と思っていたのに……。
それから料理動画の撮影パートになり、私は高い椅子に座りながら得意の料理を披露する。
そこでもあの男が気に食わない挙動をしてくる。
料理が不得意な
クソッ。
料理動画の撮影が始まり、向こうの様子は
この人も綺麗な人だなぁ。それに胸がデカい。メチャメチャデカいっ。お姉ちゃんよりもデカい。
にも関わらず、腰細っそっ。くびれエッグぅう。
顔立ちもフワフワ甘々の美少女系の美人。つまりロリ顔で神クラスの爆乳……語彙力下がるくらい綺麗な人。
気のせいかもしれないけど、迎えに来てた時から二人の距離はかなり近い気がする。
もしかしたら付き合ってるのは二人だけじゃない?
いや、小春さんと付き合ってて、
「完成~~♪ 兄ちゃん上手くいったねっ」
――グッ
馬アニキがサムズアップしながらポージングする。
サムいんだよなぁ。お笑い芸人じゃないんだからさ、もうちょっと考えようよ。
今時馬のかぶり物にタンクトップってさぁ……。筋肉は凄いけど……。
なんてことを考えていたら料理が完成し、試食会の様子を撮影して動画は締めとなった。
撮れ高さえあれば勝利かどうかはどうでもいいけど、やっぱりこの男に負けるのはなんか悔しかった。
それから審査員の
きっと私の料理に軍配を上げさせて見せる。
「勝者は~~~、
「やったーーーっ」
負けた……。 なんか悔しい……。
そしてエンディングを撮影し、この日のスケジュールは全て終了となったのだけど、夜になってトラブルが起きた。
「ねえねえにーちゃん、今日泊まってってよぉ」
「いやいや、女の子だけの所に男が泊まるのは問題でしょ」
そうだそうだ。早く帰れ。居座るなら襲われたって騒いでやる。
「えー、でもなぁ」
「せっかく仲の良い女の子同士でのお泊まり会だろ? 深夜の女子会すれば良いじゃないか」
「ちぇ~。分かったよう」
「お泊まりはまた今度な」
「は~い」
樋口順平は馴れ馴れしくも
やっぱりデキてるんじゃないか?
それでアイツは帰りかけたんだけど、玄関を開いたところで出て行かずにすぐに扉を閉める。
「どうしたの兄ちゃん」
「やっぱり今日はここに泊まる」
「え、嬉しいけど、どうして?」
「誰かがこの家を見張ってるような気がする。変な気配がするんだよ」
「え、やだ怖いッ」
「ちょっと家の周りを一周してくる。裏口から出るから戸締まりを確認してくれ」
ちょっと何よそれ……。
不穏な空気がその場を支配し、樋口はそのまま裏口から出て行った。
それから
「なんか変なことになっちゃったね。大丈夫かな?」
ちょっとだけ不安が募った私は何の気無しに
「兄ちゃんなら大丈夫だよ。絶対なんとかしてくれるから」
「え、あ、うん」
ここまで手放しに信頼できるってよほどじゃないだろうか。
心底気に食わない男だけど、身体はデカいし強いのは確かだろうからそこは頼もしかった。
うちのロシアにいるおじいちゃんのような空気感も感じる。
おじいちゃんは会社役員だけど軍隊格闘の達人で身長2メートルの巨人だ。
私は日本で過ごすことが多かったからあまり会えてなかったけど、あの大きな安心感に似たものを感じる……って、これじゃ私が樋口に心を許してるみたいじゃないっ!!
それから待つこと30分ほど……。
「もしもし兄ちゃん? どうだった? ……えっ、本当にッ!? うん、うん……分かった。気を付けてね」
時間にして5分もしない間に通話は終了したのだが、そこで聞かされた内容は驚愕の一言だった。
「樋口さん、どうしたって?」
「不審者が本当にいたみたい。ここにいる誰かのファンみたいで、兄ちゃんがとっ捕まえて吐かせた。今から警察に引き渡してくるって」
「エッ、えええっ!?」
「ッ……ッ!?」
私は驚きの声を上げた。同時にお姉ちゃんも息を呑んだのが分かる。
それから更に1時間ほどが経った頃、樋口順平は帰ってきた……。頬に斬り傷を付けた状態で。