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第38話  ナルシスト No.22ー6

お祖母ちゃんのマンションに着いたけれど、母は既にお出掛けしていなかった。


 母は、札幌で生まれて、短大を卒業するまで、ずっと札幌に住んでいたので、札幌には友達も多く、昨夜の内に連絡していたのだろう、もう、活動している。


 母は、兄と私が大学生になると、3か月に一度は、札幌に行くようになっていた。

独り暮らしの母親が心配だからを口実にして。

お祖母ちゃんは、はっきり言って、まだまだ、人に心配されるような感じではない。

何かと、細々とうるさいお祖父ちゃんが亡くなり、思う存分、自分の仕事が出来ると、イキイキ、つまり、お祖父ちゃんが生きていた時より、元気でイキイキとしている。


その、お祖母ちゃんの仕事が、何なのか、評論家とか、批評家とかで、お祖母ちゃんの名前を検索してもヒットしないし。

母は、馬鹿ねーー!! と言い。


「あのね、尚、お祖母ちゃんのすることよ、スキなんか無いのよ! ペンネームなんて、たぶん、絶対、自分に辿り着けないようにしてるはず。

いくつもペンネームを使い分けてるはず。

考えてごらん、一人娘の私にすら、教えないのよ。

お祖父ちゃんも、全然知らなかったみたい。」


母の言葉を真実とすると、お祖母ちゃんは、なぞの人ってこと?




お祖母ちゃんは、お寿司を注文してくれたみたいで。

食卓には、小鉢もの、お寿司を食べる為の小皿、お醤油、私の為に揚げてくれたのか、好物のお祖母ちゃんのザンギがのっていた。

鳥の唐揚げを、北海道ではザンギと言う。

お祖母ちゃんのザンギは、ショウガとハチミツとお醤油とケチャップで下味を漬けてあって。

私は小さい頃から大好物。

それを、東京に帰って、母に作ってと頼むと、違う、母の揚げるザンギは、お祖母ちゃんのザンギとは、全く違うものになっている。



母は、およそ、料理については意欲がなく、上手でもない。

母は、適当、いいかげん、人生の全てに、そのようで。


私が初めて、男の人とデートに出掛ける時、母は、ただ一言だけ言った。


「好きな人が出来るのは当然だけど、

何してもいいけど、妊娠だけは、しないように」


はあ?! そんな、まだ、キスもしたことないのに、その時は、そう、思ったけれど、

その一言は、なかなか大事な事だった。

同い年の男の子は、ただ触りたいだけで。

母のその言葉は歯止めになったから。










       (つづく)

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