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第58話 大好きな人に大好きな人を寝取られたい度し難い性



 目の前の光景が脳を焼け付かせるような興奮に掻き立て、あたしは自らを慰める。


 弟の順平が恋人の小春こはるを力強く抱いている光景。


 それは本来あまりにも当たり前の光景であり、焦燥する要素は本来ありはしない。


 でも、小春こはるはあたしの恋人でもあり、大切な人である。


 その小春こはるがあたしを無視して別の対象、いや、自分よりもっと大大大好きな相手と重なり合って喜びまくっている姿は、あたしの嫉妬心を刺激し、敗北感を募らせた。


 しかしどうだろう。あたしはあり得ないほどメスの本能を刺激され、脳髄が痺れるような高揚感と興奮をもたらしている。


「ぐひっ♡」


 女としては致命的な笑いが出る。あたしはきっと酷い顔をしているに違いなかった。


花恋かれんちゃん、まだ果てちゃダメ」


 小春こはるの命令は絶対に守る。それは小春こはるのご主人様である順平の命令だから。


 弟の事も大好きなあたしは性癖直撃な興奮でフリーハンドに絶頂しそうになるのを堪え続けた。



花恋かれんちゃん」

「き、希良里きらり

花恋かれんちゃんの顔、すっごいことになってるよー」

有紗ありさまで……、そ、そんなにか?」


「寝取られスキーって本当なんだね」


 目の前で小春こはるが抱かれている姿を見せられながら、有紗ありさ希良里きらりに体を押さえつけられる。


 抵抗のそぶりを見せながら、私の体は快楽に身を任せてもだえていた。


花恋かれんちゃん花恋かれんちゃん」

「な、なぁにぃ、希良里きらりぃ」


 そんな中で希良里きらりが耳元で囁き、その内容があたしを更に興奮させる。


小春こはるちゃんが花恋かれんちゃんのいないところでどんなエッチしてるか、教えてあげようか」


 その雰囲気に便乗した有紗ありさがニヤリと笑った気がした。


 目には映ってないのに、その空気感だけで笑っているのが分かる。


 不本意なのに、興奮してしまう。

 それに伴って快感もうなぎ登りだった。


 まったく、なんでこんな性癖になってしまったのか。


 思えば中学の頃、弟に男を感じた頃からこうなる事を望んでいたのかもしれない。


 日に日にたくましくなっていく順平をおかずにした自家発電は年を追うごとに頻度が増していったものだ。


 偶然を装って順平のお風呂に突撃した事もある。


 姉弟の間柄で色っぽい展開になるわけにはいかず、網膜に刻みつけた順平の腹筋や胸板を思い出して激しく……なんて日々が続いた。


 いつしか風呂場から順平の下着をこっそり持ち出したりもするようになった。


 部活帰りで汗まみれになった順平のトランクスを嗅いだ時は神経が焼き切れるんじゃないかってくらい興奮したし、危うく処女膜破ってしまいそうになるほどだ。



 本当に度し難い性癖だ。ぞんざいに扱われるほど興奮し、時折やってくる順平と小春こはるの思いのこもった優しさに、どうしようもないほど溺れてしまう。


「聞きたい。小春こはるの、知らない姿……」


 希良里きらりはニコリと笑い、あたしの耳元に唇を近づけ、自分たちの見てきた小春こはるの淫靡な思い出を語り始める。


 それはあたしがまだ蚊帳の外だった卒業旅行での話。


 初めてを迎えた順平と小春こはるが経験した全てと、三人で迎えたご奉仕。


 好きな人が自分の知らないところで得た経験が、あたしを焦燥感と敗北感を伴った背徳的な興奮に誘っていく。


「知ってる? 小春こはるちゃん、順平兄ちゃんの前では……」

「ひぐぅう♡」


 自分の知らない小春こはるの姿は、想像以上に順平に従順で、あたしには一切見せたことのない淫らな顔をしているらしい。


 そのことがあたしの嫉妬心を燃え上がらせ、順平にはどうあっても敵わないことを改めて知らしめた。


 あたしの悲壮感を伴う激しい興奮を感じ取ったのか、順平がこちらに視線を送ってくる。



 小春こはるに加えて、あたしの視線は順平に釘付けになっていた。


 自分が××されているところを想像すると更に滾る。


 悲しい気持ちと嬉しい気持ちと、どうしようもなく興奮して喜んでしまう気持ちがミキサーに掛かったようにグチャグチャとなって感情をかき乱す。



 だがあたしの快感はまだ終わっていない。


 同じか、それ以上に激しくイカされた小春こはるが順平に抱かれたままあたしを抱きしめてくれるから。




小春こはる小春こはるぅ」


 きっと酷い顔をしているであろうあたしを、小春こはるは困ったように笑顔で見つめる。


 優しく温かい笑顔。その表情一つとっても、「もう花恋かれんちゃんのものじゃないんだよ」と言われているようで泣きたくなるような気持ちになる。


小春こはる、姉ちゃんにおっぱい吸わせてやれよ」

「はい♡ ご主人様の命令のままに」


 わざわざ芝居がかった口調で、しかし心からの本心であろう嬉しそうな声で順平の命令を受諾する小春こはる


 許可を得た小春こはるが振り払った手を優しく手に取って自らのおっぱいに添えさせ、聖母のような柔らかい笑みを浮かべて抱きしめてくれた。


小春こはるぅ、んちゅぅ、ちゅぱちゅぱ」


「ふふ♡ 花恋かれんちゃん可愛い♡」


 いつの間にか体位を反転させられ、あたしの小さな体は順平の腕力でいとも簡単に持ち上げられる。


 正面から抱きしめる小春こはるのぬくもりと、後ろから容赦なく突き込んでくる順平の熱量。


 ぞんざいに扱われるほどに感じてしまうあたしの性癖を、世界で誰よりも理解してくれる二人によって、絶頂を飛び越えて甘い快楽の泉に沈む。


◇◇◇


「さ、さすがに限界だぁ」

「姉ちゃんお疲れ。体痛くないか?」


「らいじょう、ぶぅ……ふひ」


 寝取られ、奪われ、貶められる行為の後、小春こはると順平は二人であたしを挟み込んで優しく包んでくれた。


 まるで父と母が子を慈しむように両側から抱きしめられ、あたしは眠りにつくまでそのぬくもりを感じ続けていくのだった。


 あたしの性癖は度し難い。


 しかし、それら全部を理解し、受け入れ、望む全てを与えてくれて、そして全部を優しく包み込んでくれる大好きな二人に囲まれたあたしは、きっと世界一の幸せ者に違いなかった。


――――――――




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