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第14話 危険度

 暴力は数。それを体現するモンスターの群れは一見統率が取れた動きで進軍していると思っていたが、どうやらそれは数に物を言わせた見せかけ。


 棍棒を持ち腕にガードを付けているブタモンスター集団も、尖った石を棒の先端に付けたゴブリン集団も、スライムも、獣型モンスターも諸共も、地上を進軍するモンスターはぞろぞろと歩を進めているだけだと、跳躍しながら観察した意見だ。


「よっと! っほ! っほい!」


「グエ!?」


「ッグ!?」


「ッウ!?」


 イイ感じに空を飛ぶ怪鳥を足場にして移動。時たまアホ面をしながら飛んでいる怪鳥を掴んでは下に投げ掴んでは下に投げて数を減らしている。


 そして当然。


 ――轟ッ!!


 と巨大な火球が俺の横を通り過ぎ、地を進軍するモンスター集団に着弾して爆発している様が見受けられる。


 遠目でもわかるほどの超巨大な魔術陣。それを守る様に様々な大きさの魔術陣から攻撃の雨あられが発射されている。


「っよ!」


「グエ!?」


 ああいった大きな魔術陣を後ろに展開し、その前方に魔術陣が並ぶ構造は、ゲームやアニメで見た事のある光景だ。大きな魔術陣の正体は魔術を行使する術者へのバフだったり、味方全体へのバフだったりが相場だ。


 スタンピードとかち合うのはまさに戦争。人の二倍や三倍の大きさを誇るモンスターに対し、体格が劣るユーゼウス王国側は強暴なモンスターを倒すために常時バフをかけて対処に当たっていると思う。


 リアルの恋愛をしなくてゲームばかりしていた前世だからこそ、それっぽくわかることだ。


 そんな悲しい前世を思い出しながらも、景色は草原から荒野へ。そして荒野を後ろから隔てる山脈が見えてきた。


 ちなみにだが、このスタンピードはある種の原因が必ずある。物事に原因がある様に。それは自然淘汰の影響なのか、それとも何者かの狡猾な陰謀かはわからない。


 でも、ハッキリしてることがある。


(この先に何かいる……)


 俺に視線を向ける者。それはこのスタンピードを引き起こした首謀者なのか、それとも関係のない者なのか。なんにせよ行けばわかる事だ。


 ――ッ轟!!


「ッわぷ!?」


 モンスター共々大きな火球に飲まれた。油断して炎に飲まれたが視界は以外にも良好で目を開けられてで鮮明。踏み台にしようとした怪鳥たちが一瞬で燃えるのを確認。それを狙い通りに踏み台にし、炎の尾を引きながら脱した。


 火球に飲み込まれあわや黒焦げになると思ったがノーダメージ。たぶん仲間を巻き込んだらいけないから、モンスターにだけダメージを負わせる魔術みたいなのしてると思う。


「……アレは」


 時折モンスターを倒しながら進んでいくと、荒野の最果てにある絶壁。そこの暗い大きな洞窟からモンスターがわらわらと溢れ出しているのを視認。理屈はわからないが、どうやら先の洞窟がスタンピードの本丸。そして俺を見た視線の者がいる場所だ。


「久しぶりにアレやるか!」


 洞窟に入るには地上から徒歩でしか入れない。しかし地上はモンスターの群れが跋扈。とてもじゃないがフル〇ンで歩ける状況じゃない。


 着地点を作らねば。


 そう思い俺は怪鳥を蹴って大きく跳躍。


「スウゥゥ――」


 鼻と口から一気に空気を吸い込む。常時より大きく膨らんだ胸が肺に空気がパンパンに入ったという証拠。


 ッビリ! と紫電が胸部に纏う次の瞬間。


「ッッガア゛ア゛アアアアアアアア――――」


 ――ッドワオ!!


 爆発。


 衝撃。


 "ハウリング"


 大きな声を発する攻撃。しかし俺のハウリングは衝撃波を生み、たちまちに辺り一帯に膨張。地が割れ、木々が薙ぎ倒され吹き飛び、モンスターのことごとくを圧して潰した。


 空洞説世界にて、超強かった虎型モンスターとのハウリング合戦の末生まれた技だ。勝敗はもちろん俺。暴れていた虎は負けを知り、すこぶる大人しくなったのを覚えている。


「よっと」


 陥没したところには大量のモンスターの死骸が。そこをスタッと着地すると、鬼の形相で息を巻いているモンスターたちが一斉に襲い掛かって来た。


「ブモオオオ!!」


「キョオオオオオ!!」


 俺だ俺だと我先にあいつを倒すんだとひしめき合うモンスター。しかし足が遅い。走ってはいるがそれでも遅い。


「ン゛ン゛!!」


 ――ッバチィイ!!


 体内から放出する紫電。力んで捻り出した紫電はバチバチと辺りを穿ち、一体また一体と、襲ってくるモンスターを確実に屠った。


 そして紫電は放出されそのままに。俺は口を開けてエネルギーを溜めた。


 エネルギーが集まるにつれ赤い光輪が眼前に生成される。


 鱗の隙間から紫電が迸ると、俺はそのまま必殺の技。


「ッ!!」


 ――ッドワオ!!


 穿ち、裂け、貫かれ、溶け、消える。


 灼熱の熱線を縦横無尽に撃った結果、モンスターたちは悲鳴を上げる暇さえなく見事に一帯の生命が消えた。


しかし油断はできない。油断はしない。


「!」


 暗い洞窟から姿を現した。 


 それは水晶だった。


 中心に発光するコアの様なものがある水晶。その水晶を顔部分とし、形は違うが同じ様な水晶で胴、腕、脚、手、足が形成。


「――推定怪獣族から断定怪獣族へと変更。対象を危険度B-からSと認定。危険度Aである集合体ヒューマン撲滅のスタンピードを続行しつつ、危険度Sの怪獣族を殲滅します」


 まるで機械音声がそのまま意志を持ち話したと言わんばかりだった。


(何なんだこいつ……)


 異様な不気味さが俺を支配する。

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