何故かな、いつからだろう、自分の事なのに、分からない。
職場が先か、家庭が先だろうか。
何もかもが嫌になり。
空を見上げて、雲ひとつない青空だったら、以前は、何か心がウキウキしたものだったのに。
楽しいことなど、そうそう頻繁には無いものだと知り。
人の心は、変わるのが当たり前なのだと知り。
確実、絶対、必ず、そんな言葉を信じられなくなり。
今は、信じられないのではなく、信じていない。
白か黒かグレーか、身に付けるものは、モノトーンに決めていて。
ある日、いつだったか、夫が、
「色が無いんだね、全てが無彩色で、」
私は、夫が何を言いたいのか解らなかった。
色はある。白も黒もグレーも、れっきとした色であるはずで。
しかし、あの時、夫は、
「息がつまる、気持ちが休まらない。」
そんな風に言ったはずで。
静かに。いつもの夫らしい、表情で。
それは、私が大好きな夫の顔をしていた。
と、思う。
常に冷静で、端正な顔立ちには、崩れはなく。
私は、鈍感なのかも。
思い出そうとしても、夫に変化は無かったはずで。
私は、鈍かったのかも。
何も気付かないとは。
職場。精密機械の会社。小さな、1ミリとか、2ミリとか、小さな、小さな部品の一部を造る会社で。
一応は株式会社ではあるけれど、支店も出張所もなく。
社員は270人ほど。工場も営業部も総務部も企画部も、全てが7階建ての自社ビルに納まっている。
造るものが、ミリ単位の小さなもの故に、車を造るような大きな工場が必要なかったのだろうが。
私は、父が、この会社の社長と大学時代からの友人で、所謂、縁故で入社した。
本当は、証券会社に入りたかったが、2社受けて、2社ともダメで。
その時点で、父に丸投げした。バカバカしくなった。
何やら、どこを受けても採用されないような気がして。
自分の力が無いのではなく、採用される人は、予め暗に、決まっているように感じてしまって。
無駄な努力など、したくない。
そのように、感じてしまって。
父の力に委ねて、どうにでもなれと。
私の頑張らない性格丸出しで。
(つづく)