あたしは、みんなを起こさないよう静かに寝台から出ると窓へと向かう。
そして、ゆっくりと音をたてないように窓を開けた。
「ほっほ〜」
すると、部屋の中に守護獣の二十羽の鳥達が入ってくる。
それは、大公家の屋敷にある鳥小屋に住んでいろ守護獣の鳥達だ。
「鳥たち。きてくれたの? あ、いまみんな寝てるから、しずかにな?」
「…………」
鳥たちはすぐに静かになった。
大公家の鳥小屋に住んでいるのは、フクロウ、鷹、鷲、鳩、雀、オウムなどだ。
全部で三十羽を超えている。
「…………ほ」
「そっか、十羽ぐらいお屋敷に残ったんだな?」
鳥達の中には、子供が生まれたりした者もいる。
全員でこちらにこれるわけではないのだ。
「でも、ついてきてくれて嬉しい」
「…………」
二十羽の鳥達は無言であたしに体を押しつけて甘えてきた。
だから、あたしも鳥達のことを優しく撫でる。
「……ほ」
「あ、ヤギたちも来てるのか?」
あたしは鳥達に教えてもらって、窓から森の方を見た。
森は屋敷を囲む金属製の柵を越えた先にある。
「いた」
まるで湖畔の別邸にいたときのようだ。
巨大なヤギ、猪、牛が木々の間から、こちらを見つめていた。
あたしはヤギたちに向かって無言で手を振る。
ヤギの尻尾がぶんぶんと揺れる。猪と牛の尻尾は見えないがきっと振っているに違いない。
「えっとな、ダーウがずっと走っていたでしょ?」
「…………」
「それで筋肉痛になって、つかれて風邪をひいちゃったみたい」
「……ほ」
「だいじょうぶ。もうだいぶ元気になったみたいだし」
先ほども遊ぼうと言っていたぐらいだ。
今は昼にもなっていない。
朝起きたときには、風邪をひいた、全身が痛いと言っていたのに、もう回復しているのだ。
「ダーウはやっぱりすごいな」
「……ほ」
「ダーウが元気になったら、またあそぼうな?」
「ほほ」
鳥達は部屋を汚さないよう気を遣ったのか、挨拶を済ませると飛びたっていった。
「鳥たち、みんな静かだったな」
羽音も静かだった。普通の鳥はもっとバサバサうるさいものだ。
そのおかげでスイもサラもロアもダーウも、みんな気持ちよさそうに眠っている。
「守護獣だからか?」
羽音が静かなだけじゃなく、飛び立った後に糞も脂粉も落ちていない。
普通、鳥はうんちを我慢できないので、垂れ流すものだ。
飛ぶために体を軽くするため、溜めないで出してしまうのだろう。
「そういえば、コルコも、そこら中でうんちしないな?」
「こ?」
コルコも鳥なのに、うんちをちゃんとトイレでするのだ。
「えらいえらい」
「こここ」
あたしはコルコを撫でまくった。
「コルコのとさか、やわらかいな?」
ぷにぷにして気持ちが良い。ダーウの肉球の感触に少し似ているかもしれない。
「コルコ、キャロ、お昼寝しよ」
「ここ」「きゅきゅ」
あたしはコルコとキャロを抱っこして、寝台にあがる。
「いいこ、コルコはいいこ、キャロもいいこ」
撫でまくっていると、スイに抱きついていたロアが目をうっすら開ける。
そしてパタパタ飛んであたしの顔に抱きついた。
「……ロアはかおがすきだな?」
「……り」
もうロアは寝息を立て始めた。
あたしが寝台に乗った振動で、一瞬起きただけだったのだろう。
「ロアもいいこ」
ロアを優しく撫でながら、顔から外して抱っこする。
「ダーウもいいこ」
ついでに、ダーウのお腹も撫でておいた。
そうしているうちに、あたしも眠くなってくる。
その日は、ご飯のとき以外、寝台の上でごろごろして過ごしたのだった。
夕方頃には、ダーウはすっかり元気になったが、一応夜ご飯も部屋で食べた。