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132 覚醒したサラ

 あたしは生まれたときから精霊を見られたし、話せた。

 だが、サラはそうではない。

「ほえー? クロ、サラちゃんみたいに見られるようになることってよくあるの?」

『あるわけないのだ。多分……』

「たぶん?」「たぶん?」

 あたしとサラの声が被る。

『もともと素質はあったのだと思うのだ』

 サラは最初から精霊をぼんやりと見ることができていた。

『魔力が増えて扱いが上手くなって、ミアとの相互関係があれして、多分?』

「たぶん?」

『クロにもよくわかんないのだ! スイはわかるのだ?』

「うーん、ミアも影響しているとは思うのである! 多分!」

 クロもスイもよくわからないらしい。

 ならば、はっきりとした原因は誰にもわからないだろう。

「たぶん……ミアが守護獣になって、守護獣は精霊と、にたそんざいだから……」

 考えながら話すと、サラもクロもスイも、そしてダーウ達もあたしを見つめている。

「ミアとつながっているサラちゃんも……精霊をみれるようになった?」

「ありえるのである。親和性があがったのやもしれぬのであるなー?」

 色々な原因が考えられるが、詳しく調べることはできない。

「サラちゃん。ばれないようにな? めずらしいってことは、あぶないってことだからな?」

「そうなの?」

『そうなのだ。万が一、教会にばれたら、捕まって色々調べられるかもしれないのだ!』

「こわい」

『だから、他の人がいるところでは、精霊に話しかけたり目で追ったらダメなのだ!』

「ルリアも気をつけてる」

「わかった! サラも気をつける!」

 あたしは、真剣な表情のサラの頭を撫でた。

「サラちゃん、精霊とはなせるようになって、よかったな?」

「うん」

『あそぼあそぼ〜』『わーいわい』

 サラと話せるとわかったので、幼い精霊たちがサラの周りに集まった。

「わっ。小さい子たちともはなせる!」

『あそぼ〜』

『お前たち。言うまでも無いことなのだが——』

 クロが精霊達に改めて人のいるところでは話しかけてはいけないと説明していた。

 それを聞きながら、あたしはサラに抱っこされているミアを見る。

「話のとちゅうだったけど、ミアはどうして、姿がかわったの?」

 そう尋ねると、ミアは無言で手足をパタパタさせた。

「多分だな? サラを守れるようにであろう?」

 スイがそういうと、ミアはうんうんと頷いた。

「やっぱりそうであったのであるな!」

「たしかに、昨日までの姿は可愛かったけど、弱そうだったものな?」

「…………」

 ミアは一生懸命こくこく頷いている。

 昨日までのミアの手足は細く折れそうだったし、全体的なバランスも悪かった。

 そこも可愛いのだが、いざ戦うとなると、弱点になるのは間違いない。

「そっか。ルリアのダーウとキャロ、コルコみたいになりたかったのだな?」

 こくこくと頷くミアを、サラはぎゅっと抱きしめる。

「ミア。ありがと」

 ミアは嬉しそうに手足をバタバタさせた。


 朝食の時、姉がサラに「あら? 人形が変わったの?」と尋ねた。

「え、っと……」

「スイの力なのであるからして? かっこよいであろ?」

 困ったサラにスイが助け船を出すと、皆納得した。

「あら、すごいのですね。さすがは水竜公です」

 姉に褒められたスイは調子に乗って、

「ミアは動けるであるぞ? ほれほれ」

 といって動かして見せた。

「おお……す、すごい」

 皆、目を見開いて、驚いていたが、それ以上何も言われなかった。

 偉大なる古代の水竜公ならばそのぐらいするだろうと皆思ったからだ。

「便利だなぁ」

 あたしは思わず呟いた。

 何かあっても、スイが頑張ったと言えば、大抵のことは何とかなる気がしてきた。

 コンラートが来た時も、スイは堂々とロアを紹介していた。

 偉大なる竜である水竜公が竜を抱っこしてても何もおかしくないのだ。

 だから、コンラートも、ロアについて何も言わなかった。

 あたしが治癒魔法を使ったり、呪いを解いても、スイがやったといえばいいかもしれない。

「……あとで相談しないと」

「ルリア。また悪いこと企んでる?」

 あたしの呟きが母に聞こえていたらしかった。

「ルリアは、わるいことたくらんだことないよ?」

「そう? それならいいのだけど」

 母の目を誤魔化すのは大変そうだ。

 少し、大人しくしているべきかもしれなかった。

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