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バナナを投げられたゴリラ、過去を振り返る

 ***


「ねぇ~、リリーもう疲れたよぉ・・・・・・」


「うーん。この辺で一休みするか?」


「ああ、そうだな」


「ウホウホ(うん)」


「さっき獲れたバナナでも食うか?」


「さんせ~い。リリーもうお腹ペコペコだよぉ」


「しかし、バナナは3本しかないぞ?」


「ウホウホ(お腹空いた・・・・・・)」


「いいだろ。ゴリロウには王様から貰った『カリカリゴリフード』があるんだからさ」


「じゃあ、これはリリーとアルくんとフィルくんで1本ずつだね」


「ウホウホ(ボクあれ嫌いなんだけど・・・・・・)」


「・・・・・・」


「ほれ、カリカリゴリフードだ。あ、お前はあっち行って食えよ」


「ゴメンねぇ~。ゴリっちが食べてるとこ見ると、リリー食欲無くなっちゃうからさぁ~」


「お前達・・・・・・そんな言い方しなくても!」


「だってホントのことだしぃ~。フィルくんこそ何いい人ぶってんのさ」


「ウホウホ(ボクなら大丈夫・・・・・・。気にしてくれてありがとう、フィリア)」


「・・・・・・」


 ***


「・・・・・・さっ、ゴリラもいなくなったし食うか」


「いただきま~す。・・・・・・って、どしたのフィルくん?」


「・・・・・・ああ? 少し花摘みにな」


「よし! 俺も一緒に行くか!」


「・・・・・・切り落とされたいのなら構わないぞ」


「おお怖っ。さっきから何をカリカリしてんだ? ・・・・・・あ、もしかして、生理か!?」


「アルくんサイテー」


「冗談に決まってるだろ、冗談だって」


「ノンデリ男はほっといて、フィルくんいってら~」


「だから冗談だって言ってるだろ!? ・・・・・・って、なんでアイツ用足すのにバナナなんて持って行ったんだ?」


「さあ? 別に心配しなくても取らないのにねぇ~」


 ***


「ゴリロウ。いるか?」


「ウホウホ(あれ、フィリア? どうしてここに?)」


「相変わらず何を言っているのか分からないな・・・・・・。まあいい。これ、食べるか?」


「ウホウホ(え? いいの? フィリアの分は?)」


「遠慮するな。たまにはゴリフード以外のものが食べたくなったんだろ?」


「ウホウホ(ありがとう。じゃあ、いただきます)」


「ウホウホ(ってあれ? 身体が・・・・・・)」


 ***


「・・・・・・お前は・・・・・・ゴリロウ・・・・・・なのか?」


「うん。ボクにも何がなんだか分からないけど・・・・・・」


「ゴリロウ!? お前、人間の言葉を!?」


「え!? あ、ホントだ!?」


「しかしだな・・・・・・その・・・・・・服は着た方がいいのではないか? その姿で全裸だとその・・・・・・目のやり場に困るというか・・・・・・」


「え? でも、ボク服なんか持ってないし・・・・・・」


「・・・・・・それもそうか。確かに、無いものはどうしようもないな・・・・・・。すまない。忘れてくれ。・・・・・・できるだけ、見ないようにする」


「・・・・・・?」


「・・・・・・おかしいのは私の方なのか?」


「まあ、ゴリラに服の概念は無いから。帽子はなんとなく被ってるけどさ。・・・・・・その、なんかゴメンね?」


「いや、気に病まないでくれ。いくら人の姿に変身するといっても、根はゴリラなんだから仕方がないよな・・・・・・。うん、大丈夫だ。そのうち慣れる・・・・・・たぶん」


「・・・・・・!」


「どうした!? ゴリロウ!?」


「また、身体が・・・・・・!」


「!?」


「ウホウホ(また戻っちゃった。折角人間の姿になれたと思ったのに・・・・・・)」


「まあ、そう気に病むな。もしバナナが鍵なのだとしたら、またどこかで手に入るだろう」


「ウホウホ(うん、そうだね・・・・・・って、あれ? フィリア、もしかして・・・・・・?)」


「ああ。なぜだか分からないが、お前の言っていることが分かるぞ」


「ウホウホ(これであの二人とも・・・・・・?)」


「・・・・・・それは、どうだろうな? まあ、いざとなったら私が通訳してやるよ」

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