「暇だなぁ……」
俺は今、暇を持て余している。
野郎しかいない汗臭い男子高校生を卒業し、無事に大学へと進学。
男同士で楽しかった高校生活だったけど、思春期真っ盛りな健全男子はやっぱり女子とも関りが欲しかった。
高2の時に陽キャのクラスメイトに誘われてカラオケ合コンに参加したけど、共学の中学生以来の同年齢女子をどう扱っていいかわからなくなり、俺はカラオケ合コンで孤立した。
それ以来カラオケ合コンを避けるようになった俺だけど、断り続けた結果縁が途切れそれ以来誘われなくなった。
「暇だなぁ……」
そして受験勉強の末大学に受かり、高校を卒業。夢のサークル活動をしてついでに女子ともお近づきに成りたい。そんな健全的な邪な考えを巡らせたのも束の間、コミュニケーションのバケモノ共が女子を囲い俺はまたもや孤立した。
大学生になれば恋人の一人や二人、それこそ俺のポークピッツが乾かない生活を送れると思っていたのに、現実は厳しかった。
(あぁ~カラオケ合コンで無理にでもコミュニケーション培ってたらなぁ~)
なんて考えが巡るほど、俺は今暇なのだ。
「……」
ベッドで横になりスマホを操作してありふれた不必要の情報を流し見する毎日。
女友だちはいないけどムラムラはする。だって男の子だもん。
「……あ」
不意に思い出す、ネットスラングである『テクノブレイク』。それは過度な自慰行為の末死ぬというものだ。
真意不明の情報として確かにあり、それは瞬く間にネットに広がった。つまりはそう、腹上死に近い死に方だ。
「いっちょやってみっかぁ!!」
んな訳ないだろうとみんなが思った。だからこそ俺もムラムラを維持しているテンションで勢いよく試す事にした。幸い"おかず"はスマホで検索すれば無限に出てくる。
「うおおおおおおおおお!!」
それからはもう、自分の性欲に身を任せて試しに試した。最初は何もナシで。痛くなり一応買っておいたローションも使用。この行為のために買ったジョークグッズもフル動員し、俺は出しに出しまくった。
そして迎える、異変。
「うぅッ!?」
日が傾き始め既に透明を超えてもう出ない。出し尽くした飢餓状態。
「まぁこんなもんかぁ……」
テクノブレイクなど起きなければどうという事はない。
そう思い最後の一発だと試そうとしたその時。
――――ッドクン!!
「ッグ!?」
胸に強烈な違和感と謎の痛みが生まれた。
――ドクンッドクンッ!!
「――ッカ、――ッカハ」
胸を押さえて膝たち状態からベッドにうずくまる。何か知らないがこのままではマズイとは本能でわかった。
額に脂汗をかきながらベッドに落としてしまったスマホを手に取る。急いで救急車を呼ぼうにも手が指が、身体全体が震えているせいでエロ動画の全体表示からホーム画面へ戻れない。
「――ックカ――ッカ」
――ドクンッ。――ドクンッ。
痛みが酷くなっていく。それと同時に心臓の鼓動が妙におかしくなる。
「――ッ――――ッッ」
やがて俺は声すら発せなくなり。
(テクノブレイク……あんじゃん……)
――ドクン――――ドクン――ドク――――
画面の中でフィニッシュする男優の姿を最後に見て、俺は意識を手放した。
――一か月後。アパートの一室から強烈なにおいがあると通報。
部屋の中に腐乱死体があり、見解ではアパート契約者本人だと判明した。