・・・・・・え? これはいったい、どういうことでございますの?
どうして、あの時のタラコ唇鼻毛ブス勇者が、こんな泣きぼくろの小癪なセクシー系イケメンに・・・・・・?
わたくしのところに来た際は、正体を隠すために変装をしていたとか? ・・・・・・いや、何をどう変装しても、この顔はあんなブスにはできませんわ。どれだけブスのふりをしようとも、イケメンオーラは隠しきれるものではなく、どこからか漏れ出してしまうものですもの。あのときの彼は間違い無く、純度100%超のエスプレッソブサイクでしたわ。
「ここで会ったが百年目だ! 覚悟しろ! この偽王女め!」
うーん・・・・・・。アレクサンダーの顔面魔改造事件については謎が深まるばかりですね。
まあ戦況としましては、あの騎士の正体がアレクサンダーだと分かれば、また黒焦げにし直せばいいだけなのでいいのですが・・・・・・。
それでも、ゴリロウさんも元はといえば勇者パーティ側の人間・・・・・・もといゴリラですし、さすがに1:3というのは分が悪いですわよね・・・・・・。なんとか穏便に誤魔化す方法は・・・・・・。
とりあえず、性には合いませんが、対話を持ちかけてみましょうか。
「勇者・アレクサンダーよ。あれは悲しい事故だったのですよ」
「嘘をつけ! 『調子に乗ってんじゃありませんわ、このブスが』って悪態ついてたの聞こえてたんだからな!」
・・・・・・あら? あのときの独り言聞こえてたんですのね。てっきり即死したものだとばかり思って、少し口を滑らせてしまったのが良くなかったのでしょうか?
「それは、貴方が勝手にわたくしへと接吻しようとしたのが悪いのでしょう」
「え・・・・・・? アルくん・・・・・・そんなことしてたの・・・・・・?」
ダメ元でとりあえず返した言葉に、なぜかぶりぶり女の方が反応しましたわね。・・・・・・これは、アレクサンダーを女の敵に仕立て上げれば、まさかのぶりぶり女側を味方に引き入れることもできるのでは?
「い、いや……こ、これは違うんだ・・・・・・リリー・・・・・・」
「・・・・・・このクソ女! よくもアルくんのこと、誑かしてくれたわね!」
・・・・・・ちっ! そっちに行きましたか! 実にぶりぶり女らしい思考回路ですわね。
「ウホウホ」
すると、今まで沈黙を貫いていたゴリロウさんが突然、アレクサンダーとぶりぶり女のほうへ何かを訴えかけました。・・・・・・何て言ったのかまでは存じ上げませんが。
「・・・・・・アルくん? なんて言ってるか分かる?」
「いや、全然。ゴリラの言葉なんか分かるわけないだろ」
「だよねぇ~。・・・・・・こんなことならフィリアのやつ、置いてくるんじゃなかったかなぁ?」
あっ。言われてみれば、フィリアさんの姿が見えませんわね。
もしかして・・・・・・こいつら、フィリアさんを囮にして!? ・・・・・・まあ! なんて人でなしの勇者と聖女なのでしょう!?
「ウホウホ」
相変わらず、ゴリロウさんが何を言っているのかはわたくしにも分かりませんが、なんとなく怒気をはらんでいるような・・・・・・やっぱりそうでもないような・・・・・・?
「まあ、いいだろ。ゴリロウの言うことなんて、分からなくても何とかなるさ」
「そうだね。それに、騎士の代わりくらい、王国に帰ればいくらでも見つかるよね?」
「ああ。さあ、ゴリロウ! まずは俺達と共に、この偽王女を討ち倒そう!」
ずいぶんと好き勝手ぬかした割には、なんの臆面もなくゴリロウの方へとその右手をかざすアレクサンダー。
・・・・・・なんか勇者パーティ人間関係の闇を垣間見てしまった気がしますわね。まあ、人間の集まりなんて、所詮はそんなもんなんでしょうけれども。
「ウホウホ」
しかし、ゴリロウさんはアレクサンダーの誘いに対し、首を大きく横に振ったのでした。