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第86話 お試しでハーレム加入


「ハーレム、入れて欲しい……。ワタシ、昨日、二人のエッチ、見た。とってもドキドキ、した」


 突然の申し出に固まっている俺に、紗理奈さりなさんは真剣な瞳で訴えてくる。


「えっと、ハーレムに入りたいって、それはどういう」


 彼女はやはり昨日の俺達のエッチを見ていた。そのことでテンパっているのではと思ったが、どうやら違うらしい。


「さ、紗理奈さりなさん、話をすっ飛ばし過ぎてるって」

小春こはる?」


 紗理奈さりなさんの突然の申し出にフォローを入れたのは小春こはるだった。

 何やらしっているらしい小春こはるの態度に、先ほどクルマの中で何事かを相談していた希良里きらり達四人の会話が思い出される。


「なあ、さっきクルマの中で何か相談してたみたいだけど、それと関係ある?」

「えっと、紗理奈さりなさん、昨日の私達のエッチを見てたのは紗理奈さりなさんみたいで、男の人にドキドキしたのは初めてなんだって」



「う、うん」



「それで、恋愛をしたことがないから、男の人と接する練習がしたいってことらしいんだよね」


「な、なるほど」

「それで、擬似的にハーレムに入って男の人になれておきたいってこと」


「そういうことか。びっくりした……」


「ワタシ、男の人苦手です。……だから、慣れたい……」



 背が高い故に、彼女は男から敬遠されてきたという。ロシアでもそれは変わらないらしく、男より大きな身体で辛い目にあってきたから苦手意識が強くなって、これまで避けてきた。


 しかし彼女はそんな自分を脱却したいと考えている。


「そういう訳で、男の人に慣れる練習の一環として、今から三人でデートしない?」


 小春こはるがそういうなら俺としてはやぶさかではない。

 いきなりハーレムに入りたいと言いだした時はどうなるかと思ったが、とりあえずはこれから始まる大学生活で彼氏ができた時の予行演習ということだろうか。


「まあ、友達同士で遊びにいくっていうのは全然OKだよ。でもそういうのハーレムに入るって言わないからね。ビックリしたよ」


「ゴメンです……。ワタシも、恋、してみたい。エッチなこと、興味あります。樋口さん見て、ドキドキ、シマした……」


「ちょ、それはまた話が別で……。確かに俺はハーレムやってるけど、誰でもいいわけじゃないですから。四人が四人とも大好きなんです」

「もちろん、分かってマス。無理やり、イクない……。でも、見返り、必要……」


 色のある瞳で見つめられ、思わずドキッとしてしまう。見返りという言葉にどういう意味が含まれているのか、何となく想像できてしまうが……。そういうのを安易に受け入れる訳にはいかなかった。



紗理奈さりなさん、友達っていうのは見返りありきで作るものじゃないよ。ちゃんと友達にはなるから」


 色々と感性がバグっている紗理奈さりなさんをたしなめつつ、友達、ひいては将来の彼氏ができた時のための練習という名目で三人でのデートが始まった。



「やっぱり、さっきクルマで相談してたことって、コレのこと?」

「うん、実はね……ごめん、先に伝えておくべきだった」


「いやまあ、そういう事情なら大丈夫だよ。ちょっとビックリしたけどね」


 小春こはるは俺が会って間もない女の子とデートとかして平気なのだろうか。


「私の気持ちは、後で話すね。これはみんなで相談して決めたことだから、順平ちゃんは心配しないで」


「……わかった」


 小春こはるの真意は分からない。でも、いつも俺達がやっているように、俺は皆を想い、皆は俺を想ってやってくれている。


 心配するだけ無駄と分かる。他の皆も相談して決めたことなら、俺はしっかりと受け入れるだけだ。


 まあデートするだけだしな。小春こはるも一緒にいてくれるし、あまり重たくなりすぎないようにしよう。


 そうして、引っ越しの準備をキリの良いところまで終わらせた俺達はショッピングがてらお出かけすることにした。



「クルマで10分くらいのところにショッピングモールがあるから、そこでデートしようか」


 三人でお出かけしたのは近くのショッピングモール。大型の商業施設だけあって春休みに近くなった店内はそれなりに人で溢れている。




 俺達はそこで服を選んだり、おやつを食べたり、色々な施設を見て回った。


 小春こはると同じくらいの身長で胸の大きな紗理奈さりなさんのために、おしゃれ着で大きいサイズを取り扱う専門店に赴いてサイズ合わせをしたりと、俺とのデートというより、二人プラス俺という感じだ。



 小春こはる紗理奈さりなさんは長年の友人のように気が合い、笑顔を見せている。


 そして案の定というか、もはや定番となりつつある下着選びにもかり出され、紗理奈さりなさんが俺に対してかなり心を許しているのが見て取れた。



「楽しい。とっても楽しいデス」

紗理奈さりなさんはどんな彼氏が理想なの?」


 小春こはるの質問に、顔を赤らめた紗理奈さりなさんは答える。


「恥ずかしい。でも、ワタシ、樋口さんみたいな人、とっても好みです。理由は、ワタシのパパと、よく似てるから」

紗理奈さりなさんのお父さん……。どんな人?」


 とっても優しくて、温かい。いつも見守ってくれる、神様みたいな人。照れくさそうに彼女はそう言った。


 神様みたい、という表現がかなり独特であるが、それだけ温かいのだろう。


 次の日にマンションを準備できてしまうくらいだから、社会的な地位の高い人なのかもしれない。

 そういえば若菜わかなさんと異母姉妹といっていた。


 仲良しとのことだから、ひょっとして……。


「ワタシのお父さん、ハーレムやってる。お母さん達、二人ともとっても仲良し。今まで喧嘩一度もない。日本とロシアで離れていても、いつも私達に会いに来てくれた」


「マ、マジでっ……!?」


 不思議なお父さんもいたものだ。 色々と謎の多いお人であるが、かなり特殊な家庭環境であることは間違いなさそうだ。


 色々と聞いてみたい気もするが、そのうち機会もあるだろう。


◇◇◇◇◇


 そうしてデートが終わり、俺達は家に戻ってきた。


 三人で手を繋いだりして、ハーレムデートを楽しんだのだが、片方が恋人でない美女であるという事実が奇妙な興奮を呼んだ。



「それで、樋口さん、お願いある」

「なんだい?」


「ワタシにも、エッチ、教えてほしい。今日のお礼。おっぱい触って」

「ちょ、ちょっと待って。さっきも言ったけど友達に見返りとかいいから」


「違う。ワタシ、樋口さん、……好き、です。こういうの、インスピレーション。ビビッときた。昔から、直感当たるます。そういう家系。おばあちゃんも、お母さん……ママ達もそうだって言ってた。夫となる人、魂で感じた人。どうか、受け入れてほしい。時間、掛かってもいい」


「……。正直、戸惑いはあるけど、皆に確かな意志を確かめてからでいいかな? 俺はしっかりと好きな人達でないと受け入れるかどうかを決めることはできない」


「それで、いいです。樋口さんの決めること。どうか……おねがいします」


 みんなの帰りを待ち、今日の出来事を話すことにする。


 ただ、結論を先に言ってしまうと、彼女のハーレム入りはあっさりと許可が出ることになるのだが、もう少し詳しく語るとしよう。




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