん調べ)、背丈も160センチ。


 アルビノカラーにも見えるライトブラウンの髪は彼女の美貌を引き上げる。

 精神が幼い状態で大人達にナンパされまくっていたら、それはもう精神を病んでもおかしくない。


 そういう訳で俺と姉ちゃんで小春こはるをガードし続けてきた経緯を持っている。


「まあアレだな。小春こはるもそろそろ独り立ちというか、せめてナンパをキッパリ断れるような練習をしておかないとな」


「うん、ごめんね、いつも迷惑かけて」


「いやぁ、俺は良いんだけどさ。それこそずっと一緒には居られないかもしれないだろ」


 一応、俺と小春こはるは同じ大学に進学予定だ。

 なので単純計算であと4年は同じようにガードできたりもするけど、根本的な解決にはならないし、ようは問題の先延ばしにしかならないわけだ。


「まあ大学も同じだし、あと4年は守ってやるからその間に独り立ちしろ。何しろ小春こはるに何かあったら姉ちゃんに俺がぶっ殺されるからな、ガチで」


 これは本当に冗談では済まされないからな。


「うん。ありがとう。あ、あのね順平ちゃん……っ」


 キーンコーンカーンコーン……


 小春こはるが何か言おうとしたところでチャイムが鳴り、話は一旦中断となった。


 何故か顔を真っ赤にして恥ずかしがった小春こはるは口を開かなくなってしまい、さっき言いかけたことは何なのか分からず終いだった。


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