親の薦めで、親類の世話好き叔母さんの紹介で、その話に両親が乗り、当人の私は、イマドキ、見合いなど、存在するのかと思いながらも、面白半分で、見合いをして。
一応は、相手に望まれた形で、すんなり、あっさりと結婚した。
思い出すと、そもそもが、それが間違いだったように思う。
互いに、相手の事を何も知らずに結婚してしまった。
見合いをしたのは、23才の終わり。
あと、数日で24才の誕生日という日だった。
料亭の1室で、シズシズと行われた。
私は、小紋の和服姿だった。
いかにも、和服くらい、着なれているように。
母に着付けてもらい、髪も母にアップにしてもらい、母は、いかにも、力んでが嫌いで、あくまでも、さりげなく、さらっと、着付けてくれ。
鏡に写る自分に、正直、なかなか、美しいと思ったものだが。
あのとき、薄いラベンダー色の草履が、少々、歩きにくくて、閉口した記憶だけが鮮明で。
ほんの、お付き合い、興味半分、だったはずが。
夫は、その見合いの席でさえ、ひどく、凛々しく、積極的で。
見た目は抜群。経歴も抜群で。年齢は私よりも、8才上で。メガバンクに勤めていて。
その場で、夫は、是非、あなたを妻にしたい。
あなたは美しい。あなたのように清潔な女性は、なかなかいないだろう。
などなど、嫌味なく、言い。
翌週の土曜日には、早速、デートをする約束をして。
車で1時間程の港町にドライブして。
私は、生まれて始めて、キスをしてしまった。
キスをされてしまった。
車の中で。
それも、今だから分かるのは。
そのキスは、ディープだった。
24才の女と31才の男ならば、それも、結婚を前提条件に付き合い始めた男女ならば。
そのくらいは、当たり前のことなのだろうが。
私は、初めてで。
いつ、終わるのかと。
じっくり舌をからめとられていて。
結婚て、面倒かもなぁと、その時、既に、感じていたかもしれない。
車は、先輩に借りてきたとかで。
私は、どうして車を買わないのかと聞いた記憶があるが、夫が何と答えたかは、忘れてしまった。
ただ、結婚して、すぐ、夫は車が欲しいと言い、私の預金で現金で買った。国産だが高級車を。
(つづく)