翌日は、よく晴れていて、やはり、札幌だよなぁと、空気の爽やかさを、母はベランダに出て、大きな声で言っていた。
母と二人で、ベッドと一人座り用のソファーとチェストを買いに行った。
家具の量販店でいいと私は考えていたけれど、母は反対した。
お祖母ちゃんの家だから、あまり安っぽいものは嫌がると言って。
なんか、面倒だな、門限の事も、母は、仕方ないねの一言で、お祖母ちゃんに交渉してくれる様子はなかった。
クローゼットが広い、シングルだったらベッドも、すっぽり入って、まだまだ余裕ありそうだと。
お祖母ちゃんは、私に玄関を入ってすぐの洋室を使うように言った訳で。
母は、ぼやっとしているようで、必要なものを頭に描いてきたようだった。
私は、どこか他に部屋を借りる余裕は、自分のお給料では厳しいだろうなあと、ぼんやり考えていた。
ベッドもチェストも、母に任せた。
少し、高級感のある古い家具屋で、天然木で、チェストも、釘は1本も使っていないという品に決めて。
お祖母ちゃんからの50万円にやはり不足したようで、それは、母がカードを切っていた。
母に、おたすけばあって知ってる?
尋ねてみると、母は、
「知ってる、知ってる、あれでしょう、お祖母ちゃんの実家、すごい家なのよ。
私が、小さい頃に、金沢のお祖父ちゃんから聞いた。
あれだよね。
たしか、人を助けるあれでしょう。
お祖母ちゃんは、その、なんて言ったらいいのかな、つまり、あれなのね。
解るわね、尚、それなのよ。」
がっかりしてしまう。
母は、いつも、これ。
肝心要の事は尻切れとんぼで。
あれとか、それとか、母自身の頭には理解できているのかもしれないけど、私には、さっぱり。
母は、金銭感覚だけは、素晴らしい記憶力らしい。
それは、父が言っていた。
金銭だけは、華に任せて間違いないと。
母は3日に帰って行った。
来月また来るらしい。
母には、メモを渡した。こちらに、私の部屋から送ってもらうものをリストアップして。
母は、なくしたら困るから、お財布に入れておくねと、本当に、きっちりと折り畳んで、大きなフランスのブランドの財布に入れて、帰って行った。
私は、1日から研修というのか、講義を真面目に受講していた。
添乗員になるための講座。19人受講していた。
男女半々だった。
(つづく)