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第37話  ナルシスト No.22ー5

 佐々木さんの説明は、分かりやすかったけど、どうでもよくて、あまり真剣に聞いてはいなかった。


考えると、私は特別に秀でていることもなく、この会社に入社出来たのも、父や伯父が、この会社の系列の会社の一応は、お偉いさんだったので、ビリケツで何とか、最後にぶら下がったような感じであった。


なんで、そのような私が転勤なのか、考えてみる必要があったのに。

ざわざわと忙しく、流れにただ乗ってしまったような。



今さら、騒いでみても、本社に戻っても、私の居場所は無い。

8階にあるという派遣会社は、この会社のグループ会社で。


添乗員の資格を取るそうで。

へえー、旅行業も始めるの?

添乗員って、旅行に同行して、ツアー客のお世話をする、あれ?

それって、私には向かない。お世話をしてもらう方だよ。

で、次には、女性心理学を学んで下さいって!!



さっぱり、理解できない。

なんで、転勤する必要があったのか?


変、変、変だと思う。



札幌支店は、私を入れて、48人で、圧倒的に男性が多いらしい。

女性は、私を入れて、11人らしい。

それだけは、嬉しい。

素敵な男性が多いし。

それはいいけど、支店じゃなくて、私は、しばらくは、8階の派遣会社に行くみたいで。


意気消沈。


私は、特別、男好きじゃないけど、マサルと別れて、寂しいし、やっぱり、一人はいないと。



私は仕事がデキル人間でもなく、仕事が好きな人間でもない。

勉強に燃える、仕事に燃える、そんな感覚はいまだに経験なくて。



支店を出て、ズルズルとキャリーバッグを引きずり、だらだら歩きながら、考えたのは、何故、私を、転勤させたのか、誰が決めたことなのかという事。

でも、さっぱり思いつかず。

お祖母ちゃんのマンションまでは、地下鉄南北線で。

風が気持ちよくて、地下にもぐらずに、なんとなく、大通り公園まで歩いてしまった。


これからどうなるのかな? 新しい彼氏は出来るのかな。


大通り公園は、どこまでもどこまでも続いていて、人が多い。


ポケットに入れたスマホが鳴る。

お祖母ちゃんからだった。


「何時に帰るの?」


それだけ。お祖母ちゃんは愛想が無い。


「これから地下鉄に乗るから。」


「じゃあ、すぐだね。」


ブチンと電話は切れた。愛想が無いなぁ。










       (つづく)

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