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室町時代から存在する、上流貴族の家系。
鬼祓いの技術に優れ、栄神の家系とは違い表舞台から
精鋭揃いの近衛の祓い屋一族である。
◇◆◇◆
そのお爺さんから、いきなり
私は、この名前を知っていた。先代から、何度か話を聞かされていたからだ。あとサクヤからも。
昔に命を救ったこと。京都を代表する祓い屋であること。関わると碌なことが無いこと。
「あなたが天鳳さんなんですね、爺さんから話は聞いてますよ。あとサクヤも」
「はははっ!! そうか、それは光栄だ。会えて嬉しいぞ静夜殿。ん? サク? それはもしや……」
「まあいいや、で……目的はなんですか? 内容次第では……」
内容次第では帰ると言いたかったが「感謝状の授与式やろ?」と被せてきた。
「…………」
「それは本当にあるんですか?」てっきりフェイクかと……
「それはそうやろ。セッティングするの骨が折れたわ」え? あなたがセッティングしたの?
もう嫌な予感しかしない。今すぐにでも帰りたい気分だが、そうも行かないようである。
相手方の気分を損ねて、今更スーツ代とか請求されると、暮らしていけなくなるしな。
「…………」
「じゃあ、それ終わったら帰っていいんですよね?」淡い期待を持って聞いてみる。
「ノォーゥ!」
「なんで英語やねんっ!!」
盛大にツッコミを入れて私は頭を抱える。大きなため息をついた。
「静夜殿、ため息なんてつくな。幸せが逃げるぞ」あなたが言いますか……
「てか……ネタが古いわっ!!」
想定をはるかに超える状況に、ドン引きモード再発動である。
「で、役所のあとはどうすると言うんですか?」
「それは行けばわかる」
「…………」
私は、助手席に座っている濱元さんへ視線を向ける。
彼女も祓い屋で、対策室の人間なのだろう。震えていたのも納得できる。
私の霊相に体が反応して震えてしまうのは、高位の祓い屋である証拠だ。
シートの間から覗き込み尋ねる。ビクッと濱元さんがこちらを振り向く。
「もちろん濱元さんも、これからの事知ってるんですよね?」じぃー……
濱元さんは気まずそうに、視線を窓側に逸らして空咳をひとつ。
「…………」
それから十数分走ると、市役所に到着した。