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悠々旅をしていた姫君、賊に絡まれる

「ようやく見つけたぞ! この偽王女め!」


 声のする方へと目を向けてみると、そこにはところどころ焦げ付いた鎧を身にまとい、剣の先端をこちらに向けている不届きな輩が一人。・・・・・・賊ながら、垂れ目がちの整った顔つきにサラサラの金髪が映え、泣きぼくろがとってもセクシーなタイプのイケメンではありますわね。


 ・・・・・・でもこの声、どこかで聞いたことがあるような気がするんですわよね。喉のところまで出かかっているのですが、思い出せません。わたくしともあろう者が、こんなイケメンのことを忘れるはずがないと思うのですが・・・・・・。おかしいですわね。


 頭を抱えてなんとか捻り出そうと苦心していると、イケメン騎士の後方から、遠めでも可愛い子ぶっているのが丸分かりのぶりぶりした女の子走りで近づいてくる影が一つ。


 ・・・・・・え? いや、まさか。そんなバカな。


 目を擦ったのち、もう一度確認をしてみますが・・・・・・やっぱり見間違いではありませんでした。


 こんなぶりぶりした女、こっちの世界に来てからというもの、一人しか存じ上げません。


「もぉ~、急に走り出しちゃってどうしたのさぁ~。リリーのこと置いてかないでよぉ~」


 げぇっ・・・・・・! やっぱり、ぶりぶり女ですわ! 


 ・・・・・・え? ぶりぶり女がここにいるってことは、もしかして・・・・・・ハイド様やられちゃったってこと!? 


 いやいや。そんなバカな。いくらフィリアさんがついてたとはいえ、そもそもゴリロウさんとの3人がかりでも敗けたような相手にどうやって・・・・・・?


「いやー、わりぃわりぃ」


 ・・・・・・そうなると、このイケメン騎士様の力を借りたということでしょうか? 見たところ、やけにぶりぶり女と親密そうですし、勇者パーティのもう一人のメンバーだったとか? 


 そうなると、この騎士の実力は侮れないかもしれません。・・・・・・これは面倒なことになってしまったかもしれませんね。


「それよりも、リリー! ついに見つけたんだ! 俺をこんな目に遭わせた偽王女を!」


 それにしても「偽王女」「偽王女」って。ずいぶんと無礼な男ですわね。

いくら顔が良くても、目上の者に対する礼儀が成ってない輩は好ましくありませんわ。


「え……? あっ! ゴリっちとあのクソ女!」


 あら、「クソ女」ですって!? 失礼しちゃいますわ! ・・・・・・ぶりぶりのし過ぎで口の利き方を忘れてしまったのかしら?


「あら? 一聖女風情が、王女たるわたくしに対してずいぶんと不敬な物言いですわね」


「うるさいわね! リリーに『速度低下』の魔法をかけてまで、ハイデンリヒターの前に置き去りにしようとした女のことなんか敬う必要がどこにあるっていうのよ!?」


「それは貴女が作戦に背く行動をしたからですわ。わたくしのことを逆恨みする前に、ご自分の行動を顧みるべきではありませんこと?」


「ぐぬぬ……! この腹黒偽王女め……! ふん、もういいもんね! 早

いとこやっちゃお、!」


 ・・・・・・ん? 


「ああ、リリー! こんな偽王女の言うことに耳を貸す必要なんかない! 助けに来た俺のことをだまし討ちで殺すような、魔王の手先に堕ちた女の言うことなんかな!」


 ・・・・・・わたくしが殺した?


 え? ということは・・・・・・このイケメン騎士って・・・・・・もしかして・・・・・・


 あの時のブス勇者ぁぁぁぁぁ!?

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