それからあたしたちは、ロアを含めたみんなで食堂へと向かう。
食堂に入ると、冷め切った目玉焼きウインナーが並んでいる。
食事中に部屋に行ったので、当然のことだ。
「クロワッサンは温め直したのですが……急いでほかの料理も」
「その必要はないわ。ありがとう」
「うん。冷めてもうまい。くろわっさんあたためてくれて、ありがと」
「もったいないお言葉」
侍女はあたしたちが戻ってくるのを見計らって、クロワッサンだけは温め直してくれていた。
一人しかいないというのに、とてもありがたいことだ。
「いそがしいところ、すまないのだけど……ロアのごはんをもってきてほしい」
「えっと、あ、はい。ルリアお嬢様、その子は一体なにをたべるのですか?」
「なんでもたべるから、ルリアたちのごはんとおなじでいいかも」
「そうなのですね。すぐに準備いたします」
去りかけた侍女の背中にあたしは慌てて告げる。
「あ、たまごとかすきっぽい?」「りゃっりゃ」
「かしこまりました……あの、ルリアお嬢様」
振り返った侍女はロアをじっと見つめていた。
「どした?」
「その子は、まさかりゅ……」
「え、えっと……」
竜であることを教えていいのだろうか。あたしは困って母を見る。
「この子はロアという名の竜なの」
母はあたしの代わりにロアのことを侍女に紹介してくれた。
「りゅ、竜でございますか?」
「そう。でも内緒よ?」
「か、畏まりました」
侍女はそういうと、頭を下げてキッチンへと走って行った。
そしてあたしはいつものように母の正面にサラと一緒に座る。
コルコとキャロは、最初から用意されていたご飯を食べ始める。
「わふぅ?」
ダーウは「なんで僕のご飯がないの?」と悲しそうな目をして見上げてくる。
だが、先ほど、ダーウはすごい勢いで朝ご飯を全部食べ終えたのだ。
「ダーウは、さっきぜんぶたべたでしょ?」
「ぴぃ〜、ぴぃ……ぁぅ」
ダーウは「食べてないし、お腹が空いて死にそう」だとアピールし始めた。
「えぇ……ふとるよ?」
「わふう?」
「しかたないのだなぁ」
あたしは自分の分のウインナーをダーウにあげる。
「わふわふ」
ダーウが美味しそうに食べるので、あたしも嬉しくなる。
あたしはクロワッサンを食べる。
「やっぱりうまい、な?」
「おいしい!」
「ロアもたべるといい」
「りゃあ〜」
ロアにもクロワッサンを分ける。
ロアがバクバク食べるので、嬉しくなってウインナーも食べさせる。
サラはテーブルの上に置いた木の棒の人形に、食べさせる真似をしながら食べている。
「ロアは、赤ちゃんだから、たくさんたべたほうがいい」
先ほども食べていたのに、まだ入るらしい。
そこに侍女がロアの分のご飯を持ってきてくれた。
「ロアのごはんきたよー。どんどんたべてな」
「りゃあ〜」
あたしがロアにご飯をあげていると、侍女がロアをじっと見つめた。
「む? なでる?」
「え、いいのですか?」
「いいよ。な、ロア」
「りゃあ〜〜」
「ありがとうございます!」
食事中のロアを侍女は撫ぜて「かわいい」と呟いてニヤニヤしていた。
あたしはロアにご飯をあげながら、たまにダーウにも食べさせて、自分も食べる。
時間は掛かったが、あたしもお腹いっぱいになるまでご飯を食べることができた。
後片付けした後、あたしたちは昨日と同じく書斎兼談話室へと向かった。
「とうさまにロアのことをお願いする手紙をかかないとだからなー」
「みとめてくれるかなー?」
「そこはルリアのうでのみせどころだ」
あたしには、自信があった。きっと父は認めてくれるに違いない。