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第43話  ナルシスト No.22ー11

 予想していたより講座の内容は難しくなく、机上の研修の後は、何回か実地研修を受けて終わりらしい。


 海外旅行の添乗と国内があって、私が受けているのは国内に限ったツアーの添乗員になるためのものだった。

派遣会社では、あちこちの旅行会社と契約があり、仕事には困りませんと、説明していた。

そのせいか、みんな、真剣そうだった。

20代から40代まで。

学生さんもいて、すでに、長く、他の仕事についている人もいた。


私だけが、派遣会社の親会社の社員なので、朝は一旦、5階の札幌支店でカードを通してから、8階に上り、間違ったふりをして、派遣会社の事務室に入り、研修室に入った。

みんなは、廊下から直接、研修室に入る。


私は、お祖母ちゃんに頼まれている、女性の支店長さんを、見ようとしていたのだけれど。


あまり、ぱっとした人ではないような。

既に、40は過ぎていて、独身。

マエハシカエデとか。

2日に、やっと確認出来たが、昔は美人みたい感じで。

くたびれた美人って感じ。

それを、お祖母ちゃんに話すと、


「それだけかい?

社内の人にそれとなく聞くとかしてないのかい?

尚は、ある意味では、人を見る目があるようだけどね。

くたびれた美人は、なかなかウマイ表現だよ。

若い時は、相当の美人だったらしいね。

ここのミスコンにも出たみたいだから。


自惚れて、自分をダメにしたんだろうね。


派遣会社の社員は、あまり元気がないだろう。


社員をダメにする女だからね。


まあ、よく観察しなさい。」



そう言われても、どのようにか、私には、よい考えが浮かばなかった。



しかし、実地研修の折りにチャンスが。


研修メンバーを3つのグループに分けて、道内のツアーに参加して、研修を受けるのだが。

私は、阿寒湖、摩周湖方面へ1泊のツアーが割り当てられて。

そこに、マエハシカエデも参加した。

客としての立場で、私達を評価するらしいが。



私は、自分の意思とは関係なく、知らず知らずに、お祖母ちゃんの敷いたレールに乗り、ノロノロと走り出していたようだった。


そのツアーは、参加者が25人で、全ては、男性だった。御一人様ツアー。

男性限定のツアーだった。

お爺さんばかりに違いないと思っていたが、

参加リストを見て、若い人ばかりで、

私は嬉しくなった。




       (つづく)

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