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133 コンラートの訓練

 朝ご飯を食べた後、あたしは精霊力、サラたちは魔法力の訓練をした。

 体の中で精霊力や魔力をぐるぐる回す、いつもの訓練だ。

 それが終わると、書斎でお勉強をする。

「サラちゃん、これはカブトムシとよむ」

「……かぶとむし」「りゃあ〜」

「あまりおいしくない」

「そっかー」「りゃむ」

 一緒に図鑑を読みながら、字を教えるのだ。

 ダーウたちはあたしの足元で、横になっている。

 さすがにダーウやキャロ、コルコも勉強中は大人しくしてくれていた。

「あらあら、お嬢様方、お勉強熱心ですね」

 お菓子を持ってきてくれた侍女が褒めてくれる。

「うむ。こんど、家庭教師がきてくれるらしいからな?」

 五歳になったので、そろそろ本格的に勉強してもいいと判断されたらしい。

「陛下に対して、ルリアをかくす必要もなくなったからね」

 と父が言っていた。

 家庭教師から、王にあたしの情報が漏れることを父は警戒していたようだ。

「すこし字がよめると、先生がきたとき、らくだからな?」

「うん、がんばる。ぜんぜん字が読めないけど……」

「サラちゃんは頭が良いなぁ」

「そかな?」

「うん。もう半分ぐらい読めてる」

「でも、ルリアちゃんはおないどしなのに、全部よめ——」

「うまそうである! ルリア、これスイも食べたいのである!」

 ダーウたちですら大人しくしているというのに、スイはうるさかった。

「スイちゃん。あとでね? 今勉強中だからな?」

「すまぬすまぬ……これ、うまそうであるな? 作れるのであるか?」

 どうやら世界各地のの料理という本をみて、大騒ぎしているらしい。

「そうですね。見たことのない料理ですが、料理長に聞いてみましょうか?」

「頼むのである。うまそうであるなぁ? ルリアとサラも食べたいであろ?」

 スイが騒ぐと、ダーウも騒ぎ始める。

「ばう〜ばうばう」

「お、ダーウも食べたいのであるな? 一緒に料理長とこにいくのである」

「ばうばう〜ばうっ?」

「そっかー、ルリアを守る仕事中であるか! じゃあ、スイだけが行ってくるのである」

 スイは本を持って食堂に向かって走って行った。


 昼食後、あたしたちが、中庭で遊んでいると、またコンラートが来た。

「遊びに来ちゃった。へへへ」

 コンラートの顔はにやけている。

 きっと、中庭に来るまえに、姉に会ったのだろう。

「コンラート。感心なこころがけだな?」

 あたしがそういうと、コンラートはきょとんとした。

「え? なにが?」

「きびしい訓練から、逃げださなかったことをほめてやる」

「え? また木に登るの?」

「きょうははしる。これをもってついてこい」

「は、はい」

 あたしはコンラートに、兄が幼い頃に使っていた訓練用の木剣を持たせてから走った。

 もちろんあたしも、兄からもらった木剣とかっこいい棒を持っている。

 そんなあたしの後ろからスイとサラとダーウ、それにミアが付いてきた。

 ロアはあたしの頭の上で、キャロとコルコは木の上で、周囲を見張ってくれている。

「コンラート。とにかく走るのだ」

 あたしは威厳たっぷりに言う。

「なんで?」

「走れたら逃げられるからな?」

「逃げるなんて、王子としてふさわしくない」 

「戦うとしても、走れないならやられる。そういうものだ」

 そんな会話をしながら走って行く。

「サラちゃんは足はやいねー」

「ルリアちゃんの方がはやいよ」

「スイが一番なのであるからして?」

 あたしもサラもスイも余裕だ。

 だが、コンラートは、

「まっでぇ……」

 泣きそうになりながら、遅れ始めた。

「コンラート。そんなことでは逃げることも戦うこともできぬぞ?」

「はいぃ」

「しかたないなー。コンラートがばててるから、休憩するかー」

 休憩に入っても、コンラートは「ぜえはあ」荒く息をしていた。

「コンラートは体力がないなぁ?」

「……うん」

「きたえたほうがいいよ? そうじゃないと……」

「そうじゃないと?」

「いざというとき、しぬ」

「し、死ぬ!? が、がんばる」

 コンラートは訓練に身が入るようになった。

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