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第73話 目隠しと匂い付け


 お洒落服と水着を購入し、ホクホク笑顔で店を出た俺達だったが……、オープンした瞬間にキラキラアリスのファンの女の子達が集まってしまいちょっとしたパニックになってしまうひと幕があった。


 どうやら店で彼女達を見かけたファンがSNSで拡散したことでこんな風になってしまったらしい。


「あのっ、もしかしてこの間の動画で出ていたマッチョのお兄さんですかっ!?」


「え、ああ、いやその……。はい」


「うわぁ、うわぁあっ! すごい筋肉ッ! ちょっと触っていいですか!」


 どうやらこの間の動画で俺を見てくれた子達らしい。


「え、いや、うーん。それはちょっと」


 まさかの事態にちょっと慌ててしまった。女の子達にキャーキャー言われるのは悪い気はしないが、如何いかんせん恋人達のいる前でデレデレするわけにはいかない。


 既に四人の不機嫌オーラが滲み出している気がする。


「あのっ、すみません!」


 どのように断ろうかとあれこれ考えていると、俺の腕をとった小春こはるが胸を寄せて女の子達から俺を引っ剥がす。


「ウチの彼氏なので、ベタベタされるの、ちょっと困ります……っ」


「うわ、き、綺麗な人……」

「つか、胸でか……」


「あんなに綺麗な人が彼女かぁ。ちょっとチャンスなさそうだなぁ」


 女の子達は小春こはるの姿を見て諦めたように身を引いていった。


「ありがとう小春こはる、助かった」


「……」


小春こはる?」


 小春こはるは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして固まっている。人見知りで恥ずかしがり屋の彼女にとっては絞り出した勇気がキャパオーバーを引き起こしてしまったようだ。


「じゅ、じゅんぺ~」

「え、姉ちゃん?」


 小春こはるをねぎらっていると、服の端っこを引っ張る姉ちゃんが疲れた顔で寄りかかってきた。


「どうしたの?」

「囲まれて揉みくちゃにされた……」


 どうやらチビッちゃくて可愛い姉ちゃんをみた女の子達に囲まれて「可愛い可愛い」と質問攻めにされてしまったようだ。


 ファンの子達を満足させたキラキラアリスの二人が戻ってくるまで、俺達は隅っこのベンチで大人しくしていた。


「むぅ……兄ちゃんっ!!」

「にーちゃぁんっ!」


「おう、お疲れさん」


 戻ってきた二人は何故か不機嫌だった。


 なんとなく理由は察したのでどうお詫びしてご機嫌を取ろうか思考をフル回転させたことは言うまでもない。


「あ、あの、皆さん……これからどこへ……?」


 セレクトショップを後にした俺達は、本来なら繁華街でランチの予定だったのが……。


 俺が女の子に囲まれてデレデレしたことで不機嫌になってしまった希良里きらり有紗ありさに引っ張られてクルマへと連れ戻された。


 そして姉ちゃんに何事かを指示してクルマを出発させたのである。


「にーちゃんには罰を受けてもらいまーすっ」

「他の女の子にデレデレした罰でーすっ」


「うん、それはゴメン……」


 不可抗力とはいえ、恋人達の前で他の女性を毅然とした態度で断れなかった俺に非があるのは間違いないだろう。


 運転手は小春こはる。助手席には姉ちゃんが座っている。

 後部座席の1番後ろにある三人掛けの席に座って両側に二人が胸を押し付けるように迫ってきていた。


 俺は言い訳や抵抗をやめて殊勝な態度に臨むことにしている。女の子に囲まれてちょっとテンションあがってしまったのは事実であるからな。


 まあ、四人とも本気で怒っているわけではなく、それを口実にしてイチャイチャしようとしていることは何となく分かるので抵抗しないでいる。


 キラアリの二人は腕に引っ付いてずっと甘えてくる。


 クルマを運転する小春こはるを除いて、ずっと視線をチラチラ送ってくる姉ちゃんも、なんだかソワソワしている感じがする。


「ところでどこに向かってるの?」


「ないしょー! そろそろにーちゃんには目隠ししてもらいまーすっ」


「えー?」

「はい目を閉じてぇ」

「分かったよ」


 俺に拒否権はないらしい。さっき予約がどうのこうの言っていたのでどこかの施設に向かうのだろうか。

 逆らってもいい事はなさそうなので素直に目を閉じて大人しくしたがった。


 その直後に何やらゴソゴソと音がする。


「よいしょっ」


 何事かと薄目を開けて確認しようとしたところで、頭に何かを被せられて視界が暗くなる。



「なにやら温かいな……こんな布どこにしまってあったの?」


 蒸しタオルにしては湿り気が足りない。生温かいし、なにやら香水の香りがする……。


 タオルかと思ったが手で触ってみると形状が大分違うし薄い。


「ってこれパンツじゃんッ!」


 形は完全にパンツのそれだ。ほのかに温かいところをみるとどうやら脱ぎたて。いま履いていたパンティであることは間違いなさそうだった。


「さーて、ウチと希良里きらりのどっちでしょうかっ!」


「むむぅ……クンクン……この匂いは……」

「うわっ、真剣に考えてる。兄ちゃん可愛い♡」


 恋人のパンツを頭から被って真剣に腕を組むというのは中々にシュールである。変態であることは認めよう。


「これは有紗ありさだな」

「ほほう、その理由は?」


 理由と言われても、有紗ありさの匂いだからということしかできない。

 強いて言うなら、有紗ありさは爽かな匂い。希良里きらりは甘い匂いが特徴である気がする。



 二人の性格をそのまま表しているような気がして、その意見をそのまま伝えた。


「そっかぁ、うひひっ。ウチは爽やかかぁ」


 どうやらご機嫌になったらしい有紗ありさの爽やからしからぬ濡れた笑いが聞こえてくる。


「なあ正解したから許してくれるか?」

「それとコレとは別問題でーす。じゃあ次のパンツは誰のでしょー?」

「え、これまだ続くの?」


 それから今度は本当にタオルで目隠しされ、二度三度とパンツを鼻に押し付けられる。

 流石に運転中の小春こはるのをやってくることはなかったが、有紗ありさがもう一度仕掛けてくるなどフェイントも混じっていた。


 あと言葉にはしないが、希良里きらりは濡れ始めていたらしく鼻先にエロい匂いが漂って勃起しそうになった。


「着いたよー」


 そんな遊びを繰り返していると、目的地に着いたらしいことを小春こはるが伝えてくる。


「じゃあにーちゃん付いてきてー」


 有紗ありさ希良里きらりと思われる手に引っ張られ、クルマを降ろされて歩き始める。


「どっちに行けば良いかな?」

「そのままエレベーター乗って大丈夫だよぉ」


 小春こはるの声に指示を出す希良里きらりに従って引っ張られていく。

 エレベーターに乗ったらしい俺達はそこから無言でどこかへ向かっており、妙に緊張した。


「うわ……広いね……」


 小春こはるのそんな声が聞こえてくる。なにやらムーディーな音楽が流れており、どこかの施設に入ったらしいことは分かるのだが目隠しされているのでよく分からない。



 ただ、雰囲気的に何となくホテルではないかと思った。空気感というか、空間全体に漂ってくる匂いみたいなもので下半身が疼く感じがするのだ。


花恋かれんちゃん、向こうの部屋に……」


 ごにょごにょと耳打ちらしい声が微かに聞こえてくる。ここまで来たら流れに身を任せるしかない。

 皆が怒っているわけではないことは何となく分かるので、たぶん俺はお仕置き名目で何かされるのは間違い無い。


「兄ちゃん靴脱いで~」

「お、おう」


 希良里きらりに促されて靴を脱ぎ、恐らくは小春こはるらしい手がジャケットを脱がしに掛かる。

 小春こはるだと分かったのは気配が俺の顔近くまでいるからだな。



「ん~♡ スンスン♡」

「あっ、小春こはるちゃんまだ始めちゃ駄目だよッ!」

「ご、ごめんなさい、良い匂いだったからつい……」


 首筋に感じる小春こはるの鼻先がスンスンと鳴ってピタリと引っ付いてくる。


 どうやらいつの間にか何をやるか相談済みらしい。


「はい、にーちゃんこっちだよ」

「お、おう」


 まだ目隠しを取らせてもらえないまま、靴を脱がされて座るように促される。


 ギシリと柔らかい感触の上に座り、どうやらベッドらしいことが分かる。


「もうちょっと後ろにずり下がってねぇ」


「はい、寝っ転がってぇ」


 有紗ありさ希良里きらりの声が俺をベッドの真ん中に導き、大の字に寝転がった。


 ギシ、ギシッ、ギシッ、ギシイィ……


 四人分の体重がベッドの上に乗っかったのが分かる。

 暗闇の中で感じる全員の気配。


 何が起こるのか分からないまま、四人に見下ろされているのが何となく分かる。


 異様な気配で視線を浴びせられ、なんとなく落ち着かない……と同時にゾクゾクした気持ちがわき上がってくる。


「「「「せーのっ!」」」」


「ぐえっ!?」


 いくら鍛えていると言っても人間の体重の自由落下には流石にダメージを受ける。

 体重の軽い女の子の柔らかい感触が四人分。俺の身体に落下してくる。


「みんなで~」

「いっしょに~」

「匂い付け~」

「するぞっ」


 四人分の身体が一斉に乗っかり、全身を擦りつけながら鼻先と唇を色々な場所にキスをし始める。


「お、おおうっ!?」


「に~~ちゃ~んっ、女の子にデレデレしたお仕置きぃ♡」

希良里きらり達全員の匂い擦り込んじゃうからねぇ」


 シャツの中に頭を突っ込まんでくる二人分の頭。


 耳元で有紗ありさ希良里きらりの声がしたから消去法で姉ちゃんと小春こはるになるか。


 目隠しされている分だけ鋭敏に感じる全員の鼻先と息遣いの感触が奇妙な興奮を与えてくれる。


「みんなまだペロペロしちゃ駄目だよぉ」

「「「はーい」」」


 ムードメーカーの有紗ありさが皆に指示を出す。


「お、おっふ……」


「はむはむ♡ 耳たぶ噛み噛み~♪」

「ちゅぱちゅぱ~♡」


「お、ほうぅふぅ」


 変な声が出てしまう。キラキラアリスの美声が艶めかしく響き、脳の中に直接愛撫されるような錯覚を起こした。



「お、お、おぉ……み、みんな」


「にーちゃんの匂い、上書きしちゃうんだから」

「他の女の子の感触全部忘れてね~」


 やっぱり皆の嫉妬が今回のことに駆り立てたらしい。


 唇で愛撫しながら、四人が四人とも全身を擦りつけてくる。


 まるで匂いを擦り込むように。動物同士がグルーミングするように唇と唾液、身体全部を使った匂い付けをされていく。


「今日はにーちゃんから愛撫禁止ねッ」

「お、おう。分かった」


「じゃあ皆、ペロペロ愛撫始めよっか♡」


「「「賛成~♡」」」


 唇と身体を擦りつける声に湿り気が増し、四人の舌と指が一斉に襲い掛かってきた俺の股間が期待にふくらみ始めたのは言うまでもない。



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