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大きな出費 剣/皿/サイン

 和美は目の前の皿を目にしながら、うっとりとしていた。マイセンのマークである交差した剣が和美の心を満たす。


 正直、今回の出費は痛かった。でも、ご近所さんとの交流会でこのお皿を披露すれば、優越感に浸れる。


 そう思うと購入するのに躊躇はなかった。気づいたら、サインして購入していた。


 そんなふうに考えていると、飼い猫のタマが部屋に入ってきた。うちの子は少々やんちゃ。


 皿を丁寧に包装し直している時だった。タマが机に乗ってきた。


「タマちゃん、危ないから降りなさい」


 タマは降りる気配がない。それどころか和美に向かって飛びかかってきた!


 向こうはじゃれているつもりかもしれないけれど、今はそれどころじゃないわ。


 その時だった。避けようとした和美は皿を取り落とす。


 ガッシャンという音が部屋に響き渡る。


「せっかくのお皿が……」


 でも、タマを責める気はそうそうない。


 独身の和美にとって、唯一の家族なのだから。


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