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159 遊ぶルリア達

 朝食の後、あたし達は視察に向かうマリオンと姉を見送った。


「お昼ご飯までなにしよっか」

「うーん」

「わふわふ〜」

「ダーウは、棒であそびたいのか」


 ダーウがかっこいい棒で遊びたいというので、庭で棒を使った遊びをすることにした。


「ルールを考えないとだな?」


 まず、ダーウが口で咥えた棒を振り回して、精霊をバシッと打って飛ばす。

 それをサラかスイが空中で触れたあと、地面に落ちるまでにあたしが棒で打ち返すのだ。

 それをまたダーウが打ち返す。


 地面に落ちそうになったら、キャロとコルコがぽんと上にはねあげて、時間を稼ぐ。

 地面に落ちたら、マイナス一点、打ち返せたらプラス一点。


 そういうルールを考えた。


『もっともっと〜』『たのし〜』『きゃっきゃ』

「うわふうわふ」


 ダーウは楽しそうに精霊を飛ばすが、当然のように飛ぶ方向はバラバラだ。


「と〜!」


 右に飛んだ精霊はサラが、五歳とは思えない速さで追いかけて、ジャンプして触れる。


「サラちゃん! まかせて!」


 その後にあたしが追いついて、

「と〜〜」

 精霊をダーウに向かって打ち返す。


「こっちはスイに任せるのである!」


 サラとは逆方向、左側に飛んだ精霊はスイが頑張って触れる。


 あたしはサラ側に飛んだ精霊と、スイ側に飛んだ精霊両方に対応しなければならない。


「ふんふんふん!」


 あたしは高速で跳ね回り、精霊を打ち返していく。

 だが、とてもではないが、全てを打ち返せない。


「きゅ!」

「ここ!」


 あたしが取りこぼした精霊はキャロとコルコがぴょんと上にあげてくれる。


「キャロ、コルコ、ありがと!」


 キャロとコルコに地面に落ちるまでの時間を稼いでもらって、ダーウに向かって打ち返した。


『たのし〜』

「ばう〜」


 精霊達もダーウも楽しそうでなによりだ。


「ばうばうばう!」


 ダーウはご機嫌にどんどん精霊を右に左に飛ばしてくる。


「はっはっはっは!」

「…………」


 サラは左右に高速で動きながら、ジャンプして精霊にタッチする。

 サラの素早い動きに、ミアは無言でくっついていく。


 ミアの動きもなかなか速かった。


「棒と剣、両方つかっても、まにあわない!」


 かなり激しい運動だ。


「りゃむりゃむ〜」


 あたしの頭の上に乗っているロアは、ご機嫌に鳴いている。

 あたしが速く動いたことで、振動がはげしくなるのが楽しいのだろう。


『ルリア様! 少し精霊力が多くなってきたのだ!』

「わかった!」


 激しく動くことで、つい精霊力が多めに出てしまう。

 特にあと少しで精霊を落としそうなときに、つい出てしまいそうになる。


 すると、すかさずクロが注意してくれるのだ。


「おさえるコツがわかってきた!」

『うん! 良い感じなのである! ルリア様、その調子で精霊力を抑えるのだ!』


 この遊びは精霊力を抑える訓練にもなるので丁度いい。


 三十分も遊んでいたら、あたしもサラもスイも汗だくになった。

 ダーウも「はぁはぁ」言っている。


「すこし休憩しよ」

「スイが水を出すのである!」


 あたしたちはスイが出してくれた水をのんで休憩した。


 すると、バサバサという羽音をたてながら、守護獣の鳥達がやってきた。


 どうやら鳥達は、遊びの邪魔をしないように、上空を旋回して待っていてくれたらしい。


「ほほう?」

「ばうば〜う」


 鳥達はダーウに「もう良いのか?」と聞いていた。


「ちゅちゅ?」

「今日はおやすみだ。ほんとは視察に、ついていきたかったんだけどな」

「ダーウはやみあがりだもんね? 安静にしないと」


 サラがそういうと、鳥達は、驚いてダーウを見る。


「わふ?」


 鳥達は全く安静にしてないようにみえるダーウが気になったのだろう。


「たし……かに……激しく動きすぎたかもな?」


 ダーウが遊びたがったので、ついあたしも調子に乗った。


 これからはゆっくりめの遊びをした方が良さそうだ。


「ほほう?」

「そだな〜。ルリアも明日はしさついけたらいいな?」

「でも、視察って毎日いくのかな?」

「わかんない。でも、明日いくとしても、馬にのっていきたいな?」


 視察にいくのに、馬車を使わず馬に乗って向かいたい。

 そのほうがかっこいいし、楽しそうだからだ。


「ぴぴぃ?」


 話を聞いていた鷹が「馬に乗れるの?」と聞いてきた。


「わかんない。のったことないからな。でも、のれるきがする……」

「サラものれるきがする」「ばうばう」


 ダーウも乗れる気がすると言っているが、それは無理だ。


「ルリアは、お昼ご飯を食べたら、馬にのる練習するからな? みててな?」

「サラも練習する」「スイも」

「ほほぅ〜」


 フクロウが頑張れと言ってくれていた。


「うん、がんばる。明日までにのれるようになるかな?」

「どうかな〜。できる気がするのだけど。だって、ヤギの背中にのったし」

「そっかー。そうだね」


 祖父に初めて会って助けた日。

 あたしとサラは、守護獣のヤギの背中に乗って、屋敷に帰ったのだ。


「ヤギの方が馬よりでかいしな? スイちゃんは馬に乗れる?」

「乗ったことないけど、乗れるのである。ないしろスイは牛に乗ったのである」

「そっかー」


 あたしとサラがヤギに乗ったとき、スイは守護獣の牛の背に乗っていた。

 あの牛も馬より大きい。だからきっと、スイも馬に乗れるに違いない。


「でも、馬はどくとくなコツがいるかもしれないしな〜」

「そだな」


 そんなことを話している間にお昼ご飯の時間になったのだった。



 あたし達は鳥達と別れて、食堂に行ってお昼ご飯を食べる。


「うまいうまい。これはうまいな?」

「おいしいね」

「うむ。この肉も卵もパンもうまいのである!」


 お昼ご飯はとてもおいしかった。

 運動してお腹がすいたおかげもあるだろうが、食材と水がいいのと料理人の腕も良いのだ。


 ダーウ、キュロ、コルコとロアもむしゃむしゃご飯を食べている。


「おいしいな? いつもよりおいしく感じるな?」

「わふわふ」「きゅ」「ここ〜」「りゃむ」


 どうやら、ダーウ達もいつもよりおいしく感じているらしかった。


 あたし達がご飯を食べ終えて、ゆっくりお菓子を食べていると従者筆頭がやってきた。

 従者筆頭は、屋敷に残って色々行政的な業務をしていたらしい。


「お嬢様方。お昼の乗馬の練習を担当する者をご紹介いたします。従者のトマスです」


 従者筆頭に紹介されたトマスは、祖父を助けたときあたし達と一緒にいた従者だ。

 あたしが回復魔法を使うのを目撃した数少ない従者でもある。


「おー、トマス! よろしくな?」

「トマスさん。よろしくお願いします」

「頼むのである」「ばうばう」


 あたし達が挨拶すると、


「微力を尽くさせていただきます」


 トマスはゆっくり頭を下げた。

 ダーウは、従者の中ではトマスが一番好きらしく、嬉しそうに体を押しつけにいった。


「トマスは馬のるの得意だったの?」

「トマスの乗馬の腕は、従者の中でも上位に入ります」


 あたしの問いに従者筆頭が答えてくれた。


「そっかー、猪に乗るのもうまかったものな?」


 あたしとサラがヤギに、スイが牛に乗ったとき、トマスは猪に乗っていたのだ。

 今、思い起こせば猪を上手に乗りこなしていた気がする。


 きっと、馬に乗るのも上手に違いなかった。

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