「さあさあやってきたぜ免許合宿ゥ♪ テンション上げていきまっしょいっ!」
ヘンテコなテンションの姉ちゃんが新幹線のホームではしゃいでいた。
あれから数日後、いよいよ合宿出発の日がやってきた。
姉ちゃんとは結局あれからタイミングが合わなくて話ができていない。
俺達がチョイスした合宿所は有名なリゾートホテルが近くにある人気のスポットだ。
集合場所の大きな駅のバス停に到着するまで、姉ちゃんは何故か俺と目を合わせてくれない。
だが不思議と嫌な感じはしない。
俺もそう思う。姉ちゃんは恥ずかしくなるとだんまりしてしまうのは昔からだ。
あの傍若無人なチビゴリラを俺が憎みきれない理由の一つだ。
端的言えば可愛いのである。
同じ宿泊施設に泊まるから機会はいくらでもあるだろう。
慌てることなく待っていればいい。
「ま、とりあえず合宿頑張ろうか。姉ちゃんとはいずれ話をしよう」
「うん、そうだね。
「彼女だからこそ分かることってか?」
「からかわないでよぉ」
ちょっと頬を膨らませて口を尖らせる
「おいおいなんだよ。こんな可愛い子が参加してるなんてラッキーだなぁって思ったらリア充ですかぁ? イヤだねぇ、合宿は遊び場じゃねぇのによ」
金髪にピアスを付けた随分とチャラついた男が舌打ちをしながら絡んできた。
なんか集団の中には一人くらいこういうのがいるから嫌になる。
別に迷惑は掛けないから関わらんで欲しい。
あんまりこういうのを放置すると姉ちゃんがキレて大惨事になるから適当にあしらっておこう。
「すみません。あなたに迷惑は掛けませんので、お互い不干渉にしましょう」
「ああ? ぁ……な、なんだよおたく……や、やろうってのか」
「いやいや、これから合宿なんだから問題起こすわけにはいかんでしょ。でも、俺の連れに手を出したらそれも辞さないからそのつもりでいてねっ」
できるだけドスの利いた声で金髪坊ちゃんに凄んでみせる。
「ぐぐぐ……チィ……、なんだよクソ。ちょっとした冗談じゃねぇかよ。マジになんなよにーちゃんよぉ」
この手のヤツってどうして自分が不利になると「俺、別に本気じゃなかったし~、なにマジになっちゃってるんですかぁ~」みたいな態度を取るのか。
まあ分かっている。
アレだ。自分が恥を搔いてることを認めたくないからだな。
自分が矮小でチンケな事をしたって自覚があるから自分を優位に立たせようとするんだ。
そう思うと哀れで怒る気にもならん。
と、思っていたら……。
「おい小僧」
「えっ……? ゴぴゅっ!!?」
俺が
「ほ、ほひっ、ほほほほほほぃひぃ……」
金髪が股間を押さえながらうずくまって倒れた。
キンタマを蹴り上げられたらしい。
「つまんねぇことしてんじゃねぇよガキが」
「姉ちゃん、初日からトラブル起こさないでくれよぉ。せっかく穏便に済ませようとしたのに」
「こんなヤツのために楽しい合宿が台無しになるのはヤダからな」
「去年それで教習所を途中退場になったの忘れたのか」
「ぬぐっ……」
そうなのだ。一個上の姉ちゃんがどうして俺達と同じ年に免許取得に行くのかといえば、暴力事件を起こして途中退場になってしまったからだ。
幸いまだ誰も集合場所には現れていなかったため事なきを得ている。
俺はこれから始まる合宿が波乱無く終わることを祈りながら合宿に向かった。
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