全学年の春休みも来週に迫った日曜日。俺は駅前に
1年ほど前からブレイクしているモデル姉妹であり、長身で銀髪クールビューティーな姉、『
姉妹ユニットで本名はもちろん公開されていない。
恐らくは外国人の血が入っていると思われる銀髪碧眼と金髪碧眼の姉妹なのだ。
俺はキラキラアリス以外はあんまり興味がないのでしっかり見た事はない。
二人は
「ホワイトミルクの二人に会えるなんて楽しみだなぁ♪」
「
「うーん、私なんかがファンって言っちゃったら本当のファンの人達に失礼かもしれないけど、動画は全部チェックしてる。それに、お姉さんの
「なるほど。えっと、プロフィールだと183㎝か。女性にしては中々高い方だね。銀髪でクールな印象だけど、なんだろう、写真を見る限りだと表情を無理して作っているような……」
雑誌の切り抜き写真をスマホで眺める限り、彼女はモデルとしての表情をなんとなく無理して作っているような印象を受ける。
「そうなの?」
「あ、そんな気がするだけだよ。俺がこんな失礼なこと考えてたのは内緒な」
「ふふ、勿論わかってるよ」
俺達はキラキラアリスのアシスタントとしてホワイトミルクの二人を駅までクルマで迎えに来ていた。
コインパーキングに駐車して駅のロータリーに向かい、目的の二人が到着するのを待っていた。
「ね、ねえ順平ちゃん、なんだか私達みられてるような」
「んん?」
周りを見渡すと、確かにチラチラとこちらに視線を向けてくる人達がいることに気が付いた。
「
「そ、そんなこと……。順平ちゃんが格好いいからだよぅ」
加えてデッカい男が隣にいるんだからそれはそれは目立つことだろう。
「怖かったら俺の後ろにいろよ。人の多い所苦手だろ?」
「うん、ありがとう。でも段々慣れていかないといけないから。頑張ってみるね」
「いい事だ」
「えへへ、でも隣にいてくれると助かるかな。一人だとまだ不安だから」
そんな話をしながら待つこと数分。
談話しながら待っていた俺達の元へ声を掛けてくる女性がいた。
「こんにちわ~。キラキラアリスの関係者の方っすかぁ?」
「あ、はいそうです」
少し抜けた感じのする軽い口調の女性、というか少女はかなり小さく、下の方から見上げて声を掛けてくる。
「初めまして~っ! ホワイトミルクの
「ははは。それは良かったです。キラキラアリスのアシスタントやってます、樋口と申します。よろしくお願いします」
声を掛けてきたのは身長150㎝くらいの少女だった。
ブロンドの髪の毛に薄いサングラス掛けている。
初対面でもまったく物怖じしないコミュ力の高さはさすが現役モデルで人気動画配信者と言うべきか。
挨拶のためにカチャリとサングラスをあげると美しい瞳がこちらを覗く。
しかし、背丈が小さいのに胸がかなりデカいな。大きく胸元の開いた大胆なオフショルダーのニットを着ているので、胸の谷間が丸見えだ。
少し屈むと乳首が見えてしまいそうだったので慌てて目を逸らした。
悪戯っぽくニヤリと笑ったような気がしたが、できるだけ顔に出さないように平静を保った。
「あっ! もしかして馬のかぶり物したマッチョお兄さんの中の人っ?」
「ああ、はい。実はそうなんです。動画じゃ顔出しはしてないんですけどね」
「うわ~、超イケメンじゃないですかぁ♡
「それは光栄です」
初対面なのに随分と距離が近いな。可愛らしくて胸の大きい女の子は前屈みにのぞき込むように喋り始める。
このあいだ匂い付けをされたばかりだしな。恋人の機嫌を損ねてはいかんぜ。
しかしなんだろう? 彼女、少々無理をしている感がする。
気のせいかもしれないが、もしかして男性が苦手なんじゃないだろうか。
「ところでそっちのお姉さんは?」
「あ、はい。私はアシスタントというか、お手伝いをしています、雛町です。いつも動画見させてもらってますっ」
「ホントですかぁ、ありざーっすっ」
なんだかノリの軽い子だなぁ。喋り方がギャルっぽいというか、うーん。二次元的な表現をするなら、どことなく[メスガキ]という表現が似合っている感じだ。失礼だから口には出さないけど、初対面の人に対して距離感が大分おかしい。
「僕らは正式なスタッフってわけじゃなくて、友達みたいな感じなので」
「あ、それなら良かったですぅ。今日はスタッフさん無しでゆるーくやろうよって話してたんで」
「ははは、そうですね。友達同士みたいな感じで楽しくやりましょう。主な撮影はボクか彼女が担当しますんで」
「りょっ☆ それにしてもお姉さんすっごいプロポーションですねぇ。グラビアアイドルさんだったりします?」
「い、いえ。私はただの一般人ですよっ。人見知りなんでグラビアなんて無理です無理ですッ」
「そっかぁ、勿体ないなぁ。絶対売れると思いますよ~。あ、人見知りさんだったらうちのお姉ちゃんと相性合うかも」
「お姉さん? そういえばホワイトミルクって二人組ですよね。そのお姉さんは?」
「え? んもうっ! またかぁ」
「お姉ちゃ~ん、そんな所に隠れてないで出てきなさい」
見やると街路樹の影に隠れて真顔でこちらをジッと見つめる人影があった。
「すいませーん。姉は極度の人見知りでしてぇ。ほらこっちに来てお姉ちゃんッ」
「ふわぁ、
「ほら、隠れてたら出発も挨拶もできないでしょ。こっちこっち」
女性は銀色のロングヘアで、ストレートの髪が毛先に向かって巻き毛になっていた。
無表情で冷たい印象だが、緊張しているのか動きが硬い。
「あっ……」
背中を押されてもんどりをうち、前のめりに倒れた所を咄嗟に支えた。
「おっと、大丈夫ですか?」
「……ッ」
ビュンッ!!
「え?」
抱きとめた女性は背が高く、さすがは183㎝だけあって顔の位置が高い。
193㎝ある俺の身長に対してかなり近い位置に来ており、息が掛かるほどだった。
銀色の髪はフワフワしてシャンプーの良い匂いがする。
目と目が合うような至近距離にきて、そのあまりにも美しい顔立ちに思わずドキッとさせられる。
だが彼女はビックリしたようで凄い勢いで俺の身体を払いのけて後ずさりした。
「す、すみません、転びそうだったので。ご不快な思いをさせてしまって」
――フルフルッ
彼女は言葉を発する事なく必死に首を振る。人見知りで恥ずかしがり屋というのは本当のようだ。
表情こそ動かないが、なんとなく恥じらっているのが分かった。
「お怪我はありませんか?」
――コクコクッ
「すみません、彼女は姉の
――ペコペコッ
必死になって頭を下げるお姉さん、
なんとなく
「ほらぁ、お姉ちゃん! ちゃんと挨拶しなっ」
パシパシと背中を叩かれ、少し頬を赤らめた
「はじ……めまして。
「樋口順平と申します。こちらこそよろしくお願いします」
「雛町
「あり、がと……です」
「あの、もしかして
「あ、そうなんですよぉ。日本語を覚え始めたのは最近なので喋り方あんまり上手くないんです。でも聞き取りはちゃんとできるんでコミュニケーションは問題ないですよぉ」
「動画のコメントでハーフみたいなこと言われてましたけど」
「あ、そうでーすっ。
「へえ。そうなんですか。立ち入ったことは聞かない方が良さそうですね」
「あ、いえいえっ。積極的に言ってないだけで内緒って訳じゃないです。ママ達とパパは今でも仲良しなんで」
ママ[達]か。なかなかのパワーワードだな。
だがハーレムやってる俺も、将来的には同じ言葉を使う事になるかもしれない。
明るく言っているが、もしかするとあまり聞かれたくないことかもしれないと思い、話を切り上げて撮影場所である町田家に移動することにした。
「立ち話もなんなんで移動しながら話しましょう。クルマを回してきますので少しお待ちください。
「うん、わかった」
クルマの中では終始