風に揺れる草原を抜け、五人が辿り着いたのは、
小さな
石造りの家々斗中央の噴水、そして町を囲む木の柵が異世界での初めての“文明”だった。
「人がちゃんといるんだね。」
美奈が安堵の表情を浮かべ、圭が冗談めかして言う。
「そりゃあゲームじゃないし、全部が全部NPCってことではないだろ。」
「でも言葉が通じているのは不思議よね。きっと魔法の影響でしょう。」
彩音は落ち着いた表情で周囲を観察し、優斗は書店を見つけて早速駆け出そうとしたが、蓮n首根っこを掴まれて止められる。
「まずは飯だ。そっから情報収集を始めるぞ。」
「そうだね。よし、行こう。」
宿屋(月の雫亭)に泊まった夜、蓮たちは街の掲示板で気になる依頼を見つけた。
【緊急依頼】
■依頼名:精霊の森、異変調査
■報酬:銀貨30枚+精霊の加護(条件付き)
■内容:町の北にある《迷いの森》で、精霊たちが次々と姿を消している。森の
「加護って、スキルとか強化系かな?」
圭が興味津々で覗き込むと優斗が小さく頷く。
「精霊と契約や祝福は、この世界ではかなり強力な力になるらしい。」
「よし、最初の冒険にはちょうどいいな。行こうぜ蓮。」
「ああ、準備して明日の朝に出発だ。」
翌朝、五人は森へ向かった。
《迷いの森》と呼ばれるその場所は、まるで生きているかのように道が変わり、同じ景色が延々と続く。
「やばい、地図では道がわからない。」
「冷静に足跡を追うのよ。後ろに印をつけていれば迷っても戻れるわ。」
彩音の提案で優斗が魔法で光の目印を設置しながら進むことに。やがて、森の奥深くに淡く光る湖とそれを見つめる少女の姿があった。
[
ーー精霊の守護者、《エアリア》。
長い銀髪、そして透き通るような瞳。
まるで風のように儚い存在。
「あなたたち・・・人の子? なぜここへ?」
「俺たちは依頼を受けて来た。森の精霊が消えてるって聞いて。」
蓮が前に出て説明するとエアリアは少し悲しげな笑みを浮かべた。
「森の精霊たちは、呼ばれて消えるのです。かの者ーー黒の風使いが禁呪で精霊を捕らえている。」
「黒の風使い??」
その名を口にした途端風が凍りつくように冷たくなった。
木々が揺れ、黒い羽を持つ男たちが現れた。
「やれやれ、とうとう見つかってしまったか。せっかく精霊たちの力を集めていたのに。」
ーー黒の風使い『ザヴァン』
背に四枚の黒い翼を持ち風の精霊たちを黒い球体に封じこめていた。
「貴様が精霊たちを・・・!」
「そうはさせねぇ!」
蓮が剣を構え、優斗が独唱を始める。
美奈が皆に守護の光を与え、彩音が作戦を指示する。
「優斗、ザヴァンの動きを制限して!圭は風同士で撹乱を!」
「OK!任された」
圭が空を裂くように双剣を振るい、ザヴァンの攻撃を逸らす。美奈の光が精霊たちの封印を徐々に弱めていき、優斗が放った『拘束の鎖』でザヴァンの動きを止めた。
「今だ蓮!」
「うおおおおおっ!!」
蓮の剣が真っ直ぐに貫き、ザヴァンの黒い球体を断ち割った。解放された精霊たちが、風の歌と共に舞い上がる。
「ば、ばかな……この俺が……!」
ザヴァンは風とともに消え去り、静寂が戻る。
「ありがとう。あなたたちのおかげで、森は救われました。」
エアリアは五人の手を取り、祈るように呟く。
「精霊たちはあなたに加護を与えると申しています。」
その瞬間、五人の身体が淡く輝き、それぞれの力が増幅される感覚が走った。
「これが、加護……!」
「えへへ……ちょっと、強くなれたかも……」
ミナが微笑み、レンは剣を握り直す。
精霊たちが空へと還る中、エアリアが最後に語る。
「五つの星よ──真に試練が始まるのは、これからです。どうか、自らの光を見失わぬように」
その夜。宿に戻った五人は、焚き火を囲んでいた。
「初めての依頼、成功だな」
「うん。思ったより……ちゃんと、できたよね」
「だが、敵も強くなっていくだろう。戦術も考えないと」
「いっそ、チーム名とかつける? “ラディア五星団”とか?」
「却下。ダサい」
笑い合う五人の顔に、わずかな覚悟の色が宿る。 彼らの冒険は、まだ始まったばかりだった。
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あとがき
どうもSEVENRIGHTです。
この小説では今回から次章予告を入れます。
次話予告
王都での正式な任命と、謎めいた仮面の男との邂逅。彼の目的は、五つ星のうちの“ひとつ”を壊すこと──?