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第42話  ナルシスト No.22ー10

 翌日は、よく晴れていて、やはり、札幌だよなぁと、空気の爽やかさを、母はベランダに出て、大きな声で言っていた。

母と二人で、ベッドと一人座り用のソファーとチェストを買いに行った。

家具の量販店でいいと私は考えていたけれど、母は反対した。

お祖母ちゃんの家だから、あまり安っぽいものは嫌がると言って。


なんか、面倒だな、門限の事も、母は、仕方ないねの一言で、お祖母ちゃんに交渉してくれる様子はなかった。


 クローゼットが広い、シングルだったらベッドも、すっぽり入って、まだまだ余裕ありそうだと。

お祖母ちゃんは、私に玄関を入ってすぐの洋室を使うように言った訳で。

母は、ぼやっとしているようで、必要なものを頭に描いてきたようだった。


私は、どこか他に部屋を借りる余裕は、自分のお給料では厳しいだろうなあと、ぼんやり考えていた。


ベッドもチェストも、母に任せた。

少し、高級感のある古い家具屋で、天然木で、チェストも、釘は1本も使っていないという品に決めて。

お祖母ちゃんからの50万円にやはり不足したようで、それは、母がカードを切っていた。


母に、おたすけばあって知ってる?

尋ねてみると、母は、


「知ってる、知ってる、あれでしょう、お祖母ちゃんの実家、すごい家なのよ。


私が、小さい頃に、金沢のお祖父ちゃんから聞いた。

あれだよね。

たしか、人を助けるあれでしょう。


お祖母ちゃんは、その、なんて言ったらいいのかな、つまり、あれなのね。

解るわね、尚、それなのよ。」



がっかりしてしまう。

母は、いつも、これ。

肝心要の事は尻切れとんぼで。

あれとか、それとか、母自身の頭には理解できているのかもしれないけど、私には、さっぱり。



母は、金銭感覚だけは、素晴らしい記憶力らしい。

それは、父が言っていた。

金銭だけは、華に任せて間違いないと。



母は3日に帰って行った。

来月また来るらしい。

母には、メモを渡した。こちらに、私の部屋から送ってもらうものをリストアップして。



母は、なくしたら困るから、お財布に入れておくねと、本当に、きっちりと折り畳んで、大きなフランスのブランドの財布に入れて、帰って行った。


私は、1日から研修というのか、講義を真面目に受講していた。

添乗員になるための講座。19人受講していた。

男女半々だった。








       (つづく)

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