二人を連れて町田家に到着した俺達。
キラキラアリスの二人はモデル仲間として友達らしいから、家に入って出迎えた二人は遊びに来た友人を迎え入れるような軽快なノリだった。
「
「今日はよろしくお願いしま~す」
あ、そういえば……。
俺はふと思い出したことがあり、
「そういえばさ、ドッキリを仕掛けるのに俺、顔合わせして大丈夫だったのか?」
「あ、大丈夫。ドッキリ企画は中止で料理対決にするから」
ヒソヒソ声で尋ねると普通のトーンで返ってきた。
「え、そうなのか?」
「そうだね。ごめん、共有するの忘れてた」
「あ~、サーセンッ。姉ちゃんがかなり緊張しちゃってて
なるほど。人見知りで恥ずかしがり屋のお姉さんの為に予定を変更したわけか。
「兄ちゃんには
「
「あはは、
「なので兄ちゃんには[馬アニキ]として
馬アニキっていうのは動画のファンの人達が付けた俺の芸名みたいなものだ。
マッチョの人間をアニキと呼んだりする昔ながらの伝統があるが、馬のかぶり物をしたアニキってことで馬アニキらしい。
「それじゃ、打ち合わせから始めましょうか」
そんな訳で、キラキラアリスとホワイトミルクのコラボ動画、そのリハーサルと打ち合わせが始まった。
「それじゃあ始めましょう。NGとかそういうのなしで緩くやってもらっていいんで。ぐだった所はあとで編集しますから」
「あざーすっ。よろしくオナシャスッ」
――ペコペコ
ノリの軽い
俺は撮影ボタンを押してキューを出す。
「キララと~」
「アリスの~」
「「キラキラアリス☆」」
オープニング挨拶から撮影を始めた料理対決のコラボ動画。
キラキラアリスとホワイトミルクという、動画界隈では二大巨頭と言われる大人気コンビ同士が夢の共演。
ファンの人達からは多分そんな風に言われるのではないだろうか。俺はそんな夢の共演の撮影現場に立ち会っている。
「なんと~、今日はコラボ動画で~すっ」
「早速ゲストをお呼びしましょう。こちらの方々ですっ」
「こんにちは~っ! ホワイトミルクの
「
「ホワイトミルクで」
「ゆっくりシマショ♪」
カメラをオンにすると途端にスイッチが入ったように「演者」の顔になり、無表情なのに動きが豊かで多彩なリアクションをするようになる。
片言の日本語で漫画によく出てくるエセ外国人のような喋り方をし始め、これがまた非常にキャラ性にマッチしていて見とれるほどだった。
先ほどまでのぼんやりした印象は何処にもなく、キリリとして動きもキビキビとしている。
逆に
ちょっと人を小馬鹿にしたような態度で煽り、それをお姉さんが天然キャラで妹の悪い態度を空回りさせるという流れが、漫才を見ているようで面白かった。
計算高い妹の行動が全部お姉さんの天然で打ち砕かれる。この一連の流れがホワイトミルク定番の黄金パターンとなっているようだ。
「イエーイ!」
早速
軽快なトークで場を盛り上げるアリスが同じく明るいキャラの
まず最初はキラキラアリスがホワイトミルクの二人に質問をするコーナーで幕を開けた。
コラボ動画なのでホワミル側の動画撮影もする予定なのだが、向こうはいつも自分達でセルフ撮影するタイプらしいので、これも俺が担当することになった。
それからしばらくの間、キラアリとホワミルによる軽快なトークが続いた。
基本的には盛り上げ役のアリスと
カメラを構える俺も思わず笑いそうになる。これは編集のし甲斐がありそうだ。
「それじゃあ今日の動画はここまで。みんなバイバーイ」
「皆さんお疲れ様でした。少し休憩しましょう」
「ケーキが焼けましたよ~」
「すごーいっ! これ全部
「はい。凄く簡単なもので申し訳ないんですけど」
「いやいや、お店レベルですってこれっ。すごーいっ!」
短時間でこれだけのものを仕上げる
その表情は変わっていないのに喜んでいるのが在り在りと空気感だけで分かる。
表情に動きこそないが、観察すれば結構感情が動いているっていうのは、魅力的に思えた。
しばしの休憩後、次なる撮影の準備に入った。
だがこの後、俺にとてつもないラッキースケベな展開が待っていようとは……。