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第8話  ワタルとナオ No.9ー7


ホテルの部屋に入ってから、私は自分を、みすぼらしいと感じていた。


理由は分からないけど。月子さんも、理恵さんも、自分とは生きる世界が違うと思ってしまった。


 でも、それが理由ではない。


二人は、二人をじいっと観察していると、生まれながら裕福な家庭で育ったのだろうという姿勢があった。


身に付けているもの、それだけではなく、自然にたちあがる品のようなもの。


 私は、田舎で育って、野山を駆け回って、元気いっぱいにノビノビ育ったけれど、一応は医者の娘で、使用人も数人いた。


母が病弱だったせいもあるけれど、住み込みの使用人もいた。


 私は、ワタルお嬢様と呼ばれていて。


母は、糸や毛糸、生地、革など、流行りものではない、本当に上質のものの見分け方を、教えてくれていた。


高くても、素材の上質なものを、大切に使う。


 父が亡くなってから、私は、そんな事は忘れていて。

今、月子さんと、理恵さんを目にして、気が引けて、仕方がなかった。


 ノックがして、ホテルの制服を着た男性が二人、食事を運んできた。


テーブルをセットして、白いクロスをかけて。


 部屋の中に良い香りが。私は、急に空腹を感じて。


 所作なく、帆布の少し、くたびれた手提げバッグから、二人から渡された名刺を出して 見る。


おたすけばあ、理恵、裏には、地図、銀座5丁目の。


それだけ。名刺の紙は、厚くて、周囲は角がないようにカットされている。


なかよし会。事務局、月子。


山梨の住所と電話番号、それと、HPのアドレス。


裏には、葡萄園、ワイナリー、、山梨と北海道の十勝の住所。


 最後に進学塾月子。


 私は、みすぼらしい私は、興味を持ち始めていた。この人達、ただ者ではないに違いないと。


  部屋に私達三人になると、月子さんが、


「さ、座って、食べましょう、今夜は、北海道の食材に限定して作ってもらったのよ。

お肉もね、牛と豚と鳥、、北海道のものは、何を食べても美味しい。

時間がないね、30分の約束だったから、食べながら話す。


私と理恵さんと15分ずつね。」


 理恵さんは、気が利く人なのだろう。月子さんにも、私にも、ご飯や味噌汁や、

お茶を。


その手つきは茶道の心得のある人とすぐ分かった。


母は茶道を教えていた。


私には躾の中で基本は教えてくれていたから。


 月子さんは、すごい、食べっぷりで。しかし、下品ではない。

舌を鳴らしたり、食器を鳴らしたりはしない、マナーが板についているのだろう。






       (つづく)

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