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第※※話 姉ちゃんの・裸エプロン・見てみたい(順平、心の一句) その1


「タイトルの通りだ。是非頼むよ姉ちゃん」

「意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ。何の話だ?」


 姉ちゃんにメタは通じないらしい。そんな今日の俺は、前々から頼んでいたアレを実行したくて、姉ちゃんに頼み込むことにしたのだ。


 姉ちゃんは可愛い。

 反則的に可愛いのだ。


 そんな姉ちゃんのあられもない恥じらう姿を見てみたいと思う俺の心情を誰が否定できようか。


 俺は自分の万感の思いを込めて心の一句を解き放つ。


「姉ちゃんの、裸エプロン、みてみたい。順平、心の一句」


「あ?」


「姉ちゃんのっ、裸エプロンッ! 見てみたいぃっ!」


「死ねッ!」


「はぶスッ!?」


 姉ちゃんの鉄拳が飛んできた。アゴにパワフルな一撃を食らった身体が仰け反って転倒し、後頭部をしたたかにぶつけてしまう。


「ぐおおおっ、マジで痛いッ! 酷いよ姉ちゃんッ、弟の渾身の一句を」

「そのまま辞世の句にしてやろうか?」


 頭を踏みつけられてグリグリとされるが本気の力が籠もっている。

 しかしこの感じだともう少し駆け引きすればイケそうな感じがする。


 今日の俺は諦めが悪いぜ。


「そんなに裸エプロンがみたいなら小春こはるとか希良里きらりにやってもらえよ。あいつらなら断らないだろうが」

「もちろんそれだって素晴らしいに決まってるッ!! だけどっ、今の俺はッ! 姉ちゃんの裸エプロンがみたいんだぉおっ! 頼んますぅぅ! この通りぃっ!」


「うわっ、本気の土下座しやがったこの野郎ッ……恥ずかしいんだよ。アタシみたいなちんちくりんの裸エプロンみたって面白くないだろうが」


 姉ちゃんがドン引きしている。流石の姉ちゃんでも本気土下座なら断らないと思ったのだが、頑なに態度を崩さない。

 よし、頼み込むのがダメなら駆け引きをしようじゃないか。


 今日の俺は姉ちゃんの裸エプロンを見るまで絶対に諦めないと決めているのだ。



「はぁ~(クソデカ溜め息)……。ここまで頼んでもダメかぁ……姉ちゃんがそんなに嫌がるなら仕方ない……。裸エプロンは諦めるとしよう」


「お、おう……潔いな。分かってくれたらそれで良いんだよ」


「良いのかなぁ姉ちゃんさんさぁ」

「あ? 何がだよ?」


 頭を上げて急激に態度を変えた俺に少しひるんだ様子で顔をしかめる姉ちゃん。

 空気が変わったのを感じとり、俺は不敵そうに見える笑みを浮かべる。


「みんなに頼めば断らないだろうなぁ。断ったのは姉ちゃんだけになるんだぜ? いいのかなぁ? 1人だけアウェーでも」

「ぬぐっ……」

小春こはる、残念がるだろうなぁ。いずれ一緒にプレイするときだってくるだろうに。そん時に姉ちゃんだけ嫌がってたら、花恋かれんちゃんと一緒にしたかったのにぃって、失望させちゃうぜ?」


「ぬぬぬぬ……ッ。ああっ、もうっ! 分かったっ、分かったよ、全くお前の執念深さには負けるぜ……」


「やったぁあ~~~~っ! 姉ちゃん愛してるぜっ!」

「ひゃわぁっ、だ、抱きつくなこらっ」

「いいじゃんっ、今から目一杯愛し合うんだからっ」


「ったく……。義理とはいえ、姉の裸エプロンなんてそこまでみたいのかよ……」

「俺が姉ちゃんをどれだけ愛しているのか分かるまで語り続けようか?」


 姉ちゃんだって俺のこと大好きなくせに。と耳打ちしてやると顔を真っ赤にする。


「ひゃうぅっ、もう分かったッ! 分かったからっ! ちゃんとやってやるから、耳元で囁くニャァ♡」


 いつもならぶん殴られるのに、どうやらデレモードに入ったようだ。

 この状態にさえなれば姉ちゃんは大概のワガママは許してくれる。


「流石にいきなり全裸は恥ずかしいから、下着で勘弁しろ」


「心配しなくても、ちゃんと準備してあるぜ」


「うえっ!? なんだよこのフリフリのヤツは……。一緒にあるのは水着か?」

「イエス。いきなり全裸のエプロンは抵抗が強いだろうと見越してちゃんと水着エプロンから始める手筈は整っているのだ」



「お前随分準備がいいな。どんだけ本気なんだよ」

「裸エプロンへの一念、岩をも通す覚悟だ」


「その執念をもっと別の事に使えよな」



 ブツブツと文句を言いながらも、少しずつ衣服を脱いでくれる姉ちゃんはやっぱり可愛い。

 恥ずかしそうに服を脱いでいると、居た堪れなくなったのか後ろを向いておけと命令された。


 ここで変に逆らったらヘソを曲げてしまうかもしれないからな。今は慎重に動くターンだぜ。


「うう、水着とはいえ……ほとんど紐じゃねぇか……。エプロンも無駄にフリフリだし。実用性皆無だろこれ」


 ちなみに今回の紐水着とフリフリエプロンは全部ハーレムの参謀、希良里きらり軍師の準備したものである。

 背中には呪詛すら籠もっていそうな凄い声が届いているが、なんだかんだちゃんと着替えてくれるみたいだ。


「できたぞ順平」

「もうそっち向いていい?」

「ダメ」

「良いんだな。よっしゃ」


「ダメッってんだろうがっ! あ、こら、ホントにこっち向くなよッ」


 姉ちゃんの言い訳を無視して振り返ると、顔を真っ赤にして立っている姉ちゃんの破壊神クラスの可愛い姿が目に映る。


「うう……弟の性癖が死ぬほどキモくて辛い……」


「ちなみにこいつは全部希良里きらりが準備したものだ」


「マジかよあいつめ……」

「あ、姉ちゃん。ちゃんとニーソはいてくれたんだ」

「これ見よがしに準備してあるからな。履かなかったら絶対文句言うだろお前」


「拗ねるのと騒ぐのとどっちが良かった?」

「どっちもお断りだ」


「とは言いつつもちゃんと髪留めリボンまで付けてくれてる姉ちゃんが大好きだ。愛してる」

「これほど嬉しくない愛してるがあるなんて知らなかったよ」


 フリフリエプロンっ! ヘアリボンッ! そしてニーソッ! 


 素晴らしいではないかっ。


「んで? どうすんだ。このままエッチするのか?」


 モジモジしながら顔を赤くする姉ちゃんをみていると、すぐにでも押し倒したくなるが、ここは我慢だ。


 なんだかんだ姉ちゃんが喜んでいるのが分かる。ちょっとエッチが楽しみでそわそわしているのが丸わかりだ。


「お腹空いた」

「あ?」


「ご飯作ってよ。姉ちゃんの裸エプロン料理が食べたいッ」

「ジャンルをくっつけるなっ。カレーの仕込みは済んでるから、後は肉を焼いて煮込むだけだぞ」


「わーいっ!」


「はぁ……。我が弟の性癖が度しがたくてツレェ……」



 文句を言いつつもちゃんとやってくるのが姉ちゃんの良いところだ。


 そういうわけで、俺と姉ちゃんの裸エプロンプレイが幕を開ける。


「ついでだから新婚ごっこにしない?」

「調子に乗るなッ!」


 追加の鉄拳が飛んできた。新婚ごっこはまた今度か……?


 いや、俺は諦めんぜ。


「断ったって聞いたら小春こはるが失望……」

「ああっ、もうっ、分かったよっ!」


 ゴリ押ししたらイケた。そんなわけで、俺と姉ちゃんの裸エプロンプレイは新婚ごっこに進化したのである。



 コトコトとカレーを煮込む姉ちゃんの後ろ姿をジッと眺め、俺の意識は至福に包まれた。


「うう、後ろから熱烈な視線を感じる……」

「じ~~~~~~~。姉ちゃんのお尻、可愛いな」

「あとで覚えてろよ……」


 現在の姉ちゃんはフリフリエプロンと紐の水着を着用するのみである。

 あとはニーソにヘアリボン。可愛いを極限まで凝縮した姉ちゃんに勃起不可避だ。


「いまエロい事したら熱々のカレーぶっかけるからな」

「分かってるよぉマイハニー♡」

「き、きもちわりぃ声出すなよ……」


「新婚ごっこなんだから、俺のこともダーリンとか、あ・な・た♡とか呼んでくれないと」


「ぐぬぬ……」


 姉ちゃんはまだノリ切れていないようだ。無理もない。


 ここは慌てず少しずつ歩み寄る作戦に切り替えよう。


 それから俺は少しの間余計なことを言わずに、姉ちゃんの可愛くてプリプリのお尻をじっくりと眺めるに留めておくことにした。


 もしかしたら早くエッチしたいのかな、とも思ったのだが、功を焦って台無しになってはイカンので慎重に行こう。


「可愛いなぁ……。俺、恋人達にフラれたら姉ちゃんと結婚したい」

「バカなこと言ってんじゃねぇよ。冗談でもそんなこと言ってるの他の奴らが聞いたら泣くぞ」

「例えばの話だって」


 悪態をつきながらも、姉ちゃんが喜んでいるのがよくわかった。


 姉ちゃんは嬉しくなると踵を上下させてステップを踏む癖がある。


 俺が結婚なんてワードを出したもんだから嬉しくなっちゃったみたいだ。 

 なんだかんだ言ってこういうことに感情を隠しきれずに喜ぶ花恋かれん姉ちゃんは本当に可愛い。


「おら、できたぞ」


 姉ちゃん特製のスパイシー鶏ももカレーの完成である。骨も丁寧に取り払った鶏肉と皮の脂から染み出す旨味が抜群のスタミナメニューだ。


 俺はこいつが大好物なのである。



「おお、良い匂いだ。いただきまーすっ。ん~~~っ、うんめぇえっ!」


「大袈裟だなぁ、まったく」


 カレーをかっ喰らって称賛を繰り返す俺を、頬杖を突きながら苦笑して眺めている。


(こういう所は可愛い弟なんだよなぁ)


 そんな姉ちゃんの呟きが聞こえてくるようだ。

 姉ちゃんが自分の料理を美味しそうに食っている姿が好きだってことを俺は知っている。


 だがそんなことを意識しなくたってこの料理は美味い。

 カレーひとつとってもこの美味さは他の料理とは格別だ。


 みんなには悪いが、こと料理に関しては他の子、小春こはるですら姉ちゃんには及ばない。


 俺の舌を本当の意味で唸らせる料理は、姉ちゃん以外の人が作る事はいまだ叶っていないのだ。


 いや、逆を言えば、姉ちゃんの料理で幼い頃から舌の肥えていた俺の味覚は、並の料理では本当の意味で満足を得ることができない。


 誤解のないようにいっておくと、小春こはる希良里きらりの料理に不満があるなんてことは微塵もない。


 その大満足を軽く凌駕するのが彼女の料理の凄いところなのだ。


 俺はその気持ちのありのままを、包み隠さず伝えることにする。


「姉ちゃんの料理は、本当に最高だ」


「バカ……ほら、お替わりいるだろ。皿よこせ」

「さすが姉ちゃん。愛してるぜ」

「ふふん」


 機嫌良さそうに鼻を鳴らしている。姉ちゃんも段々乗りが良くなってきたようだ。


 お替わりを頂いて平らげるたびに、姉ちゃんの機嫌が良くなっていくのが分かる。


「ぷはぁ……ああ、美味かったぁ」

「へいへい。お粗末様♪ さてどうするんだ? もうエッチしちゃうのか?」


「そんなムードのないことしないさ。新婚らしく新妻とイチャイチャしたいんだ」


 柔らかい笑顔になってきた姉ちゃんの側により、割り座で座っている彼女に寄り添って頭を乗っける。


「おいおい」

「姉ちゃん膝枕してくれ。小学生の時はよくやってくれただろ」

「いつの話してんだよ。あの頃はアタシよりも小っちゃかっただろ」


「幼い頃の経験は大きくなっても忘れないもんさ。俺、姉ちゃんの膝枕で甘えるのが好きだったんだ」


 すり寄る俺を姉ちゃんは否定しない。

 カレーの皿を片付けるのも忘れ、甘えて抱きつく俺を柔らかい笑顔で受け入れてくれた。


「ったく……しょうがない弟だな。こんなんじゃ新妻の気持ちになれないだろ~。甘えたいだけなら裸エプロンの必要なかったろうに」


「だってみたかったんだよぉ」


 我が儘な子供をあやすように膝で寝転がる俺の髪を撫で始める。

 姉ちゃんの小さな手が、猫か赤ん坊をあやす手つきに変わる。


「ほら、エッチするんだろ? ちゃんとラブラブな旦那様を演じろよ、ダーリン♡」


 おでこにちゅっ♡とキスをされる。襲い掛かりたくなる衝動を抑え、反対向きに寝転がりながら唇を重ねるのだった。


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