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039 弟子と開発。平穏な日々

 俺はハティとロッテとのんびり研究を続ける日々を過ごす。

 急ぎの仕事がないというのはとても素晴らしいことだ。


 俺は天気が良いと、研究所の外で昼ご飯をハティと一緒に食べることにしていた。

 ロッテは基本的に午後から来る。

 だが、ロッテが昼飯時に居るときはロッテも一緒だ。たまに姉もやってくる。


 今日のお昼ご飯は、ハティと二人きりである。


「いやぁ、のんびりするのも良いものだな」

「はぐはぐはぐ! 主さまは働いていると思うのじゃ!」

「いや、そうでもないぞ」


 ものすごく平穏だ。のんびりしている。


 ロッテが来たら、お湯を作る魔道具作りをやって貰う。

 そして、俺はのんびりとパン焼き魔道具を開発する。


 パンの製造法の本を読んだり、魔道具の構造を考えたり魔道具の素材を厳選したりする。

 そのどの作業も楽しい。


「主さまは、弟子は放置するっていってた割に、丁寧に教えているのじゃ」

「そういえばそうだな」


 もしかしたら、俺は教えるのは嫌いではないのかも知れない。


「忙しくなったら、放置になるだろうさ」

「そうなのかや〜。でも、主さまはロッテに教えたり魔道具を作ったり、忙しくしているのじゃ」

「そうでもないよ。朝もゆっくり起きているし」

「そうなのかや〜」

「学院の頃に比べたら、格段に良い生活だよ。朝ご飯も美味しいし」

「パンが美味いのじゃ!」


 朝も夜明けとともに起きるほど、早くはない。

 ゆっくり朝に起きて、ハティと、そしてタイミングがあえば姉と一緒に朝ご飯を食べる。

 朝ご飯は、賢者の学院にいたころ食べていた乾燥パンではない。

 おいしいパンと卵やベーコンにお茶も飲める。


「お昼も太陽の下で、おいしいパンとお茶にスープ。そしてなによりのんびり食べられるしな」


 天気のいい日は、今みたいに庭でのんびり食べられる。

 冬とはいえ、気持ちがいいものだ。

 賢者の学院にいたころには考えられない


「そうなのかやー。ハティもおいしいご飯を食べられるから嬉しいのじゃ」

「そうか」


 ふと、俺を追い出した魔道具学部長と学院長を思い出す。

 彼らはきっと、今でも学院で政治闘争でもしているのだろう。

 俺から奪った開発途中の魔道具を開発に苦労しているのかもしれない。

 俺の理論はケイ先生直伝なので、中々解読は難しかろう。

 苦労すればいいのだ。


 少なくとも、俺ほどのんびり平和に、好きなことをしていられるわけではないだろう。


「まあ、あいつらは学院で苦労していればいいさ」


 俺には関係のないことだ。





 そんな平穏な日々を過ごし始めて、一週間がたった日の夜。

 パン焼き魔道具が完成間近になったので、俺は寝ずに開発を進めていた。


「主さま。寝ないのかや」

「もう少しで完成するからな、止まらん」

「そっかー」


 日付が変わり、俺はパン焼き魔道具を完成させる。

 ハティは俺のひざのうえで、気持ちよさそうに眠っていた。


 ちなみにロッテは、数時間前まで研究室で俺の手伝いをしていた。

 だが、ロッテはまだ子供なので、夜更かしはさせられない。

 辺境伯家の屋敷の方で休ませている。


「よし、とりあえずパンを焼いてみるか」


 俺は出来たばかりのパン焼き魔道具を起動して材料を突っ込んだ。

 後は放置すればいい。

 無事、完成していたら、数時間後、朝においしいパンが出来ているはずだ。


「果たしておいしいパンを食べられるかどうか」


 魔道具の完成度次第で、朝食の質が変わる。

 もし魔道具が上手くいっていたなら、次は最適な小麦粉探しもしてみたい。


「さて寝るか」

 俺は寝ているハティを抱っこしてベッドへ連れていく。


 そして、ハティの隣に横たわろうとして、

「む?」

 何者かが結界に侵入しようとしていることに気がついた。

 玄関をこじ開けようとしているようだ。

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