「-以上で、説明を終わります。…では、ここからはこちらの『ライト』様にお任せしたいと思います」
『…っ!?』
『…ライトって、あの?』
状況説明が終わると、巫女は丁寧な所作でバトンタッチしてくる。…直後、広間はざわざわとしてきた。
やはり、このゲームにおいて俺は相当な『有名人』になっていたようだ。…多分、半分くらいは俺の『投稿』に世話になっているだろう。
「…巫女殿、すみませんが『目印』とかお願い出来ますか?」
「畏まりました」
『…っ!?』
まず、巫女に準備をお願いすると彼女は静かに素早く右手を挙げる。…直後、広間の壁沿いに八つの大きな台座が出現したかと思えば、その上に属性の色をした『光の玉』が出現した。
「ありがとうございます。
じゃあ、属性ごとに分かれてくれます?」
『……』
指示を出すと、彼らは困惑しつつ自分の属性の所に向かった。…ふむ。まあ、『七つ』のバランスは良さそうかな?
一つの台座の周りには、だいたい五~六人くらい集まっていた。…けれど、一つだけ誰も該当しない属性があった。まあ、ある程度予想していたのでそこまで驚く事はなかった。
そうこうしている内に振り分けは終わり、俺は再び口を開こうとした。…すると、『紫』の玉の台座だけが消えた。
「はい、ありがとうございます。…いや、それにしても案の定『闇属性』だけ居ませんでしたね」
『……』
こちらの発言に、他の奴らは『仕方ない』というような反応をする。…確か攻略サイトによると、『闇属性は強力な反面相応なデメリットがある』的な評価が付けられていた筈だ。
そして、この属性のパートナーを引き当てた奴は恐らく、相当な『ひねくれ者』だろう。…現に彼らは、この場に居ないのだから。
「…まあ、闇属性を味方に引き入れるかは後で考えましょう。
今は、このメンバーだけで対抗していきたいと思います。…なので、次はお互いの事を知りましょう」
『……っ』
「じゃあ、言い出しっぺの俺から-」
まず、俺から自己紹介を始める。…まあ、上級プレイヤーのほとんどは俺の事を知ってるみたいだが、中堅達はそうじゃない。だから、俺の事を初めて知る彼らはかなり驚いていた。
「-…てなワケで、一応俺は『使者』的な立場です。けど、別にリーダーを名乗るつもりはないですから。…あ、誰かやりたい人います?」
『……』
そんな事を聞いてみると、意外な事に誰も名乗り出なかった。…光や炎とかで、そういう性格の人が居そうな気がしたのだが。そうでなくても、年上の人がそこそこ居るから誰かはやりたいと思ったが、違うみたいだ。
「…お前以外で、リーダーに適任な奴は居ないと思うが?」
「だよな~。なにせ、俺達が此処に来ようと思えたのは『お前が召集』したからだし」
『……』
すると、年長者かつ高レベルプレイヤー二人がそんな事を言う。更に、周りの奴らは静かに頷いた。…そこまで言われてやらないのは、彼らの決意を無駄にしてしまう。
だから、俺は覚悟を決めた。…ただ、全部一人ではやりたくないので『次の役割』を決める事にする。
「分かりました。…でも、出来れば七人くらいの人が協力してくれると助かります」
『……っ!』
「…まあ、それぐらいなら引き受けても良いかな」
「…流石に、年下っぽいお前に全部任せっきりといのは良くないからな」
「…で、君はどんな人に協力して欲しいの?」
やはり、彼らも似たような事を考えていたようだ。なので、相棒に合図を送ると彼は即座に頷きウィンドウを展開する。
更に、全員が見易いように巫女が気を利かせ空間投影してくれた。…すると、全員がそれを見る。
-そこには、二つの条件があった。
一つは、『このゲームの開発元が出している他の作品を経験している事』。…やはり、世界観を理解している人でないといけない。そうでないと、リアルと化したこのゲーム世界で生きて行く事は難しいだろう。
そして、二つ目はやはり『高レベルの龍騎士とドラゴンのコンビ』だろう。…これは、どちらかというとドラゴン用の条件だ。こうしておかないと、間違いなくドラゴン側が不満を抱いてしまいやがてチームは崩壊してしまう。
『……』
「では、この二つに当てはまる人は台座の前に立って下さい」
『……』
すると、六人の男女が前に出てきた。…つまり光の該当者は、俺しか居ないという事だ。しかし、これもある程度予想していたので俺は冷静に続ける。
「これからは、あの六人を『班長』と呼びますので宜しくお願いします。
また、光の場合は『レベル50以上』かつ『複数のバトル要素ありのゲーム経験者』に代理の班長を任せたいと思います」
『……っ!』
光属性チームにそう告げると、彼らは意表を突かれたようだ。…まあ、少しでも負担は軽くしておきたいのと『もしも』の時の保険だ。
そんな思惑を知らない彼らは、お互いの顔を見る。…いや、見た感じ全員中堅プレイヤーだから大丈夫の筈だ。果たして、誰が来るのか?
「…はあ、しょうがねぇか」
期待しながら成り行きを見ていると、最初に声を掛けてきたイケメンが該当したようだ。しかし、彼はあまり乗り気ではないらしい。…まあ他の面々、特に風水氷も同じように少し面倒臭さそうな顔をしていた。
「安心して下さい。班長の皆さんにお願いするのは、班員のデータ確認と班内のアイテム確認とかですから。
方針や作戦は、話し合って決めましょう」
『…っ』
「…そんなので良いのか?」
「ええ。どうか、宜しくお願いします」
『…了解』
軽く頭を下げると、全員『仕方ない』という顔で頷いてくれた。…なので、ようやく次に進める。
だが、その前に肝心な事を巫女に確認しておきたい。…それは-。
「-ちょっと良いか?」
「…なんですか?」
早速巫女に確認を取ろうとしていると、ふと土の班長が聞いてきた。…もしかしたらピンポイントの確認かもしれないので、年上っぽいその人の質問に応じる。すると、そいつは周りを見ながらこんな事を言った。
「この後は、班のメンバーのデータ確認か?」
「…っ!ええ、そのつもりですよ。…あ、もしかして『休憩しながら』やりたいとかですか?」
「…おっ、話が早くて助かるぜ。
多分、大半の奴は疲れてると思うから座ってやりたいんだが…」
予想通り、大きな体格の彼は休憩場所の提案をしてきた。…やはり、土属性は『心優しい力持ち』でないとな。
「…という事ですが、部屋は用意出来ます?」
「…っ!我が主は、『喜んで用意させていただきます』と仰りました。なので、早速ご準備致します」
すると、話を聞いていたパレスの主から許可が降りた。…まあ、ここの主の性格なら絶対に快く二つ返事をしてくれると思っていたが。
なんにせよ、これで『拠点』の問題は解決出来そうなのでホッとした。
『……っ』
しかし、彼らはまた驚いていた。…そりゃ、いきなり台座の玉が光ったと思ったら急に結界が展開し、まるでエレベーターのごとく床が上がり始めたのだから。
「あっ!聞いて貰いたい事は、メールで飛ばしますね~っ!…っと-」
『-っ!?』
そんな彼らに、俺は大声で伝えた。…そしてそんな俺も、瞬時に光の所に転移した。当然メンバーはぎょっとし、直ぐに代理班長が近付いて来る。
「…今、どうやって来た?」
「…『これ』のおかげさ」
「…なんだ?随分と、『アンティーク』な雰囲気があるが」
「お、良い感性してる~。…やっぱ、『光』はこうじゃないとな」
「…どうも。…で?」
「…こいつは、『転移の魔法道具』さ。…要するに、『設定上のアイテム』さ」
『…っ!?』
それを聞いたメンバーは、余計驚いた。…まさか、俺がそんな幻のアイテムを持っているとは想像していなかったのだろう。
そうこうしている内に、俺達は天井付近に到着する。…そして、背後に立派な白いドアが出現したので俺は真っ先に入った-。