ステイトたちには、「会社の上役たちに何人ジャップを殺したか報告する」なんてうそぶいていたけれど、実際のところ、サムは正義感に捕らわれていた。
人口減少と極端な高齢化がかつてNIPPONを襲ったときに、まさに国家が破綻したのだった。高齢者に対する社会保障費のために、若者たちが搾取された。最悪の構造だ。
サムは思う。もっとNIPPONは合理的であるべきだった、と。
高齢者への生活保障なんてしなくて構わないとサムは考えた。本来、生活保護やベーシックインカムがなければ、犯罪率が上がる。だが、それは若者や現役世代に限った話で。犯罪を起こすことも出来ないような、高齢者に生活を保障しなかったところで、何も起きやしない。ただ、高齢者が飢えていくだけ。それで、なんの問題もないではないか。せいぜい彼ら彼女らがしでかすとしたら、万引きくらいだろう。
かつて、そのようなことを主張したNIPPON人もいたらしいが、SNSでボロクソに叩かれまくったらしい。NIPPON人は、綺麗事を愛しすぎた。もっと、合理的(リーズナブル)じゃないと。
秩父の集落の古民家で、ほとんど体も動かせないような老人たちの眉間に、サムは銃弾を撃ち込んでいった。
老人たちは、サムのことをキッという目で睨んでいるけれど、はたして彼女ら彼らに自分のことがちゃんと見えているのかはサムにも謎だった。
老人たち彼女ら彼らは、まるでサムのことを死神かのように見るけれど。
サムは独り言ちた。
「違うぜ。俺は天国への案内人なんだ」
こびりついた汚れを取るかのように、一人一人を撃ち殺していくたびにサムの心ら軽くなった。俺は正しいことをしているという過剰な自信に満ち溢れていた。
【つづく】