目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

157 やってきた鳥達

 あたしは、みんなを起こさないよう静かに寝台から出ると窓へと向かう。

 そして、ゆっくりと音をたてないように窓を開けた。


「ほっほ〜」


 すると、部屋の中に守護獣の二十羽の鳥達が入ってくる。

 それは、大公家の屋敷にある鳥小屋に住んでいろ守護獣の鳥達だ。


「鳥たち。きてくれたの? あ、いまみんな寝てるから、しずかにな?」

「…………」


 鳥たちはすぐに静かになった。

 大公家の鳥小屋に住んでいるのは、フクロウ、鷹、鷲、鳩、雀、オウムなどだ。

 全部で三十羽を超えている。


「…………ほ」

「そっか、十羽ぐらいお屋敷に残ったんだな?」


 鳥達の中には、子供が生まれたりした者もいる。

 全員でこちらにこれるわけではないのだ。


「でも、ついてきてくれて嬉しい」

「…………」


 二十羽の鳥達は無言であたしに体を押しつけて甘えてきた。

 だから、あたしも鳥達のことを優しく撫でる。


「……ほ」

「あ、ヤギたちも来てるのか?」


 あたしは鳥達に教えてもらって、窓から森の方を見た。

 森は屋敷を囲む金属製の柵を越えた先にある。


「いた」


 まるで湖畔の別邸にいたときのようだ。

 巨大なヤギ、猪、牛が木々の間から、こちらを見つめていた。


 あたしはヤギたちに向かって無言で手を振る。

 ヤギの尻尾がぶんぶんと揺れる。猪と牛の尻尾は見えないがきっと振っているに違いない。


「えっとな、ダーウがずっと走っていたでしょ?」

「…………」

「それで筋肉痛になって、つかれて風邪をひいちゃったみたい」

「……ほ」

「だいじょうぶ。もうだいぶ元気になったみたいだし」


 先ほども遊ぼうと言っていたぐらいだ。


 今は昼にもなっていない。

 朝起きたときには、風邪をひいた、全身が痛いと言っていたのに、もう回復しているのだ。


「ダーウはやっぱりすごいな」

「……ほ」

「ダーウが元気になったら、またあそぼうな?」

「ほほ」


 鳥達は部屋を汚さないよう気を遣ったのか、挨拶を済ませると飛びたっていった。


「鳥たち、みんな静かだったな」


 羽音も静かだった。普通の鳥はもっとバサバサうるさいものだ。

 そのおかげでスイもサラもロアもダーウも、みんな気持ちよさそうに眠っている。


「守護獣だからか?」


 羽音が静かなだけじゃなく、飛び立った後に糞も脂粉も落ちていない。

 普通、鳥はうんちを我慢できないので、垂れ流すものだ。


 飛ぶために体を軽くするため、溜めないで出してしまうのだろう。


「そういえば、コルコも、そこら中でうんちしないな?」

「こ?」


 コルコも鳥なのに、うんちをちゃんとトイレでするのだ。


「えらいえらい」

「こここ」


 あたしはコルコを撫でまくった。


「コルコのとさか、やわらかいな?」


 ぷにぷにして気持ちが良い。ダーウの肉球の感触に少し似ているかもしれない。


「コルコ、キャロ、お昼寝しよ」

「ここ」「きゅきゅ」


 あたしはコルコとキャロを抱っこして、寝台にあがる。


「いいこ、コルコはいいこ、キャロもいいこ」


 撫でまくっていると、スイに抱きついていたロアが目をうっすら開ける。

 そしてパタパタ飛んであたしの顔に抱きついた。


「……ロアはかおがすきだな?」

「……り」


 もうロアは寝息を立て始めた。

 あたしが寝台に乗った振動で、一瞬起きただけだったのだろう。


「ロアもいいこ」


 ロアを優しく撫でながら、顔から外して抱っこする。


「ダーウもいいこ」


 ついでに、ダーウのお腹も撫でておいた。


 そうしているうちに、あたしも眠くなってくる。


 その日は、ご飯のとき以外、寝台の上でごろごろして過ごしたのだった。

 夕方頃には、ダーウはすっかり元気になったが、一応夜ご飯も部屋で食べた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?