大坂城塞より真っすぐ西、淀屋橋筋と淡路町通の交差点。
〈
「他藩者の言うんが気に食わんが、いっばん目立つよう暴れちょれっち指図は
『
「きぃえええええええええええええええええええええええええええええええええ――――っ‼」
長刀が唸りを上げ、敵機の頭上に殺到。アサルトライフルを持った
いかに強烈な剣技とはいえ、
背後から銃撃音。機首を返すと、豪雨に煙る道路の先から別の敵機がライフルを連射している。菱刈は迷わず前進。銃弾が当たりモニターの映像が乱れるが、寸毫も進路は変えない。〈墜星〉が目指すは常に一所、敵の面前のみである。
だがそこへたどり着く前に、敵機の方に異変が起きた。横道から猛進してきた大型車両が側面に激突したのである。それは前面を鉄板で補強した大型トラックだった。トラックはそのまま押し続け、敵機は縁石に足を取られて仰向けに転倒した。
すると
発破――煙はすぐに流され、後には片脚を破壊されて地にのたうつ敵機のみがあった。
「
菱刈は一人吐き捨てた。聞こえていないはずであったが、石切衆頭目の男は〈墜星〉を見上げ、無線で話しかけてきた。
『お邪魔をしましたな、刹摩のお人。さあ、お役目を全うせねば。どんどん参りましょうぞ』
「……言われっまでもなか」
菱刈はそう返し、さらなる敵を求めて走駆した。
―――― ◇ ――――
そこからさらに南の
「ほれ
『ほんのこて
盾を構えてごろごろと進む〈桜島〉。その後ろに
『
横合いから現れた異国機が斬りかかる。佑月はすぐさま反応し、左の刀で斬撃を受け止めた。
「
張州脱藩浪士、飯森
『刹摩の後塵を拝すばかりか、その盾に隠れるとは……!』
後方の横道からも敵機が多数現れ、三機の退路を塞ぐ。志道が迎撃に向かい、佑月は飯森との鍔迫り合いに右の刀も添えて抵抗しながら、無線に叫ぶ。
「申号‼ 行け‼ 務めを果たして見せえよ‼」
『おお、分かっちょりもす。御山の噴火、見ちょってくいやんせ』
緊張感のない声を返し、〈桜島〉は走り去ってゆく。
『刹摩の露払いだと……! 先人の志士達が泣いておるぞ!』
飯森の機体は太い脚部を振り上げ、〈双燕〉を蹴って距離を開けた。直後、別の敵機からの銃撃。佑月と志道はそれぞれ別れ、建物の陰に隠れる。
標定機によると、敵は飯森含め四機。
(分かっちょったけど、白刃の上を歩くような作戦じゃ……)
佑月は操縦桿を握る手に汗を滲ませた。
―――― ◇ ――――
大川の濁った激流に今にも飲み込まれそうな天神橋を、しなやかな体躯の〈
蓮太郎は顔をしかめて無線に言った。
「……おい、勝手に振るな。危ないだろう」
『だって‼ 今の内に少しでも練習しとかないと感じが分かんないじゃない‼』
壁際に設置された端末に向かって座っている差賀藩の技術士達が胡乱気にその様子を見ており、江藤がその気持ちを代表するように言った。
「……この子、ほんのこつ剣の心得があっと?」
華凛はすぐさま江藤に向かって怒鳴る。
「だから言ったでしょ‼ 剣術なんて陸軍講武学校の授業で一通り教わっただけだって‼ 大体リアルタイムモーショントレース技術なんか話に聞いただけで、初めて触るんだから……‼」
『
「何が何でもやれ……俺は、何としてもあそこに行かなきゃならない」