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第43話 高校生活の終わりに


 放課後。俺は小春こはると連れ立って帰路についていた。


「昼休みは大変だったなぁ」

「あはは。二人とも大胆だったね」


 お昼休みは非常に大変であった。

 お弁当を持ってきてくれたキラキラアリスの二人だったが、アイドル並みに有名な二人であるから、その影響力は凄まじい。


 彼女達は定期的に俺の教室へとやってきてお喋りに興じたりしていた。


 そのおかげでクラスの男達はソワソワするし、女子生徒達は可愛い後輩にメロメロだ。


 だが彼女達はそんな先輩達を適当に相手してすぐに俺達の元にやってくる。


 そして持参したお弁当を食べて嵐のように去って行く。


 彼女達が入学してきてからの一年間、この光景は我がクラスのみならず三年生の名物となっていた。


 まあ、その光景も今日で最後となったわけで。


 クラスメート達も随分と寂しそうにしていたものだ。


 とりあえず俺が二人としっかりと仲良くしておくことで他の男達に目を光らせている事をアピールすることになる。


「まあ俺がいなくなっても目を光らせている事が分かれば変な気を起こすヤツも減るだろう。嫉妬して変なことするヤツはどうしたって出てくるだろうし」


「有名人の苦労だね。凄いなぁ二人とも。私にはできないや」


「なにも二人と同じ事をする必要は無いさ。誰にだってやるべき事は違うんだからな。小春こはると同じ事があの二人にできないのと同じだよ」


 小春こはると手を繋いで学校からの帰り道を歩き、遠慮気味な小春こはるを引き寄せる。


 やがてその絡み方は恋人繋ぎに変わっていく。


「守ってもらってばかりじゃダメだから、私も強くならなきゃね」


「今回の事で小春こはるも少し有名になっちゃったからな。しばらく俺の側を離れないでくれよ」


 小春こはるは可愛い。姿は見えなくともSNSで情報が拡散されればいずれ目を付けられるかもしれない。


「うん。頼りにしてるね、素敵な旦那様♡ なんちゃって♡」


 只でさえ小春こはるはナンパされやすい。

 甘めのフェイスにおどおどした態度。そしてなにより目を引く爆乳が野獣のような男達の欲望を刺激してしまう。


 一言で言えば、小春こはるは存在自体がエロいのだ。

 俺でさえ目を逸らしていた小春こはるの魅力に気が付いてからは、いつ後ろから覆い被さってしまうか分からない。


「順平ちゃんなら、いつでもいいからね♡」


「お、おう……」


 小春こはるは俺の考えを見抜いたらしい。そんなナチュラルな微笑を向けられては道ばたでディープキスしてしまいたくなる。


「ま、まあなんだ。こうやって小春こはると手を繋いで帰ることになるとはなぁ。考えても仕方ないけどさ、もうちょっと早く自分の気持ちに気が付いてればなぁ」


 こんなところでぱじめる訳にはいかないからな。

 誤魔化すために絡めた手を引き寄せる。身を任せた小春こはるはそのまましっかりと指を絡めてうっとりし始めた。



「でも、私は高校生活楽しかったよ。ずっと順平ちゃんが一緒にいてくれたから」


「そうだなぁ。思えば中学からずっと一緒だったもんな。俺も楽しかったよ小春こはる。大学ではもっと違う形で楽しくやろうな」

「うん♪」


「そうだ。二人を迎えに行くまで時間もあるしさ、どっか寄っていかないか?」


「うんっ、嬉しいっ」

「どこに行こうか。小春こはるはあんまり騒がしい所は苦手だよな。カフェデートもいいけど、公園とか」


「うん。でも順平ちゃんと一緒なら平気だよ。あ、駅前のカフェに新作のケーキがあるって有紗ありさちゃんが言ってた」


「なるほど。よし、じゃあ今日は甘いもの食べにいこう」


「うん♪」


 満面の笑顔を見せる小春こはると仲良く手を繋ぎ、やがて腕を絡めて恋人放課後デートを楽しんだ。



 ◇◇◇◇◇


 駅前のカフェにやってきた俺達。

 運良く目的のケーキが最後の四つだけ余っており、俺達は自分達用と有紗ありさ希良里きらり達へのお土産用に購入することができた。


 ここでは目的のケーキの他に小春こはるが気になっていたレアチーズケーキを注文し、開いていたボックス席でお喋りを楽しみながら甘いものを堪能することにした。


「いよいよ今週から免許合宿だな」

「うん。一緒に行ってくれるのは凄く心強いよ。それに、今回は花恋かれんちゃんも一緒だしね」


 姉ちゃんか。

 そういえば今回の一連の流れを仕組んだのは恐らく姉ちゃんなんだよな。


 昨日旅行から帰ってから、さっそく姉ちゃんに確認しようと思ったが、夕べは大学の友人の家に出かけていたので会えなかったのだ。


 嫌が応にも合宿からは姉ちゃんと同じ場所に行くことになるし、なにより姉弟なので一緒の部屋に泊まることになっている。


 調べたら小春こはるも同じ部屋になっていた。

 恐らく姉ちゃんが今日という日を予見して三人一緒の部屋に設定したに違いない。


「姉ちゃんともしっかり話をしないとな」


 姉ちゃんはレズビアン。それはもう間違いないし、小春こはると付き合っていた。


 その真相は確かめないといけない。


 俺達はお洒落なカフェで数日後に出発する免許合宿への思いを語り合った。


 そして、いよいよ合宿の日がやってくる。



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