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第31話 2人が作る心地良い時間


「さて、せっかく温泉旅館に来たんだから風呂を楽しみたいところだけど、まさか部屋風呂しかないとはな……」


 大浴場のある旅館を手配していただけに、この展開は予想の外だった。


 さっきも言ったが旅館の客室は全て独立した離れになっており、風呂は部屋に直結した露天風呂と内湯しかない。


「あはは……。どうしよっか……」

「なんなら、一緒に入るか?」


「えっ!?」


 言ってみて恥ずかしくなった。慌てて冗談だと否定するも、小春こはるからは意外な返事が返ってきた。


「……えっと、うん……いいよ」


「え……いやいや、冗談……、……、……、いや、一緒に入ろうか」


 しばらく二人で沈黙の時間が流れるものの、互いに見つめ合い、赤面しながらも互いが了承する。


「さ、先に行ってるからッ、後から来いよ」


「う、うん。そうするね……」


 さすがに目の前でお互い裸になるのは避けた方が良さそうだったので逃げるように脱衣所に向かう。


 アメニティの豊富さに驚きながらも、脱衣所で衣服を全て脱いで大急ぎでかけ湯をする。


 本来は身体を洗ってから入るのがマナーだが、余裕のなかった俺は最低限のかけ湯だけで湯船に浸かった。



「ふわぁ……絶景だな……」


 内湯と一繋ぎになっている露天風呂から見える景色は、雪化粧に彩られた山間の絶景。


 暗い夜空の中でもところどころがライトアップされていて美しい景色は見て取れる。


 心が現れるような思いに駆られる自然の芸術は、俺のブレて揺れていた心を落ち着かせてくれる。


 しばらく温泉の温度を楽しんでいると、背中にヒタヒタという足音を感じる。


 小春こはるが近づいてきたのを感じ、再び緊張が走った。


 ザパァ……


 かけ湯をしたのだろう。打ち水の音が妙に艶めかしく聞こえ、心臓を高鳴らせて体温を上昇させた。


「入るね……」

「お、おう……」


 自然の音しかならない静かな空間に、小春こはるのソプラノボイスが心地良く響く。


 視界の脇にはシミ一つ無い白い足が見え、凝視しないようにと自分に言い聞かせるも、どうしても目が行ってしまう。


「順平ちゃん……」

「な、なんだ?」


「恥ずかしいから、あんまり見ないで……」


「す、すまん……綺麗だったからつい……じゃ、じゃなくて、ごめん」


「あ、ありがとう……タ、タオル外すから……あっち向いててくれると嬉しい、かな」

「わ、わかった……」


 ちゃぽ……


 小春こはるがお湯に浸かる音が妙にリアルに耳に入ってきた。


 それだけで心臓がもの凄い速度で鐘を打っている。


 なんだろうな。女の子の裸は初めてという訳でもあるまいに……。


 そこに小春こはるがいると思うと妙にドキドキが止まらない。


 ある意味で、有紗ありさ達の時より緊張している。


 あの時はあの時でいっぱいいっぱいだったが、向こうがリードしてくれたおかげで思い切った行動をすることができた。


 でも今はといえば……、お互いがお互いに意識してしまって気まずい沈黙が流れる。


 そんな空気を感じてか、小春こはるの方から言葉を発してくれた。



「んっ~~、気持ち良い……温かくて癒やされるね……」


「ああ。来て良かったなぁ、なんかめられた感じがするけど」


「あはは……そうだね」


「……」

「……」


 再びの沈黙。だが不思議と悪くない。


 しばらく言葉を交わさなかった二人だが、やがて手と手が触れて、俺達は自然とお湯の中で指を絡め合っていた。


小春こはる……」

「なぁに、順平ちゃん……」


「えっと……なんだろうな……なんだか、妙に小春こはるの名前を呼んでみたくなった」

「うふふ、なぁにそれ……」

「ははは……なんでだろうな。今までずっと意識してなかったけど、小春こはる小春こはるって名前で良かったなぁ、って……なんか思ったんだ……」


 小春こはる


 その名前を呼ぶたびに、俺の内側に心地良い昂揚感と幸福感が広がる。


「じゃあ、私も……順平ちゃん……」

「どうした?」

「呼んだみただけ……」

「そうか……」


 照れくさい。それはお互い同じだったが、不思議と居心地の悪さは感じなかった。


 肩を寄せ合って、いや、俺は自然と小春こはるの肩を抱いて引き寄せていた。


「ひゃ……♡ じゅ、順平ちゃん……?」

「嫌か?」


「……ううん。びっくりしただけ……。ねえ」

「うん?」


「良かったら……う、後ろから、抱き締めて……欲しいなって……」

「え、そ、それって……密着するって、ことだよな……」


「い、いやだったら別に」

「嫌な訳ないだろ……ほら」


 俺は足を開いて小春こはるを抱き寄せる。

 一瞬だけ照れくさそうに逡巡するも、微笑みを浮かべた小春こはるは俺の足の間に背中を預けてきた。


「失礼します……」


 真っ白で、透き通るような背中と、アップにした髪から覗く艶めかしいうなじ。


 女性の美を凝縮した魅惑の後ろ姿が俺の視界を覆う。


 ピタリと寄り添ってきた小春こはるの身体を後ろから抱き締めて、腕の間に豊かすぎる脂肪の塊が収まった。


「んっ……」

「柔らかい……」

「……エッチ……♡」


「だって、綺麗だから」


「もう……っ。恥ずかしいよ」


 俺は小春こはるを抱き締める。これまでの高校生活。これだけ密着したことなんて一度も無い。


 だけれども、俺達は自然に、本当にそれが当たり前だったかのように裸体で寄り添いあった。


「順平ちゃんの腕、凄くたくましい……初めて会った時は同じくらいの背丈だったのに……」

「ああ、そういえば……姉ちゃんと一緒にナンパから助けたのが出会いだったな」


「うん。あの時は本当に怖くて……二人に出会えてよかった」


 そっと握られる小春こはるの指が二の腕を掴んでくる。


 やがて何を思ったのか身体の向きを変えて正面で向かい合う。


 桜色に火照った肌と、その中で際立つ彩りの乳首が視界に映って下半身の熱量が高まる。


「こ、小春こはるッ……ッ!?」


「少しだけ、このままでいさせて……」

「お、おう……全然いいぞ」


 首に手を掛けて強く抱擁され、小春こはるの全身が密着してくる。


 柔らかさと熱量が素肌に伝わり、弾んだ吐息が首元に掛かる。


小春こはる……」


 俺も彼女の身体を抱き締めて密着度を強める。


 今夜にとっておこうとした言葉が思わず出そうになり、慌てて理性を引き戻した。


「順平ちゃん……。順平ちゃんがいてくれて、本当に良かった……」


 小春こはるの小さな吐息が心臓を高鳴らせていたが、自然とエロい気持ちは霧散していく。


 穏やかな気持ちが勝ったのだ。性欲よりも安らぎを感じる。


「……ぁ……」


 だがそれでも身体は正直に反応してしまう。


「ふわ……こ、これ……」

「す、すまん……でも小春こはる、柔らかくて」


 俺は何を言っているのだろうか……。

 倒錯した思いが頭を沸騰させる。


「すごい……これが順平ちゃんの……ゴクッ……」


 細くて柔らかい指先が屹立したペニスにそっと触れる。


「こ、小春こはる……ッ」


「これが……私の中に入るんだ……」

「ぇ……」


 それは何気ない、消え入るような微かな声で確かに呟いた。


小春こはる、今のは……」

「ハッ!? ……な、なんでもないからっ! 私、先に上がるねっ!」


 自分の呟いた言葉で恥ずかしくなったのか小春こはるは急激に立ち上がり、お湯が舞い上がって顔に掛かった。


「わっぷっ……えっ!?」


 湯煙に包まれた小春こはるの裸体が視界いっぱいに収まる。


 華奢な肩と、去年の夏に水着に隠されていた桜色の乳首。

 そして芸術的な腰のくびれから繋がる女体の神秘が目の前にあった。


「ひゃわっ……」

「お……おおっ」


 しばしの時、時の流れが止まる。


「きゃああああああっ!」

「す、すまんっ! お、俺が先に上がるよっ。のぼせないようにな」


「う、うん……ごめん」

「いや、むしろ嬉しかった……いやなんでもない」


 なんだろうこの会話は。

 俺はのぼせてフラつきそうになる身体を支えながら慌てて風呂から上がった。


「やっべぇ……なんだよあれは……反則だろ」


 小春こはるの裸体はあまりにも美しすぎた。

 白い肌に黄金比のバランスを崩した芸術的なラインが作り出す神秘的な女体は、俺の好みにハマりすぎている。


「やべぇ……どうすんだ、これ……」


 俺は身体を拭きながらガチガチに勃起してしまった愚息を鎮めようと身体を動かす。


 だがどうにも無理だった。

 なんともならずにひたすら精神統一をするしかない。


 何妙法蓮華経……色即是空っ。色即是空、色即是空。


 いや六根清浄の方が良いか。

 六根清浄ッ六根清浄ッ~~~っ。


 くぅう、六根は清浄でも俺の一根は不浄だ。


「あれは反則だろ……」

 俺は一向に鎮まりそうもないガチガチの勃起を眺めながら溜め息を付く。



 小春こはる……陥没乳首だった。




――――――――――


★次回は小春ちゃんとのイチャイチャ四連発。

 4本更新します。


ここまでお読みくださり誠にありがとうございます!


 次回、いよいよ小春ちゃんとイチャイチャ。


 執筆の励みになりますので、続きが気になる!と思った方は是非とも+ボタンで☆☆☆を★★★に。

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