予想していたより講座の内容は難しくなく、机上の研修の後は、何回か実地研修を受けて終わりらしい。
海外旅行の添乗と国内があって、私が受けているのは国内に限ったツアーの添乗員になるためのものだった。
派遣会社では、あちこちの旅行会社と契約があり、仕事には困りませんと、説明していた。
そのせいか、みんな、真剣そうだった。
20代から40代まで。
学生さんもいて、すでに、長く、他の仕事についている人もいた。
私だけが、派遣会社の親会社の社員なので、朝は一旦、5階の札幌支店でカードを通してから、8階に上り、間違ったふりをして、派遣会社の事務室に入り、研修室に入った。
みんなは、廊下から直接、研修室に入る。
私は、お祖母ちゃんに頼まれている、女性の支店長さんを、見ようとしていたのだけれど。
あまり、ぱっとした人ではないような。
既に、40は過ぎていて、独身。
マエハシカエデとか。
2日に、やっと確認出来たが、昔は美人みたい感じで。
くたびれた美人って感じ。
それを、お祖母ちゃんに話すと、
「それだけかい?
社内の人にそれとなく聞くとかしてないのかい?
尚は、ある意味では、人を見る目があるようだけどね。
くたびれた美人は、なかなかウマイ表現だよ。
若い時は、相当の美人だったらしいね。
ここのミスコンにも出たみたいだから。
自惚れて、自分をダメにしたんだろうね。
派遣会社の社員は、あまり元気がないだろう。
社員をダメにする女だからね。
まあ、よく観察しなさい。」
そう言われても、どのようにか、私には、よい考えが浮かばなかった。
しかし、実地研修の折りにチャンスが。
研修メンバーを3つのグループに分けて、道内のツアーに参加して、研修を受けるのだが。
私は、阿寒湖、摩周湖方面へ1泊のツアーが割り当てられて。
そこに、マエハシカエデも参加した。
客としての立場で、私達を評価するらしいが。
私は、自分の意思とは関係なく、知らず知らずに、お祖母ちゃんの敷いたレールに乗り、ノロノロと走り出していたようだった。
そのツアーは、参加者が25人で、全ては、男性だった。御一人様ツアー。
男性限定のツアーだった。
お爺さんばかりに違いないと思っていたが、
参加リストを見て、若い人ばかりで、
私は嬉しくなった。
(つづく)