目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第61話 小春日和


「キスだけなのに、凄くドキドキするね♡」

「俺もだ。青姦をするなんて思わなかったよ。でも、今はワクワクしてる」


「順平ちゃん、私の身体、どこが好きか聞いていいかな?」


「いいぞ。幾らでもあるよ。細かく言ったらどれだけでも言える」


 料理が上手いところ。優しく気遣いできるところ。

 俺の為に全力を尽くしてくれるところ。


 でも彼女が聞きたいのはそこじゃなくて身体のことだ。


「この淡い色の髪がサラサラしてるところが好きだ。クリッとしてるのに少し垂れ下がった優しげな目。ぷっくりした唇。細くて線の通った顎のライン。俺の好きな女の子の造形、全てが理想通りだ」


 それに、と俺は続ける。


「俺に届く背の高い小春こはるが好きだ。逆の意味じゃないぞ。背の低い他の三人が嫌いって意味じゃない。背の高い小春こはるが好きなんだ」


「うん♡」


小春こはるの大きな胸が好きだ。感度が高くて、いつも俺のを嬉しそうに挟んでくれるこのおっぱいが大好きだ」



 小春こはるのくびれは美しい。大きすぎる胸を更に強調するように、美麗なカーブを描いている。


「細くてくびれたこの腰のラインが好きだ」


 その延長にあるもう一つの双球に辿り着く。


「柔らくて弾力のある太ももが好きだ。おっぱいと同じくらい大きくてムニムニしたお尻が大好きだよ」


 本当はもっと、足の指先まで愛でてあげたい。


 つまるところ、俺にとって小春こはるは全てが全て、理想の塊なのだ。


 性格も、顔も、身体も、そしてセックスの相性も……全部が全部……。


小春こはるの全てが俺の最高の理想そのものなんだ」


「嬉しい……じゃあ頑張って体型維持しなきゃね。こんなに大きいと将来垂れちゃうだろうし」


 苦笑する小春こはるの腰から脇に掛けてのラインをなぞりながら、その苦笑に答える。


「俺はその小春こはるだって愛し抜く覚悟がある。だけど、俺は綺麗な小春こはるだけじゃなくて、『綺麗でいようとする小春こはる』が大好きだ」


「ありがとう順平ちゃん……私も、好きだよ。順平ちゃんの全部が好き……」


 小春こはるの指が頬を撫で、優しい瞳が視界を塞いでくれる。

 俺の世界は小春こはる一色に染まり、可憐な唇が言葉を紡ぎ出した。


「精悍な顔つきが好き……。意志の籠もった強い目が好き。セクシーな唇の形と感触が好き……♡ 顎のラインも、首の筋も……」


 その指は段々と下に降りて胸板に這ってくる。


「筋肉で盛り上がった逞しい胸板が好き。八つに割れた強靱な腹筋をなぞるのが大好き……私を軽々と持ち上げる太い腕が好き♡ それを支える強靱な足が好きなの……そして」


 這っていく指が身体の中心へと移動し、艶かしい動きでなぞっていく。


「そして私を毎日泣かせてくれる順平ちゃんのここが愛しくてたまらないの……ふふ、こんな言い方したら、凄く淫乱な女の子みたい……」


「俺はそんな小春こはるでも大好きだぜ。俺も大概ドスケベだしな」


「私ね、順平ちゃんにそれを全部叶えて欲しい。もしも三人の誰にも言いにくい性癖なら、私に一番最初に言って欲しい……それが私の悦びだから」



「そうだな。小春こはるになら遠慮なく吐き出せる気がする。お前の包容力は、あの姉ちゃんすら手懐けちゃうくらいだからね」


花恋かれんちゃんはとっても素直で可愛い女の子だよ。ちょっと照れ屋さんなだけだから」


「それを引き出せることが凄いってことさ。俺もさ、小春こはるにならSとMが反転しても構わないとすら思えるかもな」


「ふふ、順平ちゃんがそれを望めば、私はいくらでも変われると思う。でも……」

「ああ。俺は多分……可愛い小春こはるに意地悪するのが大好きで」

「私は、順平ちゃんにいっぱいイジめて欲しい♡」


 互いの思いと利害が一致する。俺は小春こはるの唇に強い吸い付いた。


「ブラジャーが付いてない」


「うん♡ 家で外してきちゃった……」

「じゃあ今日はずっとノーブラデートだったわけか」


 俺は笑いがこみ上げてきた。


「順平ちゃん、いい顔してる。私、その顔の順平ちゃんにいじめられるのが大好き♡」


「ああ、小春こはるが一番幸せになれるように、いっぱいイジめてやるよ……」


 じっくりと時間をかけて小春こはるをいじめてやろう。


 小春こはるの身体の隅々まで、彼女にとってもっとも嬉しい事を刻んでやろう。


「ふぅ、ふぅ……やっぱり、さっきの話、撤回していいかな?」

「何がだい?」


 息が弾み、トロンとした目の小春こはるが何かを訴えてくる。


「私、やっぱり順平ちゃんにはSになれそうもないや……、私、順平ちゃんに支配されたい。この心地良い心の響きは、私が順平ちゃんより上に立ったら、きっと味わえない……」


(私は順平ちゃんに支配され続ける事が喜びなんだ)


 そのように小春こはるは言う。


「私は、きっと前世から順平ちゃんに奉仕するためにいたんだって思う。生まれた時から順平ちゃんに従いたかった。そのくらい、この響きはとても心地良いんだ……」


 なるほど。かなり大袈裟に聞こえるが、意外としっくりくるように思う。


 前世どうのってのは何とも言えないが、それくらいに小春こはるが俺に奉仕することに喜びを覚え、それこそが自分自身の一番だと感じている。


「だから私、順平ちゃんの隣にいるのに相応しい女になりたい……だから順平ちゃんも」

「ああ。俺はお前がずっと支配されたいって思えるくらい、良い男であり続ける」


 そしてそれは俺も全く同じ。少し甘えるくらいなら俺もやってみたいが、小春こはるに全てを委ねてMになるって未来は想像できない……。


 いや、小春こはるがそれを望む未来が見えない。そして俺がそんな小春こはるを見たいと思う未来が見えない。


 小春こはるは俺に支配され、俺は小春こはるを支配することを喜びとする。


 俺達はそういう風にできている。それ以外の選択肢はない。


「愛してる。小春こはる、深く深く、俺はお前を愛してる」

「私も、愛してる……♡ 誰よりも誰よりも……、全てを捨てても良いくらい、愛してる。でも、私は捨てない。有紗ありさちゃんも、希良里きらりちゃんも、そして花恋かれんちゃんも……。捨てない。私も捨てさせない。みんなみんなで愛し合おうね……私達の、ご主人様♡」


 対等でありながら、主従関係のように付き従う。

 それが俺達の在り方であり、俺達のベストなのだ。


◇◇◇


 小春こはると俺は繋がった。


 小春日和こはるびよりの暖かい風が俺達を祝福してくれた。


 キスを繰り返す小春こはるの頬にぽろぽろと流れ落ちてくるのは涙の塩味だった。


 涙の理由は敢えて問うまい。その表情を見れば、何を持って流しているものかすぐに分かる。


 卒業式という人生の節目。そんな日に結ばれることの喜びに震えているのだ。


 愛おしそうに動く指が頬を包み、銀色の糸を引いて唇が離れる。


「順平ちゃん、好き……愛してる」

「俺もだ小春こはる


 互いの瞳が互いを捉え、再び唇を重ね合う。


「ねえ、順平ちゃん……」


「なんだ小春こはる

「今から、ウチにきて……」


小春こはるの家にか? もちろん良いよ」


「私の部屋、久しぶりに来て欲しい……」

「そういえば、家に行くことはあっても部屋までは入らなかったな……」

「そこで、もう一回しよ♡ 高校生のうちに、彼氏とお部屋でエッチする夢、叶えたい♡」


「良い夢だ。行こうぜ……。小春こはるの部屋で、小春こはるを俺のものにしたい」


 小春こはるが望んでいる言葉はすぐに分かる。小春こはるが一番言って欲しい言葉は、俺の心にすぐに浮かんでくるのだ。


 小春こはるの表情を見て、俺は自分の吐き出した言葉を訂正した。


小春こはるの部屋で、小春こはるを俺のものにする」


「うん♡」


 その満足気な表情が、言葉の選択が正解だったことを悟った。


 ◇◇◇◇◇


 春風が暖かい公園での愛し合いを楽しみ、その場を後にした俺達は雛町家にやってきた。


 母君は友達とのディナーに出かけていて、俺と小春こはるの二人きりとなる。


 丁度出かけるすんでの所に出くわしたのだが、『ニマァ~』と気味の悪い笑みを浮かべられて肩を叩かれた。


 アレはもう完全にここで何をしようとしているのかバレている感じだ。


 ウキウキしている小春こはるは気が付いていないようだったが、明日の朝食あたりで大いにからかわれる未来が待っている事は容易に想像できる。


 小春こはるの家で、小春こはるの部屋で、高校生活最後の思い出作り。


 母君が帰ってくる夜まで続いた激しい"交わり愛"は、俺の精が尽き果てるまで続くのだった。


 ……一方その頃、有紗と希良里もまた、俺達の卒業を思って"交わり愛"をしていることを、後で聞かされることになる。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?