ティアニスの森での依頼を終えてから3日後。
五人は精霊たちの推薦状を携え、ラディアの最大都市
ーー王都ミレスタへと向かっていた。
馬車で丸一日。見渡す限りの平原を抜けると、銀白の石造りで築かれた巨大な城壁と高く聳える王城が現れる。
「おお、すっげえ。これゲームだったら間違いなく中盤の拠点だな。」
圭が口笛を吹き、美奈が小声で同意する。
「人も多いし、建物も立派。本当に異世界に来ちゃったんだね。」
「ここが王都か。いろんな情報が手に入りそうだ。」
優斗は地図を確認しながらそう呟き、彩音は街の衛兵に礼儀正しく話しかけ、王城への道を確保した。
「《精霊の加護を持つ五つ星》という肩書きは、どうやら本物の証明になっているようね。」
「精霊たちが相当な信頼を持ってるってことか。悪くないな。」
蓮は背負った剣を軽く調整しながら
王都を見上げた。
王城に通され彼らを出迎えたのはまだ若いながら堂々として雰囲気を持つ王太子。リデル・アルスタインだった。
肩まで伸びる金髪に、礼儀正しく丁寧な物腰。
だが、彼の目は真っ直ぐで曇りがない。
「五つ星の勇者たちよ。ようこそ王都ミレスタへ。」
リデルは跪く五人に、一人一人金の指輪を授けた。
「それは王国騎士団からの認可印。以後、君たちは《特任冒険士》としてこの国の保護下にあり、同時に
王国に協力する者となる。」
「重い肩書きですね。」
彩音が小さく息を吐いた。
「だが、それだけ信頼されているということだ。これは自信になって大きな前進だな。」
蓮が冷静に答えると、優斗も小さく頷いた。
「王都で活躍するなら拠点も持ちたいところだな。図書館や研究所も見たい。
「お、王都で本屋巡りとかできるの?最高かよ」
圭の冗談にみんなが笑った。その時だった。
ーー王城の窓が突然黒い風で割れた。
「伏せて。」
蓮が叫ぶより早く謎の人物が舞い降りた。
黒いロープに白い仮面。表情は一切読めない。
「仮面の・・・侵入者?」
彩音が警戒を強めた瞬間、仮面の男は静かに言葉を放った。
「五つ星よ。貴様らの力を見定めにきた。」
そして彼は、何の前触れもなく攻撃を仕掛けてきた。
「来るぞ‼︎」
蓮が剣を抜き優斗が即座に魔法陣壁を展開。
美奈が回復の準備をし、彩音が全体の位置を即座に把握する。
「攻撃のリズムが異常だ。人間じゃないのか?」
「いやこれはーー熟練戦士の動きだ。見たことある。」
圭が相手の刃を紙一重で避けながら叫ぶ。
仮面の男は、風と闇を自在に操り五人を追い詰める。
だが、彼らも負けてはいなかった。これまでの連携と成長が、確かな形になって現れていた。
「一瞬でもいい、動きを止めて。」
彩音の指示で圭が風の分身で撹乱。優斗が影縫いの魔法を発動、仮面の男の足元を拘束した。
「今だ‼︎蓮」
「いっけええ」
渾身の斬撃が仮面の男のロープを裂いた。
「よし」
男はそれだけを言い残し、風に溶けて消えた。
「一体あいつはなんだったんだ。」
美奈が呟くように問う。
「敵じゃないかもしれない。でも一つ確実に言えることはあの男は俺たちを試してたということ。」
蓮の発言に優斗が捕足する。
「あの仮面、古代の‘結社’の使者の者と似ていた。どこかの記録で見たことがある。」
「古代の結社?」
王太子リデルが眉をひそめる。
「それは歴史の闇だ。五つ星よ、君たちの旅には、今後王家の秘密も触れることになるだろう。だが私は君たちを信じている。君たち五つ星は選ばれし光なのだと。」
その夜、五人は王都の宿に戻っていた。
疲れた表情の中、彩音がポツリと呟く。
「これはあくまで私の予想だけど、私たちを測る者が現れたということは、次は奪う者が来るのかもしれない。」
そして優斗は古代文字の写しを見つめていた。
「ラディアの伝承には仮面の結社が何度も登場する。その目的は、世界の選択を変えること。そして、“五つ星の喪失”」
その言葉に部屋が静まり返った。空気が凍った。
「誰かが消えてしまうってこと?」
「まだこの話は仮定だ。でも気を引き締めていこう。」
こうして五人はまた一歩ずつ‘真実’に進んでいく。
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次話予告
王都の地下に眠る封印の遺跡。その扉を開く鍵は、ユウトが見つけた古代文字にあった。しかしその先で待つのは、星を否定する者──“裏切りの星”だった。