警察(対策室)に京都へ拉致され、私は流されるがままに統括鬼霊対策室の室長に任命された。
まだ、今でも実感は湧いてない。そりゃそうや、あんな素っ頓狂な展開、素直に受け入れられる訳がないやろ。
まぁ、協力します言うてしもうたしな。言うからにはやらなあかんよな。そう偽善者ぶりながら、無理やり自分を納得させる。
それから二週間後、私は新居となる三階建ての一軒家の前へ到着する。
対策室の宮本さんが、件のセンチュリーで送迎してくれた。やっぱり落ち着かない。
新たな住居は、新築なのだろうか、かなり綺麗な建物だった。
私は、今回引っ越しという訳ではなく、実家はそのままの状態で残してきた。たまに帰りたいし。
必要最低限の生活用具と、着替えだけを持って新たな生活拠点のチャイムを押す。
すぐに玄関の扉が開き、燐さんが姿を現す。
「静夜様、お待ちしていましたっ!!」
「こんにちわ」
「入ってください」と中へ案内される。
中へ入り玄関を抜けると、左手に大きなリビングとダイニングキッチンが現れる。
リビングには、大型のテレビと六人掛けのソファセットが置かれ、その隣に観葉植物が置かれていた。
ダイニングには、同じく六人掛けのテーブルセットが設置されていた。
改めて周りを見渡すと、カーテンや食器棚などの家具やキッチンの家電製品が揃っている。
「あの……これどうしたんですか?」これこんな豪勢な家具経費で落ちるの?
「私の私財で揃えましたっ!!」あぁ……やっぱりブルジョワか……
「なるほど……そういえば、蓮葉さんは?」
私達のそれぞれの部屋は、上階にあるのだろうか?
しかし、蓮葉さんが降りてこないとこを見ると、やはりまだ到着していないのだろう。
「荷物は既に届いています。ご本人は夜に到着されるみたいです」なるほど
持ってきた荷物を置く為、自室となる部屋へ案内される。二階には自室を含め、四部屋ある様だった。
三階にも部屋があるのだろうが、今は自室の事が気になる。
「おぉ……」
部屋に入り中を見渡す。十二帖ほどの洋室にクローゼットとベットとテーブルがあった。
そして、デスクにはデスクトップタイプのPCと大型のデュアルモニターが設置されていた。
簡易的なキッチンと、小型の冷蔵庫に電子レンジ、トイレも設置されているようだ。
お風呂のみ共用となるらしい。
「あの、これも私財?」
「はい、PCは初期設定済みです」ブルジョワめ……
とりあえず荷物をベットの上に置いて、リビングまで戻る。
ソファに腰掛け、今後の予定について確認する。
「発足式の日程は決まりました?」
「はい、一週間後に対策室と同フロアにある大ホールで行われます」そんなのあるんや……
「あの、私まだ就業の手続きとか、一切してないけど大丈夫なん?」
「もちろん大丈夫です。これからの一週間で、そういった必要な諸手続や、統括鬼霊対策室の準備、そして、対策室の詳細についての講習を行います」なるほどなるほど
燐さんから一通りの説明を受けた後、一人で近隣にあるショッピングセンターへ向かう。
足りない必要なものを一通り揃えて、帰宅する。
部屋へ戻り、持ってきた荷物と、先程買ってきた荷物を開梱する。
荷物の整理が落ち着いた頃、部屋の扉がノックされる。
「はい」
部屋の扉を開くと、燐が立っていた。
「静夜様。本日の夕食ですが、外食にしようと思うのですが、いかがでしょうか?」
窓から外を見ると、日が沈みかけていた。
「そうですね。そうしましょうか。蓮葉さんは?」
「先程、京都駅に到着されたそうで、もう間もなく到着されると思います」
「わかりました。すぐ降ります」
準備をしてリビングへ降りると、丁度蓮葉さんが到着した様だった。
「静夜様、遅れて申し訳ございません。鬼戸蓮葉、只今到着致しました。これからよろしくお願い致します」
可愛い紫のワンピースを着た蓮葉さんが、畏まり到着の報告をする。
「いえいえ、私も到着したの昼過ぎなので、こちらこそよろしくお願いします」
三人揃ったので、夕食に出かける。
お店は燐さんが決めていたようで、数分程歩くと目的の店へ到着する。
どうやら、カジュアルな京懐石のお店のようだ。
清潔感のある落ち着いた雰囲気が、店の外観からでも感じる事ができる。
店内へ入り、店員さんに座敷席へ案内される。おすすめのコース料理を人数分注文し、舌鼓を打つ。
旬の素材と出汁を生かした料理が、日本酒ととても相性がよかった。
食事を終え、満足感に包まれながらお会計を行い、店主に礼を伝えてお店を出る。
「いいお店でしたね。燐さんありがとうございます」と燐に礼を伝える。
「とんでもないです。私も最初は天鳳室長に連れられてきたんですよ」
蓮葉さんも満足したようで、お酒のせいか頬を軽く染めながら微笑んでいた。
部屋へ戻り、ベットへ腰掛けて一息ついていると部屋がノックされる。
扉を開くと蓮葉さんが立っていた。
「静夜様、お風呂の準備ができております。どうぞお入りください」
考えてみたら浴室は共用となっているので順番に入る事になると今更気づく。
「ああ、私は最後でいいですよ」
女性陣二人に先に入ってもらう。気になる事もあるし。
「よろしいのですか?」
「はい、お先にどうぞ」
私は、リビングへ降りてソファへ掛ける。
テレビの電源を入れ、ニュースを確認する。
ニュース番組は、昨日東京の秋葉原で発生した通り魔の事件の情報を報道していた。