佐々木さんの説明は、分かりやすかったけど、どうでもよくて、あまり真剣に聞いてはいなかった。
考えると、私は特別に秀でていることもなく、この会社に入社出来たのも、父や伯父が、この会社の系列の会社の一応は、お偉いさんだったので、ビリケツで何とか、最後にぶら下がったような感じであった。
なんで、そのような私が転勤なのか、考えてみる必要があったのに。
ざわざわと忙しく、流れにただ乗ってしまったような。
今さら、騒いでみても、本社に戻っても、私の居場所は無い。
8階にあるという派遣会社は、この会社のグループ会社で。
添乗員の資格を取るそうで。
へえー、旅行業も始めるの?
添乗員って、旅行に同行して、ツアー客のお世話をする、あれ?
それって、私には向かない。お世話をしてもらう方だよ。
で、次には、女性心理学を学んで下さいって!!
さっぱり、理解できない。
なんで、転勤する必要があったのか?
変、変、変だと思う。
札幌支店は、私を入れて、48人で、圧倒的に男性が多いらしい。
女性は、私を入れて、11人らしい。
それだけは、嬉しい。
素敵な男性が多いし。
それはいいけど、支店じゃなくて、私は、しばらくは、8階の派遣会社に行くみたいで。
意気消沈。
私は、特別、男好きじゃないけど、マサルと別れて、寂しいし、やっぱり、一人はいないと。
私は仕事がデキル人間でもなく、仕事が好きな人間でもない。
勉強に燃える、仕事に燃える、そんな感覚はいまだに経験なくて。
支店を出て、ズルズルとキャリーバッグを引きずり、だらだら歩きながら、考えたのは、何故、私を、転勤させたのか、誰が決めたことなのかという事。
でも、さっぱり思いつかず。
お祖母ちゃんのマンションまでは、地下鉄南北線で。
風が気持ちよくて、地下にもぐらずに、なんとなく、大通り公園まで歩いてしまった。
これからどうなるのかな? 新しい彼氏は出来るのかな。
大通り公園は、どこまでもどこまでも続いていて、人が多い。
ポケットに入れたスマホが鳴る。
お祖母ちゃんからだった。
「何時に帰るの?」
それだけ。お祖母ちゃんは愛想が無い。
「これから地下鉄に乗るから。」
「じゃあ、すぐだね。」
ブチンと電話は切れた。愛想が無いなぁ。
(つづく)