俺と
学園生活では常に一緒。
同じ時間に登校し、席はなぜか隣同士になることが多く、互いの家にも行き来し、彼女の作ってくれたお弁当のお世話になることもしばしばあった。
俺はそれを当たり前のように享受し、当たり前のように受け入れていた。
いつしか俺達は夫婦と呼ばれ、知らない人間からするとカップルにしか見えなかっただろう。
だけど、俺はそんな周りの声に耳を塞いでいたような気がする。
これ以上好きな女性を増やすのは、おかしいことだ。
異常な感情だ。不誠実な感情だ。
だって反対の立場に立てば分かる。
自分の好きな女性に、自分以外の複数の好きな異性がいるなんて聞かされたら、普通の精神状態ではいられない。
だから俺は、彼女と恋愛するべきはないと、無意識に考えていたように思う。
ようするにヘタレが現実逃避をしていただけなのだ。
自分に好意を向けてくれる女の子との空気を壊したくなくて、甘えていた。
だけどそれじゃいけない。
「順平ちゃん、お菓子食べる?」
「おう、サンキュー」
その間、俺達はずっと肩を寄せ合っていた。
気持ちを言葉にしたわけではない。俺が一歩踏み出しただけで、
学校で夫婦と呼ばれ続けた俺達の心地良い距離感の正体は、互いが互いを思い合っていた気持ちの表れだったということを、証明している気がした。
新幹線とバスを乗り継いで、予約していた温泉旅館に向かう地図アプリを確認しながら移動する。
山道をバスで移動しながら都会を離れていく心地よさを味わった。
「うわぁあ、綺麗♡」
現地に到着して旅館にチェックインを済ませ、部屋へと案内される……。
そこで俺達はこの二人だけのプランが完全に仕組まれたものだと言うことを確信した。
隠れ家的な雰囲気を醸し出す老舗旅館は、もの凄く広い土地にたった数棟しか部屋が存在せず、客室からは大絶景を眺める内湯と露天風呂が付いていた。
木造建築で建てられたレトロな雰囲気がとてもムーディーで気分を盛り上げてくる。
こんな旅館は予約していない。いつの間にかすり替わっていたのだ。旅館名を確認してなかった俺も悪いが、友人の一人が手配していたのでそこまで気にしていなかった。
こんなのどう考えてもスイートルームだ。高校生の卒業旅行に利用できるようなものではない。
「あ、見て順平ちゃんっ。雪景色ッ」
「おお~。綺麗だなぁ」
窓から見える絶景は一面の雪化粧に彩られた枯山水である。
俺も
俺はそれを当たり前のように受け入れ、
時折視線を合わせると、照れ笑いを浮かべながらすぐに逸らしてしまう彼女の可愛さにドキドキしながら荷物を置く。
「いい雰囲気だね」
「そうだな。こういう余計な音がしない空間っていうのもたまにはいいな」
鳥のさえずり以外の音はほとんど聞こえない隔絶された非日常の空間で、俺達は二人だけの時間を堪能する。
お互いに時折視線が合い、恥ずかしくなって逸らす。
そんな事が何度か続いた。普通の会話をしている時は気にならないのに、時折会話が途切れて静かになると、お互いに恥ずかしくなる。
しかし不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
日本庭園を彷彿とさせる雰囲気のあるお部屋で、荷物を置いた俺達はウエルカムスイーツと香り高い緑茶を楽しんだ。
「さて、まだお昼回ったばかりだし、まずは観光を楽しむとしようか」
「うんっ、そうだね♪」
俺達は浴衣に着替えて温泉街の散策に出かけた。
雪景色ではあったものの、温泉街での浴衣というのは不思議と寒くなかった。
俺達は歩いている間ずっと手を繋ぎ、肩を寄せ合ってカップル……いや、夫婦のように過ごした。
夜ご飯はきっと豪華になるのでお昼は温泉街の軽い食べ歩きでお団子や饅頭を楽しみ、足湯に浸かったりして時間を過ごす。
「はあ……幸せ♪」
何気ない一言が
考えてみれば、俺達はずっと一緒にいるのが当たり前で、
「ああ、俺もだ……
「は、恥ずかしいから言わないでぇ」
「夕飯もたぶん結構なボリュームだぞ。大丈夫かそんなにお団子食べちゃって」
「だ、だいじょうぶだもんっ」
「太るぞぉ」
「きょ、今日だけだもんっ! 普段はちゃんとダイエットしてるからっ」
顔を赤くして俺の胸板をポカポカと叩く
「
「ふえっ!? と、突然褒めないでぇ」
赤面しながらそっぽを向いてしまった
それからしばらくの時。
宿へと戻ってきた俺達は、旅館内のまったりした空気を楽しみながら景色を堪能し、日が沈みきったところで部屋へと戻ってきた。
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明日は小春編5本公開しちゃいます。
存分にイチャイチャを堪能してください。
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