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第90話 どうやらすっかり俺の虜らしい


 いやぁ、すげかった……。本当に凄いのひと言だった。


 小春こはるの指示で玄関から何かを始めようとしている紗理奈さりな


 昭和の妻のように玄関で三つ指突いてお出迎えをしてくれた彼女は、小春こはるに指示されてこちらにすり寄り、まず始めたのは『ご挨拶』だった。



 何に、とはあえて言わないでおこう。大変に素晴らしいご挨拶である。


「ご主人サマ、本日は、紗理奈さりな小春こはるのタメにお越しくださり、ありがとうございマス。まずは、お出迎えのご挨拶、するデス」


 そのひと言から始まり、あとは……分かるだろ?


 興奮で先走っている紗理奈を小春こはるがさりげなく宥めるなんて場面もあり、彼女がどれだけ行為を楽しんでいるかが分かる。


 技術的なところ以外の心意気の部分を小春こはるから仕込まれているらしい。


 相変わらず彼女は奉仕者として徹底している。


 希良里きらりも見習わなくちゃと言わしめるほどやることなすこと徹底しており、しかも彼女の場合は「自分のやりたい事=俺が喜ぶ事」に特化しているので俺の気持ちを無視することがほとんど無い。


 じゃあ俺は出迎え一番で女の子にご主人様と呼ばれながら『ご挨拶』されたいと望んでいるのかと言うと、厳密には違う。


 確かにそれはそれで興奮するプレイには違いないが、俺は二人の喜ぶ事をさせてあげたいと願っている。


 だから「二人のやってみたい事=俺が喜ぶ事」という図式になり、結局のところ俺は二人の、いや小春こはるのやりたいようにやってもらっているに過ぎないのだ。


 なんだか禅問答みたいだが、小春こはるの方がある程度俺の性癖に応えてくれているところがあるので、やはりどちらかと言えば小春こはるが凄いということになる。


 何しろ小春こはるの性癖が「俺に求められる事」そのものであることから、ほとんど何でもござれの状態だ。


 繰り返しになるが、俺だって小春こはるの喜ぶことをしてあげたい。求められたことに応えたいという気持ちがある。


 ようするに、二人にとってやりたい事が互いの喜ぶ事になっている。


『もっと、したい、デス』


 ボルテージが上がってくると紗理奈さりなの奉仕は激しくなる。

 初日にそうだったように、彼女の場合は奉仕したいという欲望の方が勝っていてどちらかというと自分の欲望を優先しがちだ。


 だがそれが良いとも言える。

 徹底して俺という男に尽くしたい小春こはるとは対照的に、紗理奈さりなの場合は奉仕という行為そのものに興奮を感じている。


 似ているようで性質は真逆。やっている行為は同じであるのに感じている興奮の性質はまったく違ったものであることに、面白みを感じるというものだ。


 どっちにしても俺という男との行為を楽しんでくれている事に変わりないので、こういったことを細かく分析することにあまり大きな意味はないかもしれない。


 奉仕の時間が終わると、切なげな表情をするところもポイントが高い。


 一瞬さえも名残惜しそうに憂えた表情を見せる紗理奈さりなに愛しさが募った。


「さあ、次は何を見せてくれるんだ?」


 彼女に発した言葉は最近開発されてきた俺の性癖にバッチリ刺さった。


「今日は、希良里きらりちゃんの提案で、私と紗理奈さりなちゃんでエッチします♡」

「おお、マジか……」


 紗理奈さりなの視線はいまだに俺に固定されている。


 うちのハーレムでよくあることなのだが、レズで愛し合ってても視線は俺に固定されていたり、気持ちよくなるためというより興奮を誘う行為であることが多い。


 今回のプレイもその方針に準じていると思われる。


 その証拠に小春こはるの視線は蠱惑的な色を含んでまっすぐこちらに注がれており、紗理奈さりなとのプレイでありながら目的は俺への奉仕なのだろう。


「ご主人様、紗理奈さりなちゃんとキスしてもいいですか?」


 小春こはるが俺に許可を求めてくる。


 リビングへと移動した俺たちは両腕に引っ付いてくる二人に連れられてソファに座る。


 そう、これが彼女達のスタンダードだ。


 レズといってもあくまで俺のため。ハーレムの中心である男を楽しませるためのエンターテイメントだ。


 もちろん、お互いを大切に思っている事に変わりは無い。


 小春こはるにしたって俺の事が好きだったのに姉ちゃんの気持ちを先に受け入れたのは、引っ込み思案で俺への想いを諦めていたからに他ならない。


 有紗ありさ希良里きらりには敵わないと思っていたからこそ、姉ちゃんから提案されたハーレム計画に乗っかることでチャンスにしがみ付いた。


 それは四人の想いが一緒だったからに他ならない。


『誰にも悲しい思いをしてほしくない』


 悲しい思いとは俺に失恋すること。誰か一人にでもその思いをさせたくない。


 そういう想いで始まったハーレムだからこそ、みんなが俺を中心に添えてくれる。


 まあその下準備のために先にレズビアンになった影響で俺自身がやきもきしてしまった側面はあったものの(先に色々経験済みだったり、俺に気付かれないようにそしらぬ顔で付き合っていたり等)、彼女達も色々と考え及んだ結果、肝心の俺自身への影響というものを見誤ったということだろう。


 人間誰しも全てにおいて正解を引き出すことは難しい。


 希良里きらり達にとっては正解だと思っていた行動も、結果的には少しのしこりを残す結果になったに過ぎない。


 これが物語だったら設定の甘さを叩かれたところだろう。


 だって性別が同一だったからダメージが少なかっただけで、やっていることはNTRやBSSと変わらない訳だしな。


 まあ結果オーライだ。


 小春こはるにしたって姉ちゃんが先に本気になってしまったことで、それに応える形で色々なことを経験していった。


 ある意味で、小春こはる希良里きらり達の異常とも言える奉仕精神は、そこら辺の失敗で被った俺の精神的ダメージへの懺悔の意味合いもある気がする。


 二人の言葉の端々には、そういったニュアンスが含まれていることが多いからだ。


「順平ちゃん、いっぱい楽しんでね」


 その証拠に、今もこうして俺に向けてくる視線には伺うような空気感が漂っている。


「ああ、頼むよ」


 だから俺は興奮した声を隠すことなく、俺は二人の百合行為を快諾したのである。


 その光景は素晴らしいのひと言だった。


 彼女達はこういう。


「ご主人様、命令してください♡ 私と紗理奈ちゃんのエッチの許可を」

「紗理奈、本来はレズ違う。だからご主人様の命令なしで、勝手に他の人とエッチしない、デス」


 蠱惑的な、あるいは媚びるような視線を向けて命令を心待ちにする二人。


 だから俺はその願いに応えて命令を下したのだ。


 今回の目的は紗理奈さりなの調教であるから、彼女のエッチな魅力をできるだけ引き出すように振る舞っているのだろう。


 これは凄い。もの凄くエッチだ。


 レズビアンの魅力をこれでもかと目の前で見せつけてくれる二人のエンターテイメントは、魅せるところはしっかり魅せて、それでも紗理奈さりなは本気で感じている。


 何故か、それが分かる。紗理奈さりなは限りなく小春こはるの愛撫に酔いしれ、夢中になってとろけそうになるたびに耳打ちされた小春こはるに意識を引き戻されていた。


 まるで紗理奈さりなの感じていること、考えていること、心が発していることがダイレクトに波動となって伝わってくるようだ。


 そして小春こはるの手練手管のなんと巧みなことか。


 これは、ひょっとすると姉ちゃんが小春こはるに夢中で受けに徹していた理由の一端を垣間見たかもしれない。


 小春こはるは単純にテクニックが半端なく巧みだ。


 どうやったら興奮する見栄えになるかを意識している。


 こうして二人の百合劇場によって高まった興奮が呼び水となり、この後超絶ハッスルすることになる。


 興奮した紗理奈さりなが思わず最後までやっちゃおうと跨がる一幕もあり、ハッとなってギリギリで耐えていた。


 俺としては受け入れても良かったが、若菜わかなさんと一緒にという紗理奈さりなの願いもあって取りやめることになった。


 そしてその若菜わかなさんだが、俺が紗理奈さりなとの時間を過ごしている頃、ハーレム引き入れ作戦と称して希良里きらり達が動いていることを、後から知らされることになるのだった。




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