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第38話 恋人同士の幸せ



 宿から出た俺達は有紗ありさ達と合流する為新幹線の駅に向かってバスに乗っていた。


 隣に座る小春こはるは本当に幸せそうで、いつも通りの彼女から何段階も笑顔が眩しかった。


「あ~、幸せだなぁ……順平ちゃんと恋人になれるなんてぇ」


 小春こはるは本当に笑顔がとろけている。

 待たせてしまった分、俺は小春こはるを全力で愛することにする。


 肩を抱き寄せて髪を撫でるだけでそのまま溶けてなくなってしまいそうなほど顔をほころばせる。


小春こはるの髪、良い匂いがする」


 なんて言おうものなら、少し恥ずかしそうにしながら――


「ふへへぇ……♡」


 ってな具合ですり寄ってくる。

 小春こはるは言葉にこそ出さないが、間もなく終わってしまう二人きりの時間を目一杯楽しもうとしている。


小春こはる

「うん、なぁに?」

「これからもちゃんと二人きりでデートとかしような。そこら辺も二人と話し合おう」


「本当? 私、3番目で良いって思ってるけど」

「考えたんだけどさ、俺は希良里きらり有紗ありさに優先順位は付けてないんだ。付ける権利ないと思ってるし」


「そう、なのかな……」


「ああ。でもさ、たぶん完全に平等っていうのは無理だと思う」

「うん……」


「だけど、好きな気持ち、愛してる気持ちには優先順位って無いんだ。なんていうか、俺は二人一緒に好きになったけど、好きになった理由はそれぞれ違うんだよね」


「私も?」


「そう。言葉にするのはちょっと難しいけど、小春こはるに抱いてる"愛してる"は、有紗ありさ希良里きらりのそれとは違う。気持ちに色を付けることはできないから、どう違うんだって言われたら説明し辛いけどさ」


「うん、でも何となく言いたい事は分かるかな」


「なんだろうな。こういうこと言うと調子の良い浮気男みたいになっちゃうんだけど、俺の中では小春こはるといると1番安心感が強い」


「そっかぁ……えへへ、嬉しい♡」


小春こはるは確かに希良里きらり達より出会いは遅かったけど、一緒に過ごした時間は負けていないし、なんなら学年が一緒なだけあって濃密さでは越えてるかもしれない」


「うん。私も、そう思いたいな」


「だからさ、うーん、なんて言うのかな……」

「分かるよ。順平ちゃんの言いたい事、私も言葉にはできないけど、その気持ちは凄く分かる……。私は、正直有紗ありさちゃんや希良里きらりちゃん達には敵わないって思ってたけど、順平ちゃんがそう思ってくれてるなら、私は私なりの1番になりたいな」


「ああ。小春こはる有紗ありさ達のようにはなれないし、有紗ありさ達に小春こはると同じ事はできない。一人一人、違う愛し方をしたい。俺は、三人ともにとっての1番でありたいって思ってる」


 だから小春こはる……と呼びかけて彼女を抱き締める。


「愛してる……。世界の誰よりも愛してる。三人とも、全力で愛し抜いてみせるから」


 そのように誓いを立てた。


「うんっ……私も、愛してる」


 指を絡めながら歩く俺たちは周りから微笑ましいものを見るような視線を送られ、二人で照れ笑いを浮かべるのだった。



 ◇◇◇◇◇


 バスに揺られること数十分。

 俺と小春こはるは人生で最後の時間のように寄り添って過ごし合った。


「「兄ちゃ~~ん♡」」


 駅に到着すると有紗ありさ希良里きらりがこちらに向かって手を振っている所に合流する。


「よう、待たせたな」

有紗ありさちゃん、希良里きらりちゃん……ありがとう」


「その様子だと大成功だったみたいだねっ!」


 希良里きらりは満面の笑顔で俺達の交際成功を祝福してくれた。


「二人のおかげだって聞いてる。詳しい事を聞きたいところだけど、今は四人で思い出作りをしよう」


「「「賛成~♪」」」


 事情の説明も良いが、今は俺達の為に身を砕いてくれた二人にお礼がしたい気分だった。


 俺達は新幹線に乗って別の観光地に移動するのだった。


――――――――――


ここまでお読みくださり誠にありがとうございます!




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