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第15話  相性 No.22ー5

 夫は、否定することなどなく、あっさりと、浮気をしていると認めた。


「何の匂い?

香水の匂いがする。

まさか、あなた、毎週、土日は留守にして、浮気をしているんじゃないでしょうね。」


夫は、間髪入れずに、自分の頭に一瞬手をやり、少しだけ考えるフリをして、


「バレたか。いつかバレると思っていたよ。

浮気をして、だから、離婚したいと言っても、僕はしないよ。

いずみは最高の女、連れて歩いても恥ずかしくないし、なにせ、美人だろ、体も最高。

それに何より、いずみといたら、金に不自由しない。


僕は、生涯、いずみとは離れないよ。


毎夜、美しいスベスベの体を抱けて、高級マンションに住めて、高級車に乗れて、こんな生活は離したくない。


いずみの欠点は、色が無いことだけだよ。」


「また、色!?

その女の人には、色があるの? 」


いつも、いつも、鈍感で。


間が抜けている。

気持ちが折れるとは、こういうことなのかと、ふと思ったが。

意外だったのは、夫が浮気をしていると知っても、余り、腹が立たなかった。


腹が立つより、私は案外冷静であったと思う。

何やら、頭の良い夫。

悪びれもせずに、簡単に浮気を認めなから、離婚はしないと豪語している。

きっと、策があるのだろう。


私の事は、離したくないと言い、体も顔も外部への体裁の面でも。


また、金銭的な事も、はっきり言った。


そうだ、私は、その時に始めて気付いた。

夫の銀行から出ているはずの給与を見たことがない。

車も、彼の洋服も靴も、このマンションすら、そして、日々の生活費すら、全て、全て、私が出している。

なんたることか!!


祖父母や両親、兄夫婦に、友人の理恵に、相談する前に、自分は今、何をすべきかを、頭をフル回転して考えた。


何としても、離婚しなければ。

気味が悪い。


こういうタイプの人間は、何度も何度も、同じ悪さを繰り返すはず。


どんなに鈍感な私でも、それくらいは予測がつく。


投資に向けている、勘を総動員して、今、この、自分の難局を切り抜けねばならないと。


私にしては、珍しく、気持ちが高ぶっていた。


まずは、夫を調査しよう。大学時代くらいまでさかのぼり、身辺調査を依頼しようと思い至った。








       (つづく)




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