私は少々、変人かもしれない、女性として、一般的な成人の女性としては変人かもしれないが。
夫こそ、変人ではないかと。
家具を置かず、泊まりの客でもあったらと、空けておいた部屋で、私は、フローリングに直に布団を敷いて寝ることにしたが。
夫は夜中に、
「いずみ、怒ってしまったんだね。
いずみを抱きながら眠りたい、ここで寝ていいかな?」
私は、怒るより、夫のヌケヌケとした図々しさに呆れてしまった。
「気持ち悪い事言わないで!!
今後、一切、私に触らないで!!」
夫は、平気の風で、
「いずみは怒っても可愛いな。
まあ、今夜は諦めるけど。
寂しくなったら、いつでも抱いてやるからね。
彼女は、僕より年上でね、、涙を流すよ、キスをしただけでね。
じゃあ、おやすみ」
なんという男なんだろ、バカにしないで!!
夫は、変人だ、変人に違いない。
私には色がないとか。
いやいや、職場で、私のアダ名は、シロクロさん。
それって、夫の言う、色が無いと同じ意味だろうか。
今の今まで、気にもしなかったけれど。
おやすみとドアを閉めて寝室に行ったはずの夫が又戻ってきて、
「いずみ、教えておくよ。
彼女とは、いずみの会社の橋場さんだよ。今、彼女に連絡してね。
いずみが僕を受け入れないようだと、僕は困るのでね、水曜日も泊まりに行くことにしたよ。
いつまでも拗ねてないでね。
僕が愛しているのは、いずみだけだよ。
大人になりなさいね。
じゃあ、本当に、おやすみ。」
私は、夫は変人ではなく、頭がおかしくなっているのだと確信した。
明日は、この部屋に付けるカギを買ってこよう。
カギは、どこで買えるのか、ところで、自分で取り付けられるのだろうか。
私は、やはり、無知な人間に違いないと。
そして、橋場さんは、常務の公然とした愛人のはずで、夫は、ヤバイのではと。
橋場さんて、確か、36とか、37とか。
夫より年上。
美人だけれど、少し、ケバい。
そこで、思い出した。
私に、あなた、シロクロさんねと、言い出したのは橋場さんだった。
身のまわり、ぜーーんぶ、モノトーンねと。
気にもしていなかったけれど。
もしかしたら、夫と橋場さんは、長い付き合いなのかもしれない。
(つづく)