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第117話 家の補修

 頭にルクスを乗せたまま、ミナトはあんパンを食べつつ、魔山羊達の後を追う。


「うまいうまい。もったいないから、ゆっくり食べよう」

「りゃむりゃむ~」


 ルクスもあんパンを両手で持って、まだ一生懸命食べている。

 タロとフルフル、コリンとコトラ、虎3号と二人のコボルトがついてきた。


「村でレトル草を作らないといけませんからな! 確認しておかないと!」

「そだね! 草の種類が違ったら、作り方も少し変えないとかもだし……」


 魔山羊二頭は、建物のある場所から離れて藪の中を進んで行く。


「めえ~もぐもぐ」

 ゆっくり歩きながら魔山羊は雑草を口に食べる。


「へー、この辺りの草もおいしいんだ。もぐもぐ」

 ミナトもゆっくりと歩きながら、あんパンを堪能していた。


「めめ!」

「あ、レトル草だ! ありがと! もぐもぐ!」


 ミナトはあんパンの最後のひとかけらを口に放り込むと、魔山羊二頭を順番に撫でた。


「めめぇめぇ」「めぇ~」

 魔山羊は気持ちよさそうに短い尻尾をぶんぶんと振っている。


「にゃ~」「がう?」


 コトラと虎3号が、レトル草の匂いをクンクンと嗅いでいる。


「品質はどうだろう? 魔山羊さんによると、味はおちるみたいだけど……」

「葉の色もこくて、良さそうにみえますな」

「匂いもいい感じです。品質はいい気がするです!」

「ばうばう~」

「そだね! サラキアの書で調べてみよう!」


 ----------


【品質のいいレトル草】


 薬草。品質がよい。これでレトル薬を作ると、より効果の高い物を作ることができる。

 レトル薬の製造法は、ただのレトル草と同じ。


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「おお~。品質がいいんだって!」

「素晴らしいですな! 製造法が同じなのも助かりますぞ!」

「よかったです!」


 それから、ミナト達は品質のいいレトル薬を採取したのだった。



 レトル薬採取を終えて、皆のところに戻ると、いい匂いがしていた。


「あ、松茸ご飯たけた?」

「あと少しですぞ。もうしばらくお待ちくだされ」

「ぴぃ~」


 ピッピは大鍋の下で元気に炎に包まれていた。


「ピッピ、ありがと」

「ぴぴ~」

「りゃむ!」


 ルクスに尊敬の目で見られて、ピッピはとても嬉しそうだった。


「みんなは……。あれ、なにしてるの?」「ばうばう」

 他のコボルト達とレックス、それにアニエス達は家の周りで何やら作業をしていた。


「状態のいい家があったからな、補修しているんだよ」

 木材を運んでいるジルベルトが教えてくれる。


「おおー。木材たりそう?」

「ああ、神殿長からもらったものに加えて、レックスも分けてくれたからな」


 神殿長がお詫びにくれた木材を、アニエス達は魔法の鞄に入れて持ってきていたのだ。


「レックスありがと!」

「例には及ばん。いつ入れたか覚えてないほど古い木材を提供しただけだからな」


 古い木材でも、魔法の鞄の中に入っていれば腐らないのだ。


「レックスさんから分けていただいた木材は品質が凄く良いのです」

「そうそう。家に使うにはもったいないぐらいで……」


 コボルト達が嬉しそうに言う。


「後で氷竜の家を建ててもらうつもりだからな。建築費代わりだよ」

「とてもではないが、釣り合っていない気もしますが……」

「本当に気にするな、鞄の肥やしになっていただけだからな」


 そんなことを、レックスとコボルト達が話している。


「補修って、具体的になにしてるです?」

「扉と床の補修ですぞ。奇跡的に柱が無事だったので」


 コリンの問いに答えたヘクトルも元気に木材を運んでいた。


「ヘクトル、腰は大丈夫?」「わふ~」

「ありがとうございます。ミナト、タロ様。至高神様のおかげですな!」


 そういうと、ヘクトルは至高神に感謝の祈りの言葉を唱えた。

 体を思いっきり動かせることが楽しいのか、ヘクトルは本当に嬉しそうだ。


「柱が無事だったのはよかったねー」

「ばうばう」

「そだね、屋根と扉と壁が無事だったからかな?」


 雨や風、雪などが吹き込まなかったのかもしれない。


「きっと村長の家だったのでしょうね。明らかに木材の質が違います」

 額に汗して、コボルト達を手伝っていたアニエスが笑顔で言う。


「そうなの? 高い木なの?」「わふ~?」

「はい。高価ですが、腐りにくくて固くて、燃えにくい木です」

「おおー、すごい」「わふわふ」


 今、補修している家は、他の家よりも二回りほど大きかった。

 詰めればコボルト全員が入れそうだ。


「それでもレックス殿にいただいた木材よりは質は大分落ちますが」

「そうなんだね!」


 この家に泊まりながら、家を順番に建てていく予定なのだろう。


「建築、僕も手伝うよ! 僕は力持ちだし、手先も器用だからね!」

「僕もです! 体を鍛えないとですからね!」

「わふわふ!」

 タロも力持ちだし、手先が器用だとアピールしていた。


「お、それはありがたいですな!」

 そんなことを話していると、村長が大きな声で皆を呼んだ。


「松茸ご飯ができましたぞ!」

「やった!」「わふわふ~」


 村長の声で、ミナトとタロは大喜びした。

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