日帰りの仕事は、添乗員仲間内では人気がない。
出張手当も付かないし。
私達、派遣社員は、原則は時給だけになる。
宿泊になると、一流ホテルや旅館に泊まることもあって、食事も、自腹では食べられないような、豪華なお料理を食べられたりする。
私は、そんなこと、どうでもいい、コンスタントに仕事があって、ある程度の決まった収入があればいい。
父に似てしまったのか、右と思うのに、左に進めとか言われても拒否するし、白を黒とは言えない。
そんなんで、高校を卒業して、札幌に来てから、いくつもの店、会社を辞めた。
夜のバイト、小さな店だけど、老夫婦が静かに、自分達が信じる食材を使って料理して、テーブルも6個しかない。
イッパイになっても、24席。
オーナーの老夫婦は、善意ある人で、そのレストランの仕事だけは、ずっと続いている。
行けない日は、お昼までに連絡するとよい。
ウェートレス兼、洗い場。
グラスの磨きかたも覚えて。
古いタイプのレジの扱い方も覚えて。
お客様を大切にする姿勢も覚えて。
夜、後片付けが終わって帰る時、余ったから、これ、お母さんに、、作ってみたから、味見して。
口の重いオーナーさんは、食材を分けてくれる。
弟は、ここのビーフシチュー食べたら、他は食べられないなと言い。
母は、ブロッコリーって、こんな風に食べるのね、勉強になるわと。
ブロッコリーをさっと湯にくぐらせて、氷水にとり、酢とお醤油とオリーブオイルのタレに浸ける、ただそれだけ。
ブロッコリーが余ると、オーナーは作って冷蔵庫へ。
夕方、私には、賄い飯と称して、夕食が出る。
キッチンのすみの小さなテーブルで食べる。
その時に、良く小鉢に入れて出てくる。皮を剥いたプチトマトも同じようにして。
そこのバイト代がなかったら、弟の高校までの定期代もきつかったかもしれない。
母は、診療所を売ったお金がある内に、私に短大にでも行きなさい、短大でも保育士の資格は取れるのだからと何度も言ったけど、、そんなの無理だよ。
お金なんて、減るだけだよ。
ちっとも贅沢なんてしてないし、私は、たかが、ワンコインのランチも行ったことない。
暑くて、悪くなるかなと心配しながら、オニギリ持参で行く。
おやつが欲しくなったら、ポッキーかプリッツ。
7月25日金曜日、私の前に、ある女性が。
(つづく)