歩きながら、変わった人だなあと思った。歩きながら、後ろを歩く私に、名刺を渡した。
ツキコは月子。
月のイメージと違うなあ、すごい、せっかちで、足が長くて、大股でグイグイ歩いて。
ホテルに入ってから、しっかり見ようと、名刺は帆布のバッグの内ポケットに入れて。
すると、私の後ろを歩くリエと名乗った人が、歩をつめて、私の背中をつつく。
振り向くと、名刺。
ちらっと見て、地図、あら? 表にかえすと、「おたすけばあ」、、なんだろう?
真ん中に、理恵と。リエは理恵か。
ふわーっと、疑問の霧が。
何? おたすけばあって何?
そうこうしている内にホテルに付いた。館内は混雑していた。
真ん中の広い階段を上がって、フロントは2階。
月子さんは、かなり、せっかちな人だ。
キーを受け取りながら、
「頼んでおいた食事、すぐ部屋に運んで!
もう、お腹ぺこぺこ!
あ、それと、お弁当も一緒にね!」
部屋に入ると、手を洗って、ジャケットを脱ぎ、空調のスイッチをかちかちいじって、、
ボストンバッグを開けて、カーディガンを出して、着る。
理恵さんも、動きは素早いけれど、静かに動いていて。
挑戦的な眼をした美人の理恵さんの性格は、月子さんほどには、せっかちではないような。
月子さんは、せっかちで、タンパラのように見えた。
「今朝、千歳に着いたんだけど、あなたのお母さんに会いに行って、
次に、尚さんの職場でしょう。
で、あなたの弟さんに会って、。
お母さんも、弟さんも、了解したよ。
でも、あなたから話がくるまでは、黙っていてもらうことにしたの。
でさ、そのあとに、熊倉三郎君。
大学は夏休みに入ったよね、実家には帰らないでバイトしてた。
工場現場で旗振りのバイト。
日中は札幌も暑いよね、7月だもの、、
危険だからだと思うけど、暑い作業服着て、ヘルメットかぶって、分厚いジャケット、袖無しだけど、あれ、重いし、暑いわ、、働いていた。
いい男だね。
メールを何通も何通も送っても返信もないのに、すごい熱情で私達の会に、あなたとあなたの弟さんに奨学金を出してやってって。
あなたの事、好きなんだね。彼は。
彼の熱意が私を動かした。
基本はね、 本人からの申し出で審査に入る規則なんだけどね。 」
(つづく)