「キララと~」
「アリスの~」
「「キラキラアリス☆」」
『キラアリ生配信キターーー』
『アリスちゃんもキララちゃんもメチャ可愛ッ!』
『女だけど普通に惚れる……』
『レ〇ビアンって正式にカミングアウトしたんだっけ?』
『ずっと前からそうだって思ってたけどやっぱりか』
画面からは様々なコメントが矢継ぎ早に流れてくる。早速投げ銭と言われるお金が投げ込まれており、キラアリの人気の高さが窺える。
スマホカメラの前で美少女二人が眩しい笑顔を見せてポーズをとっている。
俺は二人のカメラマンとしてスタンドに引っかけたスマホを構える役割を担っていた。
「今日はねぇ、いつも話してるにーちゃんにカメラアシスタントしてもらってるんだよぉ」
「いつも動画の編集とかやってもらって、頼りになる兄ちゃんなんだよね。キラキラアリスのデビュー当初から屋台骨を支えてもらってるマネージャーさんみたいな人なんです」
その日、俺は初めて動画に出演することとなり、キラキラアリスには強力なボディガードが存在することを世の中に知らしめるんだそうだ。
二人の動画には俺の存在は前々からずっと示唆されており、ファンの人、特に女性ファンから見てみたいというコメントが多く寄せられていたらしい。
「といっても、ウチらと違って一般の人だから顔出しはNGだけどねぇ」
キラキラアリスという女の子二人組の動画にとって俺は異分子でしかないため、余計な男感を出さないように人格を隠しての出演となる。
あくまでネタキャラとして認識してもらわないといけないからな。
馬のかぶり物を身につけてタンクトップのコミカルな筋肉キャラを演じていこうということになった。
ちなみに言葉は一切発しない。声を出すと人間味が出てしまうからだ。あくまでもネタキャラ。マスコット的な存在として出ることが重要となる。
「「それじゃあ
『ワクテカ』
『どんなアニキなのだ?』
二人の合図で画角にしゃしゃり出る俺。事前に打ち合わせしていた通りの動きでカメラに映り、早速コメントが流れてきた。
モニターに繋いでリアルタイムに見られるようになっているので反応はダイレクトに見ることができる。
『マジでアニキでワロタww』
『ウホッ、良い男』
『つかデケェwww』
『あ~、やっぱり彼氏いたんだな』
『ファションレズカップル乙ww』
『キラアリの世界に男イラネ。登録解除します』
悪口のようなコメントもちらほらあったりもするが、そんなものはごく一部のものだ。キラキラアリスの人気からすれば微々たるモノでしかない。
「はーい♡ 知っての通り、この人は私達の兄ちゃんで、幼馴染みなんです」
俺の出演がきっかけでコメントが増えていく。どういうわけか俺の存在は好意的に受け入れられているようだ。
これも二人が普段から俺の存在を示唆して好意的なイメージを植え付けてくれたおかげだろう。
『筋肉ヤベぇwww』
『どっちかの彼氏ってこと?』
『まさかのハーレムとか?』
『いや中身おっさんじゃね?』
『いや、この仕上がりはそうとう磨き上げてる……。バトル用の筋肉だろコレ』
なんでか俺の筋肉談義で盛り上がっている。
この日の配信は過去最高の高評価を獲得し、投げ銭もかなりの額に上ったそうだ。
俺は時折二人の動画に出演することとなり、キラキラアリスの評価はますます上昇することとなったようである。
二人の役に立てたことに満足した俺は、役目をしっかりとこなすことに集中した。
この回を境に女性からのファンレター(たまに男性有り)を大量に送られてくることになったのだった。
こんな感じで俺達は春休みをしっかりと満喫していた。