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無双-反撃の狼煙-

 -まず、このアイテム達の名前は『母なる龍の涙石』と言うらしい。…つまり、これらは創世龍が生み出したアイテムという事であり、効果もその名前に負けないくらいヤバい。

 一つ目の魔石には、この世界の文字で『インフィニティ』と刻まれていた。…その効果内容は、魔力無限、スキル無限発動、スタミナ無限の3つ。つまり、攻撃や回避等のアクションが文字通り『無限』に行えるのだ。

 そして二つ目の魔石には、『キャンセル』と刻まれていた。…どうやらコレには、デバフ無効に物理攻撃&魔法攻撃無効。更には、呪い無効やスキル無効までついている。

 つまり、これを防具に装備すれば敵のヤバいアクションを受けずに済むのだ。…この二種類だけでも随分とチートだが、なんと魔石はもう一種ある。

 それには『ギフト』と刻まれており、その内容は一つ目と二つ目の効果を味方に与えるというものだ。…つまり、味方もチート状態に出来る恐ろしいアイテムだ。

 しかも、トドメとばかりにこのアイテムは俺と相棒用の2セット用意されていた。…というか、こんなアイテムがあるのにどうして最強NPC軍団は負けたのだろうか?


「-…っ!」

 新たな疑問が出てくるが、俺は気持ちを切り替えて魔石を装備と相棒にセットする。…すると直ぐに、魔力とスタミナのステータスバーの上に『∞』の表示が出た。

 次に、4つのキャンセル効果がステータスに表示される。勿論、相棒にも同じ変化が起きていた。

『…グルア』

「『どうかご武運を』…と、我が主は申しております。無論、私もお二人の武運を祈っております」

「「ありがとうございます」」

『…グルア』

「「…っ!」」

 そして、いざ迎撃に出ようとしたところで天井に魔法陣が展開した。…恐らく、転移の魔法陣だろう。

「重ね重ね、ありがとうございます。

 -ヴァイスッ!」

「イエス、マスターッ!」

 俺は再度礼を言い、相棒の名を叫ぶ。すると相棒は雄々しい声で返事をして、またその身体に光を纏った。


『-グルアアアッ!』

「ゴーッ!」

 そして、急速に光の塊は大きくなっていき程なくして相棒は元の姿に戻った。なので、俺は素早く騎乗し号令を出す。

『イエス、マスターッ!』

 すると、相棒は返事をしてから飛翔を始め直ぐに転移の魔法陣に入った。…っ!これは、随分と『本気』のようだ。

 直後、俺達はパレスの上空に転移しており眼下に混沌の大軍が見えた。…それを見て、俺は震えてしまう。

『…さあ、マスター。オーダーを』

「…ああ。

 -セイントウィング」

 けれど、相棒は自信に満ちた様子で俺に指示を求めた。そのおかげで震えは小さくなり、俺はハッキリとした言葉を口に出来た。

 直後、相棒の翼は白い光に包まれる。…するとようやく、敵はこちらに気が付いた。


『ギギャアアアアッ!』

 そして、奴らは一斉に俺達を地に落とさんと攻撃を放ってくる。だが、全ての攻撃は俺達に届く事はなかった。

 何故なら、キャンセルの魔石が見えない防御壁を広範囲に展開していたのだから。そのおかげで、俺は落ち着いて『準備』を続けられた。

「ブレイクカッター。

 -アタックッ!」

『イエス、マスターッ!』

 二つ目のスキルを発動すると、光の翼は急速に細くなりナイフのような形になった。…それを確認した俺は、相棒に攻撃指示を出した。

 すると、相棒は一気に急降下し敵の中へと突撃した。その最中、俺は素早くターゲットを設定する。

『イエス、マスターッ!』

 そして、急降下した相棒は真っ先に敵の中で一番デカイ奴の元へと向かった。…なにせ、そいつはパレスの壁を破壊しようとしていたのだから。


 -そいつの名前は、『混沌の巨兵』。

 ゲームでは中盤に出現するのだが、その特性故に極力エンカウントしたくないエネミーの一体だ。…その特性とは、『破壊』。その巨大な手で攻撃された物は、砂のように崩壊してしまうのだ。

 当然、プレイヤーにも有効で破壊耐性がついていない装備でエンカウントすると、確実に装備がダメになる。しかも、万が一パートナーが攻撃を受けるとその部位が『破壊』される。

 つまり下手したら、パートナーが一撃でやられる危険があるのだ。…まあ、とても幸運な事に俺達はそんな目に遭っていないが、遭った人はトラウマ確定だろう。


『-…ギギッ!ギギギギッ!』

 そんな事を考えている内に、奴との距離は残り僅かになっていた。すると、奴は突然パレスへの攻撃を止めた。そして、不気味な声を出しながら真っ黒な手をこちらに向ける。

『ギギャギギャッ!』

 次の瞬間、奴の手から漆黒の煙が吹き出しそれが『使徒の手』に変化する。…やはり、コイツらを差し向けたのは使徒のようだ。

『ギギャッ!?』

 だが、俺達がお構い無しに突撃したので奴は驚いたような反応をした。そして、直ぐに俺達を捕らえようとしていた使徒の手は、見えない防御壁によって急速に消されていく。

『ギギャアアアッ!?』

 そして、難なくデカブツの手まで到達し相棒はすれ違い様その手を切り裂いた。…当然、そいつは悲鳴のような声を上げながら地団駄を起こした。

『ギギャアアアアッ!』

 すると、その周りに居た尖兵達は巨兵によって踏み潰されていく。…これで、ある程度敵の数を減らせるだろう。


「次は、『ココ』を狙えっ!」

『イエス、マスターッ!』

 更に追い討ちを掛けるべく、俺は次のターゲットをオーダーウィンドウから指定した。すると相棒は了承し、スピードを維持したままUターンを決めて再びデカブツの元に向かった。

『ギギギギッ!?』

「…っ!?」

『あれはっ!?』

 だが、突如暴れていたデカブツに異変が起き始めた。…なんと、使い物にならなくなった右手から大量の漆黒の煙が吹き出し、それが奴の手のみならず全身を呑み込んでいった。

『なんと醜悪な姿かっ!』

「……」

 そして、全身を煙でコーティングされたデカブツからは、至るところから漆黒の大きな手が出現した。…正直、キモ過ぎて鳥肌が立ってしまう。

『マスターッ!』

「このまま行けっ!」

 けれど、俺達は臆する事なくデカブツに突っ込んでいく。すると、デカブツは先程とはまるで違うモノのように無言で大量の手を伸ばしてきた。…多分、使徒に意識が乗っ取られているのだろう。


『おおおおおおッ!』

 それから程なくして手は俺達に迫るが、当然見えない防御壁に阻まれる。そして、直後光の翼で複数の手は消えていった。

『せいやああああっ!』

 相棒はそのままデカブツの首に突っ込み、横一線にそこを切り裂いた。…するとその部分の漆黒の霧はかき消され、その少し後にデカブツの首から黒いダメージエフェクトが発生した。

『ギギャアアアアッ!』

 そのまま奴は前に倒れ、周りの尖兵達を押し潰した。更に、倒れた際に発生した砂嵐並みの土煙が大勢の敵を吹き飛ばした。

「…おっ」

 そのタイミングで、二つのスキルが消え相棒の翼が元に戻った。…当然、リキャストタイムは直ぐに終わりまた使用が可能になる。

『…本当に、この魔石は凄まじいですね。

 さて、どうしますか?また、光の刃の如き我が翼で敵を切り伏せますか?』

「…いや、せっかくだからインフィニティの他の効果も活用しよう。

 -その方が、敵に逃げる隙を与えない」

『流石はマイマスター』

 相棒は好戦的な様子で提案するが、俺は敵を逃がさない為のプランを提示する。それを聞いた相棒は、こちらを称賛してくれた。


「セイントブレスッ!」

『はあああああっ!』

『ギギャアアアッ!』

 そして、直ぐにオーダーを出すと相棒は地面に向けて白銀のブレスを放つ。当然、地上に居た敵は一瞬で消えていった。

「どんどん行くぞっ!」

『イエス、マスターッ!』

 その後も、相棒は逃げ惑う地上の敵にブレスを放っていく。…この技は魔法攻撃な上にポイント消費が激しいので、普段は三回が限度だ。

 だが、今はMP無限の効果で無制限に放つ事が出来る。…そのおかげで、相棒はものの数分で敵を全滅させるのだった-。

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